58 / 89
クレープ作りと卒業の予感
しおりを挟む
「じゃあ、朝食食べて訓練行きましょう。今日は薬草摘んでみましょうか」
「分かった!」
助かった!とばかりに顔を輝かせて元気よく快諾した王子を連れて、私は朝食を摂りに行く。
まだ朝早いので、店の中は閑散としている。
ちょうどいい。
「リサさん、ちょっとお話出来ますか?」
「あらあら、何かしら?」
奥からエプロンで手を拭いながらリサさんが現れる。
相変わらず癒される笑顔だ。
「もし、売れる料理のレシピを持っていたら欲しいですか?」
「美味しい料理って事かしら?」
「はい。珍しい料理でもあります」
リサさんの目がキラーンと光った。
「あらあらまあまあ!教えてくれるの?」
「はい。でもあまりこの店が混みすぎてしまうのもなぁって思って。何処かに出店を出すとか、そういうの考えた事ないですか?又はそういう事やっている知り合いとか…」
「そうねぇ。伝手を当たってみるわ」
私は頷いた。
一つ目はクレープだ。
朝食としても食べられるし、デザートとしてもいい。
食べ歩きに向いているから、屋台でも安定した収入になるはずだ。
具を変えれば幾らでもバリエーションが出来る。
「材料は簡単です。小麦粉と砂糖と牛乳と卵。最初に小麦粉と砂糖と卵を混ぜてから、牛乳を入れます。塩をほんの少し加えても良いです。平らな鉄板なら何でもいいんですけど、これに」
フライパンに形が似た物を熱して貰う。
油を薄く引いて、生地も薄く伸ばす。
引っくり返して裏も焼いて、果実と蜂蜜をはさんでリサさんに渡した。
もう一つ続けて焼いている間に、リサさんが味見をして喜ぶ。
「美味しいわ!」
「もう一つは、ハムとチーズで食べてみて下さい」
リサさんは食べかけのクレープを置いて、焼き上げたもう一つの生地にハムとチーズを挟んで頬張る。
「こっちも美味しい。すごいわねミアちゃん!」
「クレープという料理です。生地は本当は冷蔵庫で一時間くらい休ませて置くのが理想です。それから、バターを入れても美味しいですし、挟む具材に生クリームとかジャムもお勧めですよ」
「是非、作ってみるわ。あと出店をしたいっていう料理人も探しておくわね」
リサさんはとっても嬉しそうに、もぐもぐと頬を膨らませている。
可愛い。
私も甘いものが手軽に食べたいだけなので、メニューに載ったら嬉しい。
今度はポテチも頼もう。
私は王子と朝食を食べて、訓練へと出かけた。
おや?アルトが元気ない。
どうしたのかな?
「大丈夫ですか?アルトさん」
「……ああ。一昨日の騒動で、俺達も迷宮に行く事になった。明日発つ」
「アルトさんもですかぁ。そうだ。ノーツさんにもあげたんですけど、回復薬と毒消しをこっそり作ったので、良かったら持って行って下さい。お世話になったお礼です」
私はポーチの中からごそごそと、回復薬と毒消し薬を出して、アルトに渡した。
「は?作った?」
「ええ、まあ。色々とありまして。早く、早くしまって」
急かすとアルトは腰のポーチにそれを入れた。
入るって事は収納魔法かかってるやつだ!
「効果は保証しませんけど、まあ、うん、きっと良い物です、大丈夫」
「不安しかないんだが?」
確かに自分で言ってて怪しいわ。
色が大丈夫って言っても伝わらないだろうなぁ。
確信もないし。
「えー…信じてくださいよ。危なくなったら飲んで下さい。危なくならないように気をつけてたら飲まなくて済みますよ!」
「飲んで欲しいのか、飲まないで欲しいのか」
「飲まないで済むならそれが一番ですよ!」
危険な目に合わない、なんて事も無いだろうけど、命を脅かされるような怪我はしないでほしい。
アルトはふっと、優しく笑った。
「おう」
警戒してた猫ちゃんが触らせてくれたみたいで、何だか嬉しい。
「あっ、お土産期待してますね!」
「そっちが狙いか」
何て言い草。
別に、そっちが狙いとかじゃないのになぁ。
あったら嬉しいけど。
「お宝持って無事生還してくれたら言う事ないですね」
「確かにな……まあ、適当に期待しとけ」
アルトさんには結構長い期間お世話になってしまった。
私もそろそろ卒業の季節かもしれないな?
「分かった!」
助かった!とばかりに顔を輝かせて元気よく快諾した王子を連れて、私は朝食を摂りに行く。
まだ朝早いので、店の中は閑散としている。
ちょうどいい。
「リサさん、ちょっとお話出来ますか?」
「あらあら、何かしら?」
奥からエプロンで手を拭いながらリサさんが現れる。
相変わらず癒される笑顔だ。
「もし、売れる料理のレシピを持っていたら欲しいですか?」
「美味しい料理って事かしら?」
「はい。珍しい料理でもあります」
リサさんの目がキラーンと光った。
「あらあらまあまあ!教えてくれるの?」
「はい。でもあまりこの店が混みすぎてしまうのもなぁって思って。何処かに出店を出すとか、そういうの考えた事ないですか?又はそういう事やっている知り合いとか…」
「そうねぇ。伝手を当たってみるわ」
私は頷いた。
一つ目はクレープだ。
朝食としても食べられるし、デザートとしてもいい。
食べ歩きに向いているから、屋台でも安定した収入になるはずだ。
具を変えれば幾らでもバリエーションが出来る。
「材料は簡単です。小麦粉と砂糖と牛乳と卵。最初に小麦粉と砂糖と卵を混ぜてから、牛乳を入れます。塩をほんの少し加えても良いです。平らな鉄板なら何でもいいんですけど、これに」
フライパンに形が似た物を熱して貰う。
油を薄く引いて、生地も薄く伸ばす。
引っくり返して裏も焼いて、果実と蜂蜜をはさんでリサさんに渡した。
もう一つ続けて焼いている間に、リサさんが味見をして喜ぶ。
「美味しいわ!」
「もう一つは、ハムとチーズで食べてみて下さい」
リサさんは食べかけのクレープを置いて、焼き上げたもう一つの生地にハムとチーズを挟んで頬張る。
「こっちも美味しい。すごいわねミアちゃん!」
「クレープという料理です。生地は本当は冷蔵庫で一時間くらい休ませて置くのが理想です。それから、バターを入れても美味しいですし、挟む具材に生クリームとかジャムもお勧めですよ」
「是非、作ってみるわ。あと出店をしたいっていう料理人も探しておくわね」
リサさんはとっても嬉しそうに、もぐもぐと頬を膨らませている。
可愛い。
私も甘いものが手軽に食べたいだけなので、メニューに載ったら嬉しい。
今度はポテチも頼もう。
私は王子と朝食を食べて、訓練へと出かけた。
おや?アルトが元気ない。
どうしたのかな?
「大丈夫ですか?アルトさん」
「……ああ。一昨日の騒動で、俺達も迷宮に行く事になった。明日発つ」
「アルトさんもですかぁ。そうだ。ノーツさんにもあげたんですけど、回復薬と毒消しをこっそり作ったので、良かったら持って行って下さい。お世話になったお礼です」
私はポーチの中からごそごそと、回復薬と毒消し薬を出して、アルトに渡した。
「は?作った?」
「ええ、まあ。色々とありまして。早く、早くしまって」
急かすとアルトは腰のポーチにそれを入れた。
入るって事は収納魔法かかってるやつだ!
「効果は保証しませんけど、まあ、うん、きっと良い物です、大丈夫」
「不安しかないんだが?」
確かに自分で言ってて怪しいわ。
色が大丈夫って言っても伝わらないだろうなぁ。
確信もないし。
「えー…信じてくださいよ。危なくなったら飲んで下さい。危なくならないように気をつけてたら飲まなくて済みますよ!」
「飲んで欲しいのか、飲まないで欲しいのか」
「飲まないで済むならそれが一番ですよ!」
危険な目に合わない、なんて事も無いだろうけど、命を脅かされるような怪我はしないでほしい。
アルトはふっと、優しく笑った。
「おう」
警戒してた猫ちゃんが触らせてくれたみたいで、何だか嬉しい。
「あっ、お土産期待してますね!」
「そっちが狙いか」
何て言い草。
別に、そっちが狙いとかじゃないのになぁ。
あったら嬉しいけど。
「お宝持って無事生還してくれたら言う事ないですね」
「確かにな……まあ、適当に期待しとけ」
アルトさんには結構長い期間お世話になってしまった。
私もそろそろ卒業の季節かもしれないな?
58
お気に入りに追加
283
あなたにおすすめの小説
今日も聖女は拳をふるう
こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。
その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。
そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。
女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。
これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。
【完結】妹に全部奪われたので、公爵令息は私がもらってもいいですよね。
曽根原ツタ
恋愛
ルサレテには完璧な妹ペトロニラがいた。彼女は勉強ができて刺繍も上手。美しくて、優しい、皆からの人気者だった。
ある日、ルサレテが公爵令息と話しただけで彼女の嫉妬を買い、階段から突き落とされる。咄嗟にペトロニラの腕を掴んだため、ふたり一緒に転落した。
その後ペトロニラは、階段から突き落とそうとしたのはルサレテだと嘘をつき、婚約者と家族を奪い、意地悪な姉に仕立てた。
ルサレテは、妹に全てを奪われたが、妹が慕う公爵令息を味方にすることを決意して……?
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
【完結】忌み子と呼ばれた公爵令嬢
美原風香
恋愛
「ティアフレア・ローズ・フィーン嬢に使節団への同行を命じる」
かつて、忌み子と呼ばれた公爵令嬢がいた。
誰からも嫌われ、疎まれ、生まれてきたことすら祝福されなかった1人の令嬢が、王国から追放され帝国に行った。
そこで彼女はある1人の人物と出会う。
彼のおかげで冷え切った心は温められて、彼女は生まれて初めて心の底から笑みを浮かべた。
ーー蜂蜜みたい。
これは金色の瞳に魅せられた令嬢が幸せになる、そんなお話。
出来損ない王女(5歳)が、問題児部隊の隊長に就任しました
瑠美るみ子
ファンタジー
魔法至上主義のグラスター王国にて。
レクティタは王族にも関わらず魔力が無かったため、実の父である国王から虐げられていた。
そんな中、彼女は国境の王国魔法軍第七特殊部隊の隊長に任命される。
そこは、実力はあるものの、異教徒や平民の魔法使いばかり集まった部隊で、最近巷で有名になっている集団であった。
王国魔法のみが正当な魔法と信じる国王は、国民から英雄視される第七部隊が目障りだった。そのため、褒美としてレクティタを隊長に就任させ、彼女を生贄に部隊を潰そうとした……のだが。
「隊長~勉強頑張っているか~?」
「ひひひ……差し入れのお菓子です」
「あ、クッキー!!」
「この時間にお菓子をあげると夕飯が入らなくなるからやめなさいといつも言っているでしょう! 隊長もこっそり食べない! せめて一枚だけにしないさい!」
第七部隊の面々は、国王の思惑とは反対に、レクティタと交流していきどんどん仲良くなっていく。
そして、レクティタ自身もまた、変人だが魔法使いのエリートである彼らに囲まれて、英才教育を受けていくうちに己の才能を開花していく。
ほのぼのとコメディ七割、戦闘とシリアス三割ぐらいの、第七部隊の日常物語。
*小説家になろう・カクヨム様にても掲載しています。
今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです
シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」
卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?
娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。
しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。
婚約破棄されている令嬢のお母様視点。
サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。
過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。
138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」
お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。
賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。
誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。
そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。
諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる