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クレープ作りと卒業の予感

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「じゃあ、朝食食べて訓練行きましょう。今日は薬草摘んでみましょうか」
「分かった!」

助かった!とばかりに顔を輝かせて元気よく快諾した王子を連れて、私は朝食を摂りに行く。
まだ朝早いので、店の中は閑散としている。
ちょうどいい。

「リサさん、ちょっとお話出来ますか?」
「あらあら、何かしら?」

奥からエプロンで手を拭いながらリサさんが現れる。
相変わらず癒される笑顔だ。

「もし、売れる料理のレシピを持っていたら欲しいですか?」
「美味しい料理って事かしら?」
「はい。珍しい料理でもあります」

リサさんの目がキラーンと光った。

「あらあらまあまあ!教えてくれるの?」
「はい。でもあまりこの店が混みすぎてしまうのもなぁって思って。何処かに出店を出すとか、そういうの考えた事ないですか?又はそういう事やっている知り合いとか…」
「そうねぇ。伝手を当たってみるわ」

私は頷いた。
一つ目はクレープだ。
朝食としても食べられるし、デザートとしてもいい。
食べ歩きに向いているから、屋台でも安定した収入になるはずだ。
具を変えれば幾らでもバリエーションが出来る。

「材料は簡単です。小麦粉と砂糖と牛乳と卵。最初に小麦粉と砂糖と卵を混ぜてから、牛乳を入れます。塩をほんの少し加えても良いです。平らな鉄板なら何でもいいんですけど、これに」

フライパンに形が似た物を熱して貰う。
油を薄く引いて、生地も薄く伸ばす。
引っくり返して裏も焼いて、果実と蜂蜜をはさんでリサさんに渡した。
もう一つ続けて焼いている間に、リサさんが味見をして喜ぶ。

「美味しいわ!」
「もう一つは、ハムとチーズで食べてみて下さい」

リサさんは食べかけのクレープを置いて、焼き上げたもう一つの生地にハムとチーズを挟んで頬張る。

「こっちも美味しい。すごいわねミアちゃん!」
「クレープという料理です。生地は本当は冷蔵庫で一時間くらい休ませて置くのが理想です。それから、バターを入れても美味しいですし、挟む具材に生クリームとかジャムもお勧めですよ」
「是非、作ってみるわ。あと出店をしたいっていう料理人も探しておくわね」

リサさんはとっても嬉しそうに、もぐもぐと頬を膨らませている。
可愛い。
私も甘いものが手軽に食べたいだけなので、メニューに載ったら嬉しい。
今度はポテチも頼もう。
私は王子と朝食を食べて、訓練へと出かけた。

おや?アルトが元気ない。
どうしたのかな?

「大丈夫ですか?アルトさん」
「……ああ。一昨日の騒動で、俺達も迷宮に行く事になった。明日発つ」
「アルトさんもですかぁ。そうだ。ノーツさんにもあげたんですけど、回復薬と毒消しをこっそり作ったので、良かったら持って行って下さい。お世話になったお礼です」

私はポーチの中からごそごそと、回復薬と毒消し薬を出して、アルトに渡した。

「は?作った?」
「ええ、まあ。色々とありまして。早く、早くしまって」

急かすとアルトは腰のポーチにそれを入れた。
入るって事は収納魔法かかってるやつだ!

「効果は保証しませんけど、まあ、うん、きっと良い物です、大丈夫」
「不安しかないんだが?」

確かに自分で言ってて怪しいわ。
色が大丈夫って言っても伝わらないだろうなぁ。
確信もないし。

「えー…信じてくださいよ。危なくなったら飲んで下さい。危なくならないように気をつけてたら飲まなくて済みますよ!」
「飲んで欲しいのか、飲まないで欲しいのか」
「飲まないで済むならそれが一番ですよ!」

危険な目に合わない、なんて事も無いだろうけど、命を脅かされるような怪我はしないでほしい。
アルトはふっと、優しく笑った。

「おう」

警戒してた猫ちゃんが触らせてくれたみたいで、何だか嬉しい。

「あっ、お土産期待してますね!」
「そっちが狙いか」

何て言い草。
別に、そっちが狙いとかじゃないのになぁ。
あったら嬉しいけど。

「お宝持って無事生還してくれたら言う事ないですね」
「確かにな……まあ、適当に期待しとけ」

アルトさんには結構長い期間お世話になってしまった。
私もそろそろ卒業の季節かもしれないな?
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