ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

文字の大きさ
上 下
13 / 89

悲報:二人は好みじゃない

しおりを挟む
「リサです。ミアちゃんのお嫁さんです」

可愛らしくふふっと笑う姿に、ノーツとアルトはぽかんと口を開けた。
リサさんの方が一枚上手ですね。

「そうなんです。綺麗でしょう?しかもお料理がすごく美味しいんです」

何だか呆然としている二人を席に案内して座らせると、たたたっと軽やかな足音がして、何かが腰に抱きついた。

「違うもん!ミア姉のお嫁さんはリヤだもん!」
「そうそう。そうだったね。はあ可愛い!で、二人は何食べます?」

抱きついてきたリヤちゃんを抱きしめつつ、頭を撫でながら注文を取ると、やっと我に返った二人が店の壁に貼ってあるメニューを見る。

「特製ランチの大盛りと、今日の煮込み料理を頼む」
「俺は特製ランチで」

リヤちゃんは注文を聞くと、てきぱきと奥に伝えて、水の入ったカップを二人の前にとん、と置いた。
私は奥に行くと、賄い料理の手伝いをする。
そして、ノーツとアルトの席で御飯を食べる事を伝えた。

「今日は向こうで二人と食べますね」
「ねえねえミア姉は、どっちと付き合ってるの?」

突然の爆弾発言である。
お嬢さんはおマセさんですな。

「えー?私はリヤちゃん一筋だよ?」
「そういうのいいから」

女子ってこういうとこあるよね。
めっちゃ冷たいじゃん?

「どっちでもないよ。二人は先生みたいなもので、今日の依頼にちょっと付き添って貰うだけ。リヤちゃんはどっちがいいとかあるの?」
「うーん、どっちも趣味じゃないかなー」

辛辣すぎぃ。
筋肉と影のある男は駄目、と。
私は心のメモに記した。

「ねーママは?」

おっと、そっちにも聞く??
でも、私も知りたい。
知りたいので、黙って見ていると、リサさんはうーん、と眉を下げる。

「そうねぇ。どっちも違うかなぁ?同じ歳くらいの男性の方が素敵に見えるのよね」

あー年下駄目かぁ!
残念!

私は出来上がった賄い御飯を持って、リヤちゃんはランチを持って、席に戻った。

「お待たせしました」
「向こうで一緒に食べなくていいのか?……その、嫁と」

あれ?本気にしてる?
私は思わず頬をほんのり染めつつ、目を逸らしているノーツを見つめた。

「ええ。アルトさんとノーツさん二人きりにすると喧嘩するかキスしそうなので」
「それはない」

二人の声が重なった。
息はぴったりですな。
でも喧嘩はするよね。
私は二人の間の席に座ると、先程の事を思い出した。
一応伝えないと、いけませんね。

「ここで、非常に残念なお知らせがあります」

私は沈痛な面持ちを作って言うと、二人が真剣な顔になる。
予定が変更になったのか?と思ったのかもしれない。
でも違う。
リヤちゃんが、煮込みスープをノーツの前に置いた。

「リサさんとリヤちゃんは、二人の事は趣味じゃないそうです」
「そういう情報はいらないんだが……?」
「わざわざ言う必要あるか……?」

ノーツとアルトが非常に悲しそうに言うので、私も心を鬼にした。

「だって、二人とも!あんなに!綺麗で!可愛いでしょう?余計な夢を見ないようにという親切です」
「小さな親切大きなお世話って言葉知ってるか?」

アルトが目を眇めながら、フォークで私を指してくる。
私は賄いを食べながら、答えた。

「食器で人の事指すのはお行儀が悪いですよ。ほら食べて食べて。美味しく栄養摂ったら薬草摘みです」
「付いてくる必要なかったかもな……」
「うるさいぞ」

おや?
今更薬草摘みの監視係がつまらないと気づいたのかな?

私はアルトを見て、頷く。

「別にご飯食べたら帰っても大丈夫ですよ?」

私の言葉で、何故かぱあっとノーツが明るい顔になり、逆にアルトが渋い顔になる。

「いや別に。用があるわけじゃねーし、すぐそこだろ?」
「まあ、すぐそこですけど……」

付いてくると分かったからか、ノーツが溜息を吐いてもりもりとご飯を食べ始めた。
何だろう?
ノーツが犬だとすると、アルトは猫かな?
楽しそうにしてると邪魔したい人なのかもしれない。
性格悪い。
でも猫だと思うと可愛いから不思議。
実際は猫じゃないから微妙だけど。

私は賄いを味わいつつ、冒険についての話を二人に聞くことにした。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

団長サマの幼馴染が聖女の座をよこせというので譲ってあげました

毒島醜女
ファンタジー
※某ちゃんねる風創作 『魔力掲示板』 特定の魔法陣を描けば老若男女、貧富の差関係なくアクセスできる掲示板。ビジネスの情報交換、政治の議論、それだけでなく世間話のようなフランクなものまで存在する。 平民レベルの微力な魔力でも打ち込めるものから、貴族クラスの魔力を有するものしか開けないものから多種多様である。勿論そういった身分に関わらずに交流できる掲示板もある。 今日もまた、掲示板は悲喜こもごもに賑わっていた――

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。

なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。 二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。 失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。 ――そう、引き篭もるようにして……。 表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。 じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。 ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。 ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結済】平凡令嬢はぼんやり令息の世話をしたくない

天知 カナイ
恋愛
【完結済 全24話】ヘイデン侯爵の嫡男ロレアントは容姿端麗、頭脳明晰、魔法力に満ちた超優良物件だ。周りの貴族子女はこぞって彼に近づきたがる。だが、ロレアントの傍でいつも世話を焼いているのは、見た目も地味でとりたてて特長もないリオ―チェだ。ロレアントは全てにおいて秀でているが、少し生活能力が薄く、いつもぼんやりとしている。国都にあるタウンハウスが隣だった縁で幼馴染として育ったのだが、ロレアントの母が亡くなる時「ロレンはぼんやりしているから、リオが面倒見てあげてね」と頼んだので、律義にリオ―チェはそれを守り何くれとなくロレアントの世話をしていた。 だが、それが気にくわない人々はたくさんいて様々にリオ―チェに対し嫌がらせをしてくる。だんだんそれに疲れてきたリオーチェは‥。

処理中です...