ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

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商談成立!

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私と愉快な仲間達はたっぷり観光と店巡りを楽しんで、夕方の鐘が鳴る頃に古着屋へ戻った。
あちこちで買い食いしたので、夕飯前だがお腹はいっぱいだ。
店仕舞の看板が出ているが、躊躇無く中に入る。

「ただいま~終わってますか~?」

声をかけると、おじさんが奥からひょっこり顔を覗かせた。

「ああ、ミアちゃん、お帰り。急いで終わらせたよ。ネストリ殿が出資してくれたから、白金貨5枚でお支払いしよう」
「えっ?そんなに?」
「は?」

後ろでアルトも呆然としている。
まあ、ただの私物だしね。
魔法関係のアイテムも入ってたら多分、この10倍か100倍にはなりそう。
多分、おじだけじゃ払えないし、ネストリでも即金は難しかっただろうな。

「おじさん、ちゃんと儲け出る?大丈夫?」
「ミアちゃんは天使かな?そんなに心配しなくても大丈夫、寧ろ安いんじゃないかと心配なくらいだよ」
「ええ。まとめての価格にした部分もあるので、安めだと思って頂いて結構ですよ」

おじさんの言葉に、ネストリも頷く。
うん?
ネストリに言われると、買い叩かれた気分になるのは何故だろう。
いらないものだからいいけど。

「大丈夫ならいいけど……そうだ、二人にお聞きしたいんですけど、この国に収納魔法がかかっている道具を作れる技術ってあります?」
「聞いた事ないなぁ。あれだろう?遺跡や迷宮から見つかる道具の」
「んー…うわさ程度にしか耳にしたことはないですねぇ。現物も見たことはないですし」

やっぱりかー。
あると便利なんだけどなー。
道具自体はあるからいいけど、もっと応用が利いたものが欲しい。

「じゃあ、収納魔法……ていうか、見た目より広く使えるテントとか、そういうのは無いですかねぇ?」

出来たら家具とかもぜーんぶ、収納出来るようなやつ。
無いか、さすがに。
おじさんとネストリは顔を見合わせてから、横に首を振る。

「あ、あったらいいなって思っただけなので、お気になさらず!王都で何か面白い物があったら仕入れてきてくださいね。楽しみに待っているので」
「ふむふむ、折角だから色々見てくるよ!」

いい笑顔の店主をよそに、マティアスがお金とネックレスの鎖をベルベッドの台座に載せて差し出す。
あ、台座も持ってきたんだ。
大変ですね。
私はぺこっと頭を下げてから、両方受け取る。

「鎖の代金はお幾らですか?」
「安いものが良いと仰っていたので、おまけと考えてください」
「わあ。ありがとうございます」

私の言葉は完全に棒読みだった。
使うの王子だしね!
そのまま鎖を王子にスルーパスする。

「はい、これ、後でつけるんだよ」
「分かった」

説明はしてあるから、大丈夫だろう。
いやー身軽になって良かったね。
ある程度は王子の部屋にも家具として使ってあげたけど。
変な毛皮の絨毯とか、無駄に煌びやかなカーテンとかね。

「今日はお世話になりました」

私が挨拶をすると、おじさんはにこにこして、ネストリ兄弟もにこにこ微笑む。

「こちらこそ」
「ああ、宜しければこの機会にお食事でも如何ですか?ご馳走しますよ」

ネストリは優雅に立ち上がりながら言う。
奢り。
その言葉にはちょっと弱いけど、お腹一杯だからいいや。

「ちょっと、お散歩中に屋台の食べ物食べちゃったので、またの機会に是非」
「そうですか、それは残念です。でも、またの機会と仰って頂けるとは光栄の極み。その時を待ち侘びましょう」

社交辞令ィィィ!
仕事しろ!
あ、是非とか付けなきゃ良かったな。
それに、ネストリも社交辞令だよね。
本当に高級店連れて行かれそうだし、ノーツやアルトと大衆酒場行く方が絶対楽しい。
そんな機会はなくていいかな!

私はにこっと微笑んだ。

「では、お疲れ様です。さようなら」

別れの挨拶を交わして、店を出る。
冒険者ギルド行かなきゃ。
お金預けなきゃ。
何だかアルトも緊張した顔してるし。

「冒険者ギルドまで送って貰ってもいいですか?アルトさん」
「おお……」

多分、そのつもりでは居てくれたと思う。
だって、いきなりぽんと5000万円渡された人見たら、友人なら心配で付いて行くよね。
何だかんだ言って、アルトは面倒見がいいし、優しい。
相手は選ぶだろうけど。
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