ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

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幕間ー騎士の守るべき者

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俺の家は騎士を輩出する家門だ。
男兄弟ばかりで喧嘩をして育った俺は、学園では乱暴者の烙印を押されていた。
親が騎士団長にまで上り詰めていたし、騎士としては優秀だから、目こぼしされている部分もあったが。
すぐカッとなる性格と、短絡的な所が、周囲に疎まれていた。
もう少し考えて行動しろ。
先走るな。
言われても、思わず行動してしまい、後悔する。
そんな事の繰り返しの中、気がつけば周囲から距離を置かれていた。
友人はいるが、当たり触りのない距離。
親友と呼べる者はいない。
乱暴者の俺に、女性達は脅えて近寄らない。
それなのに、明るく接してくれた太陽のような女性が(以下略)

ミアが突然記憶を失ってしまった。
そして、ふわふわと柔らかい雰囲気だったミアは、きびきびと俺にも解るくらいの易しい言葉で全てを説明する。
置かれている状況は良くはない。
彼女が身を引かなければ危ない所だったのだ。
何て強くて健気な女性だろうか。

更に衝撃的だったのは、エルンストからの連絡で、ミアが冒険者になって旅立ってしまった事だ。
心の何処かで、ミアにはまた会えると暢気に考えていた。
でも、もう会えない。
そう思った時、初めて俺は絶望した。
何も覚えていないのに、俺達の身を案じてくれたミア。
彼女は全てを捨てて、一人孤独に旅に出たというのに。
俺はまたも考えがいたらずに、のうのうと暮らしていた。
ずっと言われ続けていたのに。
唯一、大事にしたい女性すら守れずに。
守れていないことすら気づかずに。
馬鹿だと、単純だと言われても何処かでそれを逆に馬鹿にしていた。
強さがあればいいと。
だが、強さがあった所でどうだ?
何も出来ていないじゃないか?
騎士になって守りたいものは、一番守りたいものはもう此処にはないのに。

俺が守りたいのは、ミアだ。

情報をくれたエルンストが婚約者との間を円滑にまとめてくれた。
元々俺の粗暴さが気に食わない令嬢だったから、拒まれる事もない。
寧ろ彼女はミアに感謝すらしているだろう。
嫌いな俺と離れる事が出来たのだから。
親兄弟は、俺の決意と望みを聞くと、黙って送り出してくれた。
どんな困難が待ち受けていようと、君を探し出して危険から守ってみせる。
ミア、無事でいてくれ。
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