ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

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幕間ー神を信じない男の祈り

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この世界に神なんていない。
俺は冷めた聖職者だった。
光の魔法は使えるし、回復も出来る。
けれど、この世界にこんなに悪人が蔓延っているのは何故だ?
もし神がいるならば、何故それを淘汰しないんだ?

俺が間違っている事を指摘する度に、言われる。
その位見過ごせ。
口を出すな。
善人ぶるな。
俺だって善人ではない。
自分の心に恥じる事はしないが、何も罪を犯さない訳ではない。
人は気づかずに罪を犯す生き物だ。
だからこそ、気づいた時には正さなくてはいけないのだろう。
そんな神さえ疑う俺の前に現れた純真無垢な女性が(以下略)

ミアが記憶を失ってしまったのは、神の所為だろうか。
彼女は冷静に、俺達の罪を指摘した。
それはどれも、気づいていたものであり、見過ごしていたものであり、気づかない振りをしていたものだ。
流されていれば楽だったろう。
でも彼女は敢えてその流れに抵抗した。
俺達を救済する為に。

エルンストが調べ上げた彼女へ対する嫌がらせも、今まで見てきた令嬢達の醜い姿も有責に値する。
かと言って、こちらの罪が帳消しになる訳ではない。
ミアの言うとおり、確たる証拠が無いのであれば、不利なのは俺達だけだ。
健気なミアは、虚勢を張って、笑顔を浮かべて、一人で部屋を出て行った。
追いかけても、引き止める言葉など思い浮かばない。
全てが嘘になってしまう。
それでは罪を重ねるばかりで、彼女の最後の好意すら無になって。

だが、エルンストから齎されたミアの決断は、あまりにも過酷だった。
一人で孤独に、危険な旅へと出発したのだ。
誰にも何も言わず、助けも借りずに。
それは彼女なりの贖罪だったのだろうか?
では、俺は何をすればいい?
まずは、婚約者に誠心誠意の謝罪をした。
そして、自分には婚約者たる資格は無い事も、幸いな事に婚約者だった令嬢はその謝罪を受け入れてくれた。
修道院に入ることも考えたが、何の危険も無い場所で祈りを捧げる事に何の意味があるだろう。
神様はいるよ?と純真無垢な瞳で笑いかけてくれた少女が、過酷な状況に身を置いているというのに。
未だ神を信じ切れていない俺の祈りが、神に届くわけも無い。
それならば、聖女のように全ての罪を抱えて俺達を救った、ミアを助ける道こそが、俺の祈りだ。
彼女のような善人が、守られなくては意味が無い。
ミアの信じる神がいるならば、彼女を守ってくれ。
俺が彼女の元へ行くまででいい。
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