397 / 592
第十一章:血染めの鬼姫と妖狐と
後日談:ウィッチスレイヤー
しおりを挟む ありえないほどの偶然が重なることがある。
その確率は計算上ではおよそ30兆分の1以下とされ、隕石が地球に落下して人類が滅亡するよりも低い確率とされているのである。
そんな不思議な偶然の一致を二つほど紹介しよう。
バミューダのある路上で、ある日バイクとタクシーが衝突事故を起こした。
バイクの方は兄弟で2人乗りをしており、タクシーにはお客が1人乗っていたので、この事故に巻きこまれた者は合計で4人。しかし幸いなことに4人は怪我こそすれ、死者は出ずに済んだ。
そしてその事故から1年の月日が経過した。
それぞれ傷も癒(い)え、別々の日々を送っていた。あの時のバイクの兄弟はまた同じように2人乗りで走りを楽しんでいた。タクシーの運転手ももちろん相変わらず仕事を続けていた。
ある日、その運転手がタクシーを走らせていると、道の先の方で手が挙がった。
タクシーに乗ろうとしているお客である。すぐに車を寄せてお客を拾おうとしたが、運の悪いことに、自分より先にもう一台タクシーが走っており、そっちの方がお客を乗せて走り去ってしまった。
「ちっ」と舌打ちして、再び車を走らせる。しばらく走っていると、また路上で手が挙がった。今度は自分の前にタクシーはいない。路肩に車を寄せると、今度こそお客が乗ってきた。
「どちらまで行きましょうか?」と聞いたが返事がない。
不審に思った運転手は「あのー、どちらまででしょうか?」と、今度は振り向いて聞いてみた。
後ろの座席には驚いたような顔をした1人の男が座っていた。
「あっ!お客さんは・・!」
1年前の事故の時のお客だった。全く偶然にもあの時のお客を拾ってしまったのだ。
双方ににがい思い出がよぎる。なんとなく嫌な感じがしながらも、ようやく行き先を告げられてタクシーは発進した。業務的な会話を一言二言したが、後は沈黙になってしまった。
「あの場所に行くとなると、どうしてもあの道を通っていくことになるな・・。」
運転手も心の中で厭だなと思ったが、あえて言葉には出さなかった。喜ばしくない再会をして、嫌な思い出のある道を再び通らなければならない。
あの日あの時と同じ風景が車の外を流れていく。まもなく事故現場にさしかかった。と、その途端、後ろのお客が「あっ!」と声をあげた。
向こうの方から、あの時のバイクにあの時の兄弟が乗って、まっすぐこっちへ突っ込んでくるのだ。
「そんなバカな!」
4人が4人ともそう思ったかも知れない。だがあっと思う間もなく、バイクとタクシーは再び衝突してしまった。まるで吸いよせられるかのように。
そして同じ状況、同じ人間による全く同じ事故が再び起こってしまった。ただ一つ違ったことは、今回の事故でバイクの兄弟の方は不幸にも死亡してしまったことであった。
A君が小5のとき、通学路の交差点を渡っていたとき、右折車が横断中のA君めがけて突っ込んできた。
まるで催眠術にかかったように体が動かず、突っ込んでくる車を呆然と見ていたら、(あらぬ方向を見ているドライバーの顔まではっきり見えた) 後ろから突き飛ばされ、危機一髪A君は難を逃れた。
が、A君を突き飛ばしてくれた大学生は、車に跳ね飛ばされたらしい。
泣きながらA君は近所の家に駆け込んで、救急車と警察を呼んでもらい、その後警察の事故処理係に、出来る限り状況説明をした。
後日、家に警察から電話があり、大学生の入院先を教えられ、A君は母親と見舞いに行って御礼を言った。
幸い大学生は元気そうですぐに退院できそうだった。
中学1年のとき、父親の仕事の都合で同県内の市外(というか、山の中)へと引っ越したA君は、そこで先生となっていた、件の大学生と再会した。
お互いに驚き再会を喜びつつ、3年間面倒を見てもらって、(なんせ田舎の分校なので、先生はずっと同じなのだ)A君は中学を卒業し、高校進学と供に市内に戻った。
地元の教育大学に進学したA君は、教育実習先の小学校へ向かう途中の交差点で、自分の前を渡っている小学生の女の子に、右折車が今まさに突っ込もうとしているのをみた。
次に、ドライバーが携帯電話で喋りながら運転しているのが見えた。
スローモーションみたいに流れる情景に、ウソだろ・・・と思いつつ、とっさに女の子を突き飛ばしたら、案の定自分が跳ね飛ばされた。
コンクリートの地面に横たわって、泣いてる女の子を見ながら、もしかしたらあのとき先生もこんな景色を見たのかな・・・とか考えつつA君は意識を失った。
翌日入院先に、A君が助けた女の子の親が見舞いにやって来た。
すると驚いたことに彼女の親は中学時代の恩師であり、俺の命の恩人そのヒトだった。
「これで借りは返せましたね」とA君が言うと、「バカ・・・最初から、借りも貸しも無いよ」と先生は言った。
ベットの周りのカーテンを閉めて、A君と先生は無言で抱き合って泣いたという。
その確率は計算上ではおよそ30兆分の1以下とされ、隕石が地球に落下して人類が滅亡するよりも低い確率とされているのである。
そんな不思議な偶然の一致を二つほど紹介しよう。
バミューダのある路上で、ある日バイクとタクシーが衝突事故を起こした。
バイクの方は兄弟で2人乗りをしており、タクシーにはお客が1人乗っていたので、この事故に巻きこまれた者は合計で4人。しかし幸いなことに4人は怪我こそすれ、死者は出ずに済んだ。
そしてその事故から1年の月日が経過した。
それぞれ傷も癒(い)え、別々の日々を送っていた。あの時のバイクの兄弟はまた同じように2人乗りで走りを楽しんでいた。タクシーの運転手ももちろん相変わらず仕事を続けていた。
ある日、その運転手がタクシーを走らせていると、道の先の方で手が挙がった。
タクシーに乗ろうとしているお客である。すぐに車を寄せてお客を拾おうとしたが、運の悪いことに、自分より先にもう一台タクシーが走っており、そっちの方がお客を乗せて走り去ってしまった。
「ちっ」と舌打ちして、再び車を走らせる。しばらく走っていると、また路上で手が挙がった。今度は自分の前にタクシーはいない。路肩に車を寄せると、今度こそお客が乗ってきた。
「どちらまで行きましょうか?」と聞いたが返事がない。
不審に思った運転手は「あのー、どちらまででしょうか?」と、今度は振り向いて聞いてみた。
後ろの座席には驚いたような顔をした1人の男が座っていた。
「あっ!お客さんは・・!」
1年前の事故の時のお客だった。全く偶然にもあの時のお客を拾ってしまったのだ。
双方ににがい思い出がよぎる。なんとなく嫌な感じがしながらも、ようやく行き先を告げられてタクシーは発進した。業務的な会話を一言二言したが、後は沈黙になってしまった。
「あの場所に行くとなると、どうしてもあの道を通っていくことになるな・・。」
運転手も心の中で厭だなと思ったが、あえて言葉には出さなかった。喜ばしくない再会をして、嫌な思い出のある道を再び通らなければならない。
あの日あの時と同じ風景が車の外を流れていく。まもなく事故現場にさしかかった。と、その途端、後ろのお客が「あっ!」と声をあげた。
向こうの方から、あの時のバイクにあの時の兄弟が乗って、まっすぐこっちへ突っ込んでくるのだ。
「そんなバカな!」
4人が4人ともそう思ったかも知れない。だがあっと思う間もなく、バイクとタクシーは再び衝突してしまった。まるで吸いよせられるかのように。
そして同じ状況、同じ人間による全く同じ事故が再び起こってしまった。ただ一つ違ったことは、今回の事故でバイクの兄弟の方は不幸にも死亡してしまったことであった。
A君が小5のとき、通学路の交差点を渡っていたとき、右折車が横断中のA君めがけて突っ込んできた。
まるで催眠術にかかったように体が動かず、突っ込んでくる車を呆然と見ていたら、(あらぬ方向を見ているドライバーの顔まではっきり見えた) 後ろから突き飛ばされ、危機一髪A君は難を逃れた。
が、A君を突き飛ばしてくれた大学生は、車に跳ね飛ばされたらしい。
泣きながらA君は近所の家に駆け込んで、救急車と警察を呼んでもらい、その後警察の事故処理係に、出来る限り状況説明をした。
後日、家に警察から電話があり、大学生の入院先を教えられ、A君は母親と見舞いに行って御礼を言った。
幸い大学生は元気そうですぐに退院できそうだった。
中学1年のとき、父親の仕事の都合で同県内の市外(というか、山の中)へと引っ越したA君は、そこで先生となっていた、件の大学生と再会した。
お互いに驚き再会を喜びつつ、3年間面倒を見てもらって、(なんせ田舎の分校なので、先生はずっと同じなのだ)A君は中学を卒業し、高校進学と供に市内に戻った。
地元の教育大学に進学したA君は、教育実習先の小学校へ向かう途中の交差点で、自分の前を渡っている小学生の女の子に、右折車が今まさに突っ込もうとしているのをみた。
次に、ドライバーが携帯電話で喋りながら運転しているのが見えた。
スローモーションみたいに流れる情景に、ウソだろ・・・と思いつつ、とっさに女の子を突き飛ばしたら、案の定自分が跳ね飛ばされた。
コンクリートの地面に横たわって、泣いてる女の子を見ながら、もしかしたらあのとき先生もこんな景色を見たのかな・・・とか考えつつA君は意識を失った。
翌日入院先に、A君が助けた女の子の親が見舞いにやって来た。
すると驚いたことに彼女の親は中学時代の恩師であり、俺の命の恩人そのヒトだった。
「これで借りは返せましたね」とA君が言うと、「バカ・・・最初から、借りも貸しも無いよ」と先生は言った。
ベットの周りのカーテンを閉めて、A君と先生は無言で抱き合って泣いたという。
0
お気に入りに追加
402
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる