ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

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商談と観光

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めちゃくちゃ疑った目で見ていると、二人ともにこにこ愉しそうに笑っている。
ほら、それ。
怪しいんだよ、この異母兄弟。

「怪しい……」
「こ、こらお嬢さん、こちらは、子爵殿であらせられるぞ」
「ふーん」

だから何。
身分が高いから信用も高くなる訳じゃない。
ある程度の保証はされるかもしれないけど。

「ミア嬢。この取引には貴方がたの損は一切ないでしょう。この場で、私と店主が妥当と思われる金額をお支払いするのですから。その後の事は店主と私の取引でもある」

つまり、損がないんだから口出しするなって事だ。
何かむかつくなぁ。

「そうですね。感謝するべきですけど、私、このおじさんを可愛がっているので、無事に帰ってきてほしいんですよ。だから護衛も良い人達つけてくださいよね」

おじさんは、トゥンク……ってなってキラキラした目で見てくる。
ちょっとうぜぇ。
エストリは本当にびっくりしたように目を丸くしてから、哄笑を上げた

「分かりました。じゃあ、ミア嬢の望み通りに契約を交わしましょう。何と幸運な方だ。この可愛らしい方に愛されているなんて」
「わ、儂も、あと20年若くて、妻がいなければ……」

いや、そこは違うだろ。
そこまで好きじゃないからね。
でも妻を大事にしてるとこは高ポイントだよ!

「駄目だ!ミアは私の大切な女性だ!」

お前も本気にするんじゃない。
思わず目を向けると、アルトも何だか溜息を吐いてる。

「ほう。さすがに御目が高い」
「はいはい。もう人の品定めはそれ位にして、商品の査定でもしてください。あと、安くていいので丈夫な首飾りの鎖部分だけ売ってください」

私が割って入ると、ネストリはにこにこして頷いた。

「分かりました。マティアス。ご要望の物をお持ちしてくれ」
「畏まりました」

スッとマティアスは一礼して外へ出て行く。
ついでに店主のおじさんも一度外に出て戻ってきた。

「店は閉じましたので、査定を致しましょうかな」
「ふむ。私も見せて頂きましょう」

二人は荷物を持って、奥のテーブル席へと行く。
んー時間かかりそう。
詰め直すまででも時間かかったもんね。

「えーと、また明日来た方がいいですか?」
「いや、今日済ませるよ。折角ネストリ様がお申し出下さったし、夕方までには終わらせるからね」
「じゃあ、ちょっとお散歩してくるので、お願いしますね」

私が奥に向かって声をかけると、エストリがにこりと微笑んだ。

「お気をつけて」

死の宣告かな?
殺害予告?
何か胡散臭いし物騒なんだよなぁ。
勝手な感想なんだけどね。

王子とアルトを連れて、外に出る。
まだお昼を少し回ったばかりだ。

「アルトさんどうします?何かやりたい事とかありますか?」
「いや、俺は別に。……街の案内でもしてやろうか?」

少し考えて、アルトが口にしたのは意外な申し出だった。
私はさっきまでのもやっとした疑惑が晴れ渡るように、幸せな気分になる。

「えっ、良いんですか?じゃあお願いします」

王子も異論は無いみたいだ。
アルトが先頭を歩いて、私達は付いて行く。
地下迷宮の入り口に、冒険に必要な道具を売っている店、観光名所のような建物等々。
ずっと練習やら買物やら依頼やらで、全然周れていなかったので楽しい。
時折、食べ物を売っている露店もあって、串焼きや腸詰を焼いた物を食べたりする。

「おいしー!」
「美味いな!」

私達が喜んで食べているのを見て、アルトも満更でもなさそうな顔をする。
味付けはシンプルだが、塩気にハーブだったり、香辛料だったり、前世の屋台とそう違いは無い。
うーん。
クレープ食べたいな。
あと、アイス。
塩気のあるもの食べると、甘いものも欲しくなってしまう。
売れるって分かっている料理とかは、リサさんに教えてあげたいなあ。
繁盛したら今以上に忙しくなりそうだけど、お金が関わると変な事にも巻き込まれそうでもある。
ちょっと相談してみよう。
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