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意外な才能
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訓練が終わると、私は王子を連れて宿に戻って食事を摂った。
それから、今日は防具屋へと行く。
昨日行った武器屋のお勧めの店だ。
そこで、王子の新しい金属鎧を調達する。
全部ベルトで留められる奴。
内側に着る鎖帷子は、元々着ていたものの方が上等なので、それ以外。
完全に身体に合う、という訳ではないけれど動き易いものを選んだ。
総額金貨1枚。
銀貨に換算すると100枚だ。
多分、これでも安い方。
おまけもしてもらってのお値段だが、満足だ。
試着したまま、王子と市場へ向かう。
着た方が荷物にならないし。
次に買うのは、生活必需品だ。
ちょうど私も市場を見たかったので嬉しい。
出来れば収納魔法がかかった鞄が欲しいなぁ。
私のも十分使えるけど、冒険するならもう少し良いものもあったら。
色々な露店を見ていると、ある店を通り過ぎた時に、ん?と王子が疑問を浮かべるような声がした。
「どうかしました?」
「いや、あの店の売り物に、高価な物が混じ……」
全部言い終わる前に、路地裏に王子を引っ張り込む。
基本、声デカい。
もっと、静かに喋れ!
「アルク、そういう話は小声でして!」
「……あ、すまない……」
「で?具体的にはどれ?」
「もっと近くで見たい。もし思ったとおりの品なら、10銀貨ではなく、10金貨にはなる」
私は頷いた。
こいつ、使えるぞ!
目利きが出来るなんて聞いてないよ!
良い教育してるじゃん王様!
私は王子の手を引いて、目当ての店の前に戻った。
おぉ、ちゃんと書いてある。
どれでも10銀貨って書いてある、宝飾品達。
うーん?
私にはどれもそんなに違いが分からない。
王子は幾つか手に取って見て、一つの石を私に渡した。
「これ、買ってくれるの?」
「ああ」
「嬉しい!でも……こんな高い物いいの?」
特に打ち合わせをした訳じゃないけれど、本当に高いの?という意味で聞いてみる。
王子は自信満々に頷いた。
そして、王子は腰の皮袋から銀貨を店に払う。
私は王子を連れて、さっさとその店から離れた。
手の上にある宝石は、確かに綺麗だけど。
鈍い光を放つ、月長石だ。
「これって、高く売れるの?」
「正規の宝石店にいけば売れると思うぞ」
「よし、じゃあ試してみましょう。王子の部屋に帰ろう」
「ん?何故だ?」
荷物が積み上がった部屋。
あの荷物邪魔だし。
「丁度良いから王子の部屋のゴミも片付けようと思って」
「……なっ?あれは塵などではないぞ。…だがまあ、今の暮らしには必要ないものもあるか……」
考え込んだ王子を連れて部屋に戻る。
一番の目当ては貴族の服だ。
良かったぁ。
荷物整理で捨てる前で。
いや、捨てるってか売るんだけど。
「じゃあ、これ、これに着替えてください」
「何故だ。夜会に行くのか?」
「行く訳ないでしょう?貴族の姿してた方が宝石だって高く売れるでしょう?」
「ふむ、そういう事か」
王子は納得して、さっそく買った鎧を脱いで着替え始める。
順調に鎧を脱いでいくのを見て、買ってよかったな、と私は頷いた。
鎖帷子を脱いで、ズボンに手をかけたところで王子は頬を赤らめてもじもじとする。
「あの…だな、私が着替えているところを見るのか?」
え?
全裸になるわけじゃあるまいし。
思ったけど、何だか哀れだし、部屋の荷物も物色したいので、私は王子に背を向けた。
「じゃあ私、荷物の中身確認して仕分けするので、着替えててください」
「……あ、…うん、はい……」
私は積み上がった荷物の一番上をベッドの上に降ろすとパカっと開けた。
服ですね。
タイツとかもう履く機会ないでしょ。
3足あれば十分です。
あと、いらない。
ぽいぽいっと三つだけ横に避けて、足元に鞄ごと置く。
次の荷物を開ける。
肌着というか、シャツ。
これはまあ、いるかな?
保留。
鞄ごとベッドの頭部分に置く。
次は何だろう?
お皿にティーセット?豪華な装飾だけど、普段使いなのかなこれ?
お気に入りか?
でも冒険に持っていくような代物ではない。
うーん。
私の部屋に持っていこう。
鞄ごとベッドの端に載せる。
「着終わったぞ」
振り返ると、まさに王子。
完成品の王子がいた。
うん、かっこいいですね。
それから、今日は防具屋へと行く。
昨日行った武器屋のお勧めの店だ。
そこで、王子の新しい金属鎧を調達する。
全部ベルトで留められる奴。
内側に着る鎖帷子は、元々着ていたものの方が上等なので、それ以外。
完全に身体に合う、という訳ではないけれど動き易いものを選んだ。
総額金貨1枚。
銀貨に換算すると100枚だ。
多分、これでも安い方。
おまけもしてもらってのお値段だが、満足だ。
試着したまま、王子と市場へ向かう。
着た方が荷物にならないし。
次に買うのは、生活必需品だ。
ちょうど私も市場を見たかったので嬉しい。
出来れば収納魔法がかかった鞄が欲しいなぁ。
私のも十分使えるけど、冒険するならもう少し良いものもあったら。
色々な露店を見ていると、ある店を通り過ぎた時に、ん?と王子が疑問を浮かべるような声がした。
「どうかしました?」
「いや、あの店の売り物に、高価な物が混じ……」
全部言い終わる前に、路地裏に王子を引っ張り込む。
基本、声デカい。
もっと、静かに喋れ!
「アルク、そういう話は小声でして!」
「……あ、すまない……」
「で?具体的にはどれ?」
「もっと近くで見たい。もし思ったとおりの品なら、10銀貨ではなく、10金貨にはなる」
私は頷いた。
こいつ、使えるぞ!
目利きが出来るなんて聞いてないよ!
良い教育してるじゃん王様!
私は王子の手を引いて、目当ての店の前に戻った。
おぉ、ちゃんと書いてある。
どれでも10銀貨って書いてある、宝飾品達。
うーん?
私にはどれもそんなに違いが分からない。
王子は幾つか手に取って見て、一つの石を私に渡した。
「これ、買ってくれるの?」
「ああ」
「嬉しい!でも……こんな高い物いいの?」
特に打ち合わせをした訳じゃないけれど、本当に高いの?という意味で聞いてみる。
王子は自信満々に頷いた。
そして、王子は腰の皮袋から銀貨を店に払う。
私は王子を連れて、さっさとその店から離れた。
手の上にある宝石は、確かに綺麗だけど。
鈍い光を放つ、月長石だ。
「これって、高く売れるの?」
「正規の宝石店にいけば売れると思うぞ」
「よし、じゃあ試してみましょう。王子の部屋に帰ろう」
「ん?何故だ?」
荷物が積み上がった部屋。
あの荷物邪魔だし。
「丁度良いから王子の部屋のゴミも片付けようと思って」
「……なっ?あれは塵などではないぞ。…だがまあ、今の暮らしには必要ないものもあるか……」
考え込んだ王子を連れて部屋に戻る。
一番の目当ては貴族の服だ。
良かったぁ。
荷物整理で捨てる前で。
いや、捨てるってか売るんだけど。
「じゃあ、これ、これに着替えてください」
「何故だ。夜会に行くのか?」
「行く訳ないでしょう?貴族の姿してた方が宝石だって高く売れるでしょう?」
「ふむ、そういう事か」
王子は納得して、さっそく買った鎧を脱いで着替え始める。
順調に鎧を脱いでいくのを見て、買ってよかったな、と私は頷いた。
鎖帷子を脱いで、ズボンに手をかけたところで王子は頬を赤らめてもじもじとする。
「あの…だな、私が着替えているところを見るのか?」
え?
全裸になるわけじゃあるまいし。
思ったけど、何だか哀れだし、部屋の荷物も物色したいので、私は王子に背を向けた。
「じゃあ私、荷物の中身確認して仕分けするので、着替えててください」
「……あ、…うん、はい……」
私は積み上がった荷物の一番上をベッドの上に降ろすとパカっと開けた。
服ですね。
タイツとかもう履く機会ないでしょ。
3足あれば十分です。
あと、いらない。
ぽいぽいっと三つだけ横に避けて、足元に鞄ごと置く。
次の荷物を開ける。
肌着というか、シャツ。
これはまあ、いるかな?
保留。
鞄ごとベッドの頭部分に置く。
次は何だろう?
お皿にティーセット?豪華な装飾だけど、普段使いなのかなこれ?
お気に入りか?
でも冒険に持っていくような代物ではない。
うーん。
私の部屋に持っていこう。
鞄ごとベッドの端に載せる。
「着終わったぞ」
振り返ると、まさに王子。
完成品の王子がいた。
うん、かっこいいですね。
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