6 / 89
ノーツの剣術指南
しおりを挟む
翌朝も元気良く私は目覚めた。
うーん、清々しい。
大きく伸びをして、昨日放置した足湯だった水が入った桶をトイレにいきつつ、流す。
装備を整えてから窓を開けると、まだひんやりした朝の空気が頬を撫でた。
遠くに鳥が飛んでいるのも見えて、朝焼けの雲の色も美しい。
ああー憧れの異世界!
変な乙女ゲームに囚われなくて良かったわー。
ほんとギリだった。
私は戸締りを終えると階段を下る。
そこにはもう朝御飯のいい匂いが漂っていた。
「おはよう、ミアちゃん」
「おはようございます、リサさん」
気づいたリサさんに声をかけられ、笑顔で挨拶を返す。
「すぐ用意出来るから待っててね。あ、お弁当は少し時間かかるけど…」
「あ、一度お昼に顔出しますよ。今日はギルドで授業なので」
そう言うと、リサさんはおっとりと柔らかい微笑を見せる。
お皿に料理を盛りつけながら、うんうんと頷いた。
「だったら、ランチをご馳走するわね。賄いになってしまうけれど、温かい料理の方がいいでしょう?」
「わー、嬉しいです。それで良ければお願いします」
美人で優しいって、もうそれだけでチートじゃない?
しかも胸だってたゆんたゆん。
愛と夢と希望が詰まってますよ。
そういえば、旦那さんいるのかな?
いなかったら立候補したいくらいだよ。
「はい、どうぞ」
「おいしそう!いただきます!」
お皿の上には焼きたてのパンと、サラダにベーコンエッグ。
それにカップに入ったスープが添えられて、めちゃくちゃモーニングセット。
美味しい。
スープは野菜と玉蜀黍みたいな穀物が入ったスープで、優しい甘みがする。
身体にしみわたる。
お腹も一杯になった私は食器を下げて、ギルドへ向かう。
朝の町には冒険者や、店で働く人々が忙しなく歩いている。
ギルドも人が溢れて活気づいていた。
まずは、冒険者が集まる掲示板に行き、薬草採取の依頼だけもぎとって受付に向かう。
「おはようございます。授業はもう受けられますか?」
「まだ講師をしてるアルトが来ていないの。修練場で待っててくれる?」
「はあい」
口頭で案内をされて、扉の先の廊下を進んで外へと出る。
建物でぐるりと囲まれた広い中庭のようなところに、色々な武器と木人形が並べられていた。
剣の素振りをしている少年もいる。
あ、懐かしい。
そういえば、私剣道やってたっけ。
適当な重さの剣を手に取ると、私も素振りを始めた。
下に振ったときに手を絞る事で、勢いを殺す。
剣道はあくまで、剣道であって実践向きじゃないのかな?
稽古のとき下まで力任せに振り抜く馬鹿も居たけど、そういうのって偶に受ける剣を下げると床打つんだよね。
そう考えると大きな隙になって、首や頭がガラ空きになるから、やっぱり大事なのかも?
つらつらと考えていると、何だか集まった人達に注目されていた。
「へ?」
私は後や横をきょろきょろ見るが、私しか居ない。
「何か、変でした?」
「いや、綺麗な剣筋だと思ってな。何処かで習っていたのか?」
全身金属鎧の騎士みたいな青年が真面目な顔で言う。
私はこっくり頷いた。
遠い世界の話だし、もうぼんやりとしか覚えていないけど。
「ふむ、じゃあ打ち合いをしてみるか?」
「えっ……あ、はい。じゃあお願いします」
よくわからんけども、機会があったら試したほうがいいだろう。
私は剣を構えた。
てゆーか、そっちは全身金属鎧ってずるくない?
私部分的に皮鎧で、あと布なんですけど??
「大丈夫だ。力いっぱい打ったりはせんよ」
いやもう。
身体のでかい男が全身金属鎧で固めて、剣を構えているんですよ?
少しでも力いれたら、折れちゃいそうじゃん。
見ただけでお腹一杯だよ。
「来ないのなら、こちらから行く」
ひえっ。
乙女、乙女に何すんの!
片手で振られた剣を、両手で持っている剣で弾く。
力いっぱいじゃないのは本当だろうけど、重い。
フッと男が笑った気がした。
あー余裕ぶっこいてる。
そりゃそうですよね。
腹立つわー。
もう一撃、同じ攻撃が来た。
私は同じく弾き、今度は後ろに引かずに踏み込んで、弾いた反動で手元に剣を引き付けて首筋を狙う。
その瞬間、お腹に衝撃が走った。
「かはっ」
同時に、私は後ろに吹っ飛んだ。
呼吸も、出来なくなって、蹴られたのだと分かった。
やばい。
朝食が出ちゃう。
だめだめ、勿体無い。
私はお腹を押さえて、ぐっと堪えた。
瞼の裏に、リサさんの優しい微笑が浮かぶ。
リサさん……。
貴方の手料理は吐きません……!
うーん、清々しい。
大きく伸びをして、昨日放置した足湯だった水が入った桶をトイレにいきつつ、流す。
装備を整えてから窓を開けると、まだひんやりした朝の空気が頬を撫でた。
遠くに鳥が飛んでいるのも見えて、朝焼けの雲の色も美しい。
ああー憧れの異世界!
変な乙女ゲームに囚われなくて良かったわー。
ほんとギリだった。
私は戸締りを終えると階段を下る。
そこにはもう朝御飯のいい匂いが漂っていた。
「おはよう、ミアちゃん」
「おはようございます、リサさん」
気づいたリサさんに声をかけられ、笑顔で挨拶を返す。
「すぐ用意出来るから待っててね。あ、お弁当は少し時間かかるけど…」
「あ、一度お昼に顔出しますよ。今日はギルドで授業なので」
そう言うと、リサさんはおっとりと柔らかい微笑を見せる。
お皿に料理を盛りつけながら、うんうんと頷いた。
「だったら、ランチをご馳走するわね。賄いになってしまうけれど、温かい料理の方がいいでしょう?」
「わー、嬉しいです。それで良ければお願いします」
美人で優しいって、もうそれだけでチートじゃない?
しかも胸だってたゆんたゆん。
愛と夢と希望が詰まってますよ。
そういえば、旦那さんいるのかな?
いなかったら立候補したいくらいだよ。
「はい、どうぞ」
「おいしそう!いただきます!」
お皿の上には焼きたてのパンと、サラダにベーコンエッグ。
それにカップに入ったスープが添えられて、めちゃくちゃモーニングセット。
美味しい。
スープは野菜と玉蜀黍みたいな穀物が入ったスープで、優しい甘みがする。
身体にしみわたる。
お腹も一杯になった私は食器を下げて、ギルドへ向かう。
朝の町には冒険者や、店で働く人々が忙しなく歩いている。
ギルドも人が溢れて活気づいていた。
まずは、冒険者が集まる掲示板に行き、薬草採取の依頼だけもぎとって受付に向かう。
「おはようございます。授業はもう受けられますか?」
「まだ講師をしてるアルトが来ていないの。修練場で待っててくれる?」
「はあい」
口頭で案内をされて、扉の先の廊下を進んで外へと出る。
建物でぐるりと囲まれた広い中庭のようなところに、色々な武器と木人形が並べられていた。
剣の素振りをしている少年もいる。
あ、懐かしい。
そういえば、私剣道やってたっけ。
適当な重さの剣を手に取ると、私も素振りを始めた。
下に振ったときに手を絞る事で、勢いを殺す。
剣道はあくまで、剣道であって実践向きじゃないのかな?
稽古のとき下まで力任せに振り抜く馬鹿も居たけど、そういうのって偶に受ける剣を下げると床打つんだよね。
そう考えると大きな隙になって、首や頭がガラ空きになるから、やっぱり大事なのかも?
つらつらと考えていると、何だか集まった人達に注目されていた。
「へ?」
私は後や横をきょろきょろ見るが、私しか居ない。
「何か、変でした?」
「いや、綺麗な剣筋だと思ってな。何処かで習っていたのか?」
全身金属鎧の騎士みたいな青年が真面目な顔で言う。
私はこっくり頷いた。
遠い世界の話だし、もうぼんやりとしか覚えていないけど。
「ふむ、じゃあ打ち合いをしてみるか?」
「えっ……あ、はい。じゃあお願いします」
よくわからんけども、機会があったら試したほうがいいだろう。
私は剣を構えた。
てゆーか、そっちは全身金属鎧ってずるくない?
私部分的に皮鎧で、あと布なんですけど??
「大丈夫だ。力いっぱい打ったりはせんよ」
いやもう。
身体のでかい男が全身金属鎧で固めて、剣を構えているんですよ?
少しでも力いれたら、折れちゃいそうじゃん。
見ただけでお腹一杯だよ。
「来ないのなら、こちらから行く」
ひえっ。
乙女、乙女に何すんの!
片手で振られた剣を、両手で持っている剣で弾く。
力いっぱいじゃないのは本当だろうけど、重い。
フッと男が笑った気がした。
あー余裕ぶっこいてる。
そりゃそうですよね。
腹立つわー。
もう一撃、同じ攻撃が来た。
私は同じく弾き、今度は後ろに引かずに踏み込んで、弾いた反動で手元に剣を引き付けて首筋を狙う。
その瞬間、お腹に衝撃が走った。
「かはっ」
同時に、私は後ろに吹っ飛んだ。
呼吸も、出来なくなって、蹴られたのだと分かった。
やばい。
朝食が出ちゃう。
だめだめ、勿体無い。
私はお腹を押さえて、ぐっと堪えた。
瞼の裏に、リサさんの優しい微笑が浮かぶ。
リサさん……。
貴方の手料理は吐きません……!
190
お気に入りに追加
294
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる