ざまぁ返しを全力回避したヒロインは、冒険者として生きていく~別れた筈の攻略対象たちが全員追ってきた~

ひよこ1号

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一角兎にぶち切れた

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午前の練習が終わって、昼ごはんを食べに私は意気揚々と宿屋へ引きあげた。
リサさんとリヤちゃんと、台所の端っこで賄いを食す。
うまうま。
昨日の煮込みスープの残りとパン。
だけど、めっちゃくちゃ美味しい。

「とっても美味しかったです。じゃあ薬草摘み行ってきますね!」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃーい」

優しい声と元気な声に背中を押されて、私は東門から薬草を摘みに外に出た。
この前とはちょっと違う所に行こう。
少し離れた所まで足を延ばす。
草原が広がっていて、左右に森があるのが東エリアだ。
真ん中には街道があって、時折馬車や馬に乗った人、徒歩の人間も町へと向かうのが見える。
何とも長閑な雰囲気で、さやさやと草を戦がせる風も気持ちいい。
うっかり、昼寝したい気分に襲われたが、それは不味い。
ここは怪物も居れば、悪人も居る世界なのだから。

目の届く所に兵士が立っている範囲で、薬草を探す。
森の程近くにすぐに、薬草の群生地を見つけた。

「あった、あった」

あー地味に好き、この作業。
私、農家の方が向いてんじゃねえかな?

そこにピョン、と可愛い兎が現れた。
頭に小さい一本角があるが、白くて赤い目の可愛らしいモフモフだ。

んぎゃあああ、かわいいいいい!

はあはあ、と思わず私は不審者のようになりながら、兎に手を伸ばした。
兎は、私を攻撃した。

はああああ!?

いきなり顎を角で突き上げられて、私は仰け反りながらぶち切れた。
腰に括りつけた鞘から短剣《ダガー》を抜き出すと、もう一度向かってくる兎の首に短剣《ダガー》を叩き込む。
ギィッと悲鳴を上げて、兎は事切れる。

ん?
あれ?
死ぬのはやない?
もっとこう、死闘を繰り広げるかと思ったのに。
クリッたの?
それとも急所攻撃扱い?
即死攻撃?

よく分からないまま、色々な可能性を考えつつ、取りあえず短剣《ダガー》を抜いて、兎を草の上に横たえる。
あ、こういう時こそアレの出番だ。
能力開示《ステータス》

剣がいきなり2レベルになってた。
今朝の訓練か。
蹴られた甲斐があったね。
短剣《ダガー》も1レベルになってる。
あ、あった。
急所攻撃、それに短剣《ダガー》スキルの急所突きも。

いや、うん。
大体の生物は首が急所だよね。

狩猟も1レベルになってる。やったね。

とりあえず、これどうすっか。
食べれるなら食べたいし、ちょっとリサさんに聞きに行こう。

私は別の袋に兎もどきと短剣《ダガー》を入れて、宿屋へと急ぐ。
手持ちに水はあるけど、洗うほどは持っていないからだ。
血を処理しないまま鞘に戻すわけにもいかない。

「リサさーん。この兎みたいなのって、食べれます?」
「あら、アルミラージ、とれたてね!新鮮だわ!」

どうやらアルミラージという生き物らしい。
一角兎というところか。

「市場で仕入れるときは煮込みにするのだけど、新鮮だから血抜きして照り焼きにしましょう」

リサさんは嬉しそうに手を叩いた。
兎肉好きなのかな?
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