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ツンデレめんどくさい
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「ミア、お前の勘通りだ。尾行《つけ》られているな」
「あ、やっぱりです?」
「一人は相当な手練れだ。場所も掴めない。あとの二人は多分、だが、お前が狙われてるんじゃないか?」
ん?
ああ、一人は覚えあるけど、もう一人って何だ?
私は腕組みして首を傾げる。
「うーん。一人は覚えありますけど、もう一人は分からないなぁ……」
「試してみるか?」
「そうですね。お願いします。夕飯は私の奢りという事で」
乗った、というようにアルトは頷いた。
王子は頭に?を浮かべたまま付いて来る。
いつも通り、私の定宿で夕飯を食べてから、王子を宿に送り届けて戻るだけ。
アルトは遠くから、私達を観察してくれている。
定宿に戻ったけど、アルトが来ない。
一人はアーヴォの依頼なんじゃないかな?と思ってる。
私の薬草ちゃん狙いだろう。
でも最近採りに行っていない。
直近でも三日前。普通の依頼をこなしただけだ。
ノーツが迷宮に潜ってるし、薬を作れない以上手元で薬草を育てるのは悪手だから今はやっていない。
ハーブか野菜でも育てるか…?
いや、それは後でいい。
そろそろあれは偶然だったと、諦めてほしいところだ。
「ミア……一人は話がついた。同業者だったから依頼人については不明だが、ただの観察で暴力的な依頼ではないし、もう契約も終わると言ってた」
「それは上々です。有難うございます」
「もう一人は……捕まえていないから確証は無いが」
アルトは言い淀む。
確信はないけれど、何か掴んだものはあるのだろう。
私は頷いた。
「確証はなくてもいいです。聞かせてください」
「宝石店の二人のどちらかだろう」
「えっ」
えっ???
何だそれ??
王子なら分かるけど、何で私?
「何ででしょうね……さっぱり分からない……」
「これも……状況的な話になるが、さっき話した男は尾行《つけ》られていると言ってもいた。単に尾行しやすいから目印にした可能性もあるが、その男を追っていた可能性もある」
「ああ、情報を得る為ですかね?……その尾行してた人から、私の?いや、アルクの、かなあ?まあ、それなら分かりますね。でも今日話ついたのになぁ?」
首を傾げても答えは出てこない。
悩むだけ無駄かな。
「まあ二目見て、尾行したくなるような絶世の美少女でもないし、何か気になることでもあるんですかね」
私の言葉を聞いて、アルトは咽たように咳をする。
え?笑ったの?
「私何か変な事言いました?」
「いや、別に」
「何ですか?気になるじゃないですか」
めちゃくちゃ目が泳いでる……。
アルトどうしたの!
壊れた?
「まあ、見た目は良いだろ」
やっと、それだけ言う。
あれ?
褒められてる?
「アルトさんの好みなら良かったです」
「そこまでは言ってねぇ」
不愉快よりは良いと思ったけど、否定してきた。
ツンツンしやがって。
「嫌いな容姿って思われるよりは良いかなって思ったんですけど」
「……まあ、嫌いではねぇ」
ツンデレめんどいな!
かといって王子とかおじさんみたいな曇り眼《まなこ》よりはいいけれど。
「嫌いじゃないなら上等です。明日は大荷物になるので、手伝ってくださいね」
「またかよ。人使い荒ぇな」
「これあげますから」
私はポーチから、夕方入ったカフェの焼き菓子を取り出した。
「は?何だこれ」
「興味示してたでしょ?甘くないケーキ。甘さ控えめの焼き菓子があったから、果実入りとなしのやつ、おうちでゆっくり食べてください」
「いつの間に買ったんだ」
「席立った時ですよ。はい、どうぞ」
私は受け取らないアルトの手首を掴んで、紙袋を持たせた。
手元に視線を落として、頬を少しだけ染めているアルト。
あまりお菓子プレゼントされる事なさそうだもんね。
「これは、依頼料として、受け取っておく……」
ツンデレめんどくせぇな!
何でもいいから、味わって食え!
「あ、やっぱりです?」
「一人は相当な手練れだ。場所も掴めない。あとの二人は多分、だが、お前が狙われてるんじゃないか?」
ん?
ああ、一人は覚えあるけど、もう一人って何だ?
私は腕組みして首を傾げる。
「うーん。一人は覚えありますけど、もう一人は分からないなぁ……」
「試してみるか?」
「そうですね。お願いします。夕飯は私の奢りという事で」
乗った、というようにアルトは頷いた。
王子は頭に?を浮かべたまま付いて来る。
いつも通り、私の定宿で夕飯を食べてから、王子を宿に送り届けて戻るだけ。
アルトは遠くから、私達を観察してくれている。
定宿に戻ったけど、アルトが来ない。
一人はアーヴォの依頼なんじゃないかな?と思ってる。
私の薬草ちゃん狙いだろう。
でも最近採りに行っていない。
直近でも三日前。普通の依頼をこなしただけだ。
ノーツが迷宮に潜ってるし、薬を作れない以上手元で薬草を育てるのは悪手だから今はやっていない。
ハーブか野菜でも育てるか…?
いや、それは後でいい。
そろそろあれは偶然だったと、諦めてほしいところだ。
「ミア……一人は話がついた。同業者だったから依頼人については不明だが、ただの観察で暴力的な依頼ではないし、もう契約も終わると言ってた」
「それは上々です。有難うございます」
「もう一人は……捕まえていないから確証は無いが」
アルトは言い淀む。
確信はないけれど、何か掴んだものはあるのだろう。
私は頷いた。
「確証はなくてもいいです。聞かせてください」
「宝石店の二人のどちらかだろう」
「えっ」
えっ???
何だそれ??
王子なら分かるけど、何で私?
「何ででしょうね……さっぱり分からない……」
「これも……状況的な話になるが、さっき話した男は尾行《つけ》られていると言ってもいた。単に尾行しやすいから目印にした可能性もあるが、その男を追っていた可能性もある」
「ああ、情報を得る為ですかね?……その尾行してた人から、私の?いや、アルクの、かなあ?まあ、それなら分かりますね。でも今日話ついたのになぁ?」
首を傾げても答えは出てこない。
悩むだけ無駄かな。
「まあ二目見て、尾行したくなるような絶世の美少女でもないし、何か気になることでもあるんですかね」
私の言葉を聞いて、アルトは咽たように咳をする。
え?笑ったの?
「私何か変な事言いました?」
「いや、別に」
「何ですか?気になるじゃないですか」
めちゃくちゃ目が泳いでる……。
アルトどうしたの!
壊れた?
「まあ、見た目は良いだろ」
やっと、それだけ言う。
あれ?
褒められてる?
「アルトさんの好みなら良かったです」
「そこまでは言ってねぇ」
不愉快よりは良いと思ったけど、否定してきた。
ツンツンしやがって。
「嫌いな容姿って思われるよりは良いかなって思ったんですけど」
「……まあ、嫌いではねぇ」
ツンデレめんどいな!
かといって王子とかおじさんみたいな曇り眼《まなこ》よりはいいけれど。
「嫌いじゃないなら上等です。明日は大荷物になるので、手伝ってくださいね」
「またかよ。人使い荒ぇな」
「これあげますから」
私はポーチから、夕方入ったカフェの焼き菓子を取り出した。
「は?何だこれ」
「興味示してたでしょ?甘くないケーキ。甘さ控えめの焼き菓子があったから、果実入りとなしのやつ、おうちでゆっくり食べてください」
「いつの間に買ったんだ」
「席立った時ですよ。はい、どうぞ」
私は受け取らないアルトの手首を掴んで、紙袋を持たせた。
手元に視線を落として、頬を少しだけ染めているアルト。
あまりお菓子プレゼントされる事なさそうだもんね。
「これは、依頼料として、受け取っておく……」
ツンデレめんどくせぇな!
何でもいいから、味わって食え!
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