ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

文字の大きさ
上 下
17 / 89

うっかり約束を忘れてしまった

しおりを挟む
あ、そうだ。
聞きたかった事あったんだった。

「エミリーさん、あの薬草採取で助かってる身ではあるんですけど、薬草って育てる事出来ないんですか?」
「専門家ではないので、種類に寄ると思いますけど、出来ますよ」

なあんだ。
出来るんだ。

「でも、城壁の内側って土地が少ないので、畑は無理でしょうね」

土地問題か。
世知辛いな。

それに、わざわざ外に出て危険を冒して世話して採取するよりは、その辺に適当にある奴を持ってきてもらうのが良いのかもしれない。
世話するのにだって、お金も時間もかかるもんね。
だったら手間隙かけずに、育ったもの採ったほうが安上がりか。

私はふむふむと相槌を打つ。

「あの、依頼者に会う事って出来ます?錬金術師か何かですよね?」
「もしかして、錬金術も勉強したいの?」

鋭い!
その通りです。

私が頷くと、エミリーさんはにっこりした。

「じゃあ、先方に聞いてみるわね。あ、でも本なら図書館にもあるし、冒険者カードでも中に入れるのでお勧めよ。あと、専属契約は簡単にしない方が良いわ。人によっては不当な契約を結ぼうとするから、そういう時は遠慮せずに相談してね?」
「はい、わかりました。じゃあ、また明日!」

よーし。
植木鉢買って帰ろう。
土はその辺にあるかな?
公園の土でいいか。

私はすっかりノーツの事を忘れて、意気揚々と市場へ向かった。

「ミア!……夕飯は、どうする?」

追いかけてきたノーツに声をかけられて、私はうっかり忘れていた事を思い出した。
忘れてました、なんて言ったら、また雨に濡れた犬みたいになるんだろうな。

「すいません。考え事しちゃってて…植木鉢を買おうと思うんですよ。今日採ってきた薬草を育ててみようかなって…」

ごめんなさい、と頭を下げると、慌ててノーツに肩をつかまれた。

「いや、謝る事じゃない。そうか、じゃあ俺は一度宿に戻って着替えてくるから、君の宿屋に迎えに行けばいいだろうか?」

そういえば、スライムでべちゃべちゃでしたね。
乾き始めてはいるけど、鎧の手入れも必要だろう。
あれ?
でも、清潔《クリーン》使えば、大抵の汚れは落ちるんじゃ?

「ノーツさんは、魔法全然使えないんですか?」
「………ああ、そうだ……」

ああっ!
雨に打たれてる!
雨の中で項垂れてる犬になってる!

「責めたわけじゃないです!あの、宜しければ清潔《クリーン》しましょうか?」
「いや、拭けば済むことだ。貴重な魔力を使わせるわけには…」

確かにそうかもしれないけど、使わないと上達しないんで。
多分。

清潔《クリーン》

自分以外に使う場合は接触が条件だ。
私はノーツの胸に手を当てて魔法を発動した。
ふわっと風が包むような感じがして、スライム汚れは落ちたようだった。

「おお……すごいな」
「冒険中でもないんですから、遠慮しなくてもいいんですよ」

にこっと微笑むと、ノーツは照れ臭そうに笑った。

「ありがとう。これで鎧の手入れは省略できたな。だが、一度着替えに戻るよ。また後で」
「はーい。待ってますね!」

散歩に行くよーと声をかけられて、尻尾をブンブン振っている犬のように嬉しそうに、ノーツは大きく手を振って歩いて行った。
私はそのまま市場へと向かう。
目当ての植木鉢を購入して、丈夫なハンカチと、大き目の布も買う。
そして今後も必要になるかもしれないので、手に馴染むスコップも買ってポーチに入れた。

うーん。そういえば、この収納魔法のかかったポーチを見て思い出したけど、水袋の収納魔法版とか無いのかな?
水を沢山持ち歩けるって、かなり助かると思うんだけど。

思わず色々な露店を覗こうとしてハッとする。
ノーツとの約束を再び忘れる所だった。
また今度買い物に来よう。

私は宿屋へと向かった。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...