385 / 592
第十一章:血染めの鬼姫と妖狐と
第百四十八話:ねえ、一つ聞いてよ
しおりを挟む
魔王との決着から2週間、グレーズ王国では本日新国王の戴冠式が行われる。
魔王戦で戦死したピーテル前国王と王女オリヴィアの葬儀は速やかに行われた。もちろん、ディエゴを含めた騎士団と魔法師団の面々の葬儀も大々的に。
今日はそこから前に進むための、明るい式典だ。
王城の見える広場には、多くの人が集まっていた。
――。
あの後目を覚ましたオリヴィアは、皆の予想通りに深々と謝罪をした。
しかし、オリヴィアが居れば誰も死ななかった等と言える訳もない。
誰しもが死を覚悟して魔王戦に赴いていたことが、まず大前提。
そして、結局のところオリヴィアが間に合ったおかげで勝てたのだ。
ライラの件は残念にしろ、彼女もまた自らを顧みずに立ち向かった。
結論はむしろ、最初から決まっていた。
オリヴィア程に限界を超えて魔王討伐に向けた鍛錬をしていた者は居ない。誰しもがそれを知っていた。
身も心も削りながら1位の座に有り続けた彼女は、魔王を倒す分の力しか最初から残していなかった。
誰しもが、それを知っていた。
「オリヴィア、お前のおかげでなんとか魔王を倒せた。礼を言う」
アリエルのその言葉でこれ以上の話は野暮だという結論に至ると、今後について語り合った。
……。
そうして結界外の周囲から見れば、魔王を倒され怒り狂った眷属であるたまきとの死闘の末、たまきは無事に討伐され、オリヴィアは懸命な治療叶わず戦死という結果となったのだ。
エレナによって作り出された完全な幻術が死体を作り出し、オリヴィアの侍女だけが王女が生きている事実を知りアーツに報告した。
彼らが緊急の報告で聞いた予定通りの死とはつまり、彼女が無事生存を続けているということ。
それを聞いたアーツと王妃シルヴィアは、侍女と共につい生存を喜び口元を緩めてしまったという訳である。
――。
「これでアーツも王様かー。頑張って欲しいものだね」
「そうですわね。でも、アーツなら大丈夫ですわ。わたくしも最大限の補助をしますもの」
新王の戴冠式を前にして、エリーはオリーブと名を変えたオリヴィアと共に会場で待っている。
髪をルークの魔法で金色に変えたオリヴィアは、さながらエリーの超美人の姉の様な風貌となっている。それをエリーの力で目立たなくすれば、誰も彼女が死んだ王女だとは気づかない。
エリー自身も目立たない様に民衆と同化すれば、新王アーツの誕生を心待ちにしている一冒険者さながらだ。
戴冠式が始まるまで、まだ時間がある。丁度良いと、エリーはレインの走馬灯について語りだす。
「そうそう。忙しくて話せなかったけど、ちょっと師匠の話して良い?」
「う、ちょっと怖いですけれど……」
「怖がることなんかないよ。師匠はオリ姉を凄く評価してた。ちょっと無理をさせたみたいだって、むしろ師匠が申し訳なさそうにしてたくらい」
「あの特攻はお師匠様には怒られそうなものだと思いましたけれど、そうなんですの?」
「うん。まあ、私が意識を集中させてたからこそなんだけどね」
「むっ、それは確かにそうですけれど、エリーさんに言われるとむっとしてしまうのはなんででしょう」
「ま、私達はライバルだものね、オリ姉」
「そう言われると……何も言えませんわ」
「ははは。たまちゃんが抑えてくれてたおかげで余り殺さずに済んだんだって、私達が倒してくれたおかげで成長を見れて嬉しかったんだって、師匠はそう言ってたかな」
魔王となったレインは、何処から漏れたのだろうか、誰かの力でバレたのだろうか。今や世界中の人がそれを知っている。世界最強の英雄が一転、世界最悪の犯罪者扱いだ。
聖女を殺したのが元から魔王だったレインだという話すら出ている。
今は名前を出していない為に周囲の人々は訝しげな顔をするだけで済んでいるものの、もしもレインという名前を出せばどうなるか……。
「お師匠様は、本当なら被害者なはずですものね……」
「うん。だから、私だけはそれを忘れない。オリ姉は国のことを考えないといけないけれど、私は――」
「あ、それなんですけれど、わたくしは両立することにしますわ」
言って、オリヴィアは懐から小瓶を取り出す。
「あぁ、オリ姉の秘密兵器ね。うん、良いんじゃないかな」
それを見て、面白そうに笑う。
魔王との決着の日以来、オリヴィアの体には少しばかりの変化が起きていた。
それはレインに腹部を貫かれたことが理由だろうか、たまきの治療が原因だろうか、理由は分からないものの、それがオリヴィアにとっては天啓の様に感じたのかもしれない。
「わたくしはまた今までの様に、ブロンセンと王都を往復する生活をすることになりますわね」
「おぉ、オリ姉がブロンセンに居るなら安心だ。ねえ、一つ聞いてよ」
あのね、とエリーが話し出す。
ちょうどそのタイミングで、戴冠式が始まる。
大音量で鳴り響く音楽と民衆の大歓声の中、なんとなく分かっていたその話に、オリヴィアは一言。
「それが良いですわね」
そう返すのだった。
全く、自分の父親ながらピーテル前王は少しだけ余計なことをしたと、そう思う。
いや、彼女の性格からして、大切なことは決まりきっているのだ。
きっと王が何をしていようが、この結末に変化は無かったのだろう。
だからこそ、オリヴィアは続けて言う。
「ただし、わたくしが勝ったら話は別ですわ。戴冠式の後、決闘しましょう」
魔王戦で戦死したピーテル前国王と王女オリヴィアの葬儀は速やかに行われた。もちろん、ディエゴを含めた騎士団と魔法師団の面々の葬儀も大々的に。
今日はそこから前に進むための、明るい式典だ。
王城の見える広場には、多くの人が集まっていた。
――。
あの後目を覚ましたオリヴィアは、皆の予想通りに深々と謝罪をした。
しかし、オリヴィアが居れば誰も死ななかった等と言える訳もない。
誰しもが死を覚悟して魔王戦に赴いていたことが、まず大前提。
そして、結局のところオリヴィアが間に合ったおかげで勝てたのだ。
ライラの件は残念にしろ、彼女もまた自らを顧みずに立ち向かった。
結論はむしろ、最初から決まっていた。
オリヴィア程に限界を超えて魔王討伐に向けた鍛錬をしていた者は居ない。誰しもがそれを知っていた。
身も心も削りながら1位の座に有り続けた彼女は、魔王を倒す分の力しか最初から残していなかった。
誰しもが、それを知っていた。
「オリヴィア、お前のおかげでなんとか魔王を倒せた。礼を言う」
アリエルのその言葉でこれ以上の話は野暮だという結論に至ると、今後について語り合った。
……。
そうして結界外の周囲から見れば、魔王を倒され怒り狂った眷属であるたまきとの死闘の末、たまきは無事に討伐され、オリヴィアは懸命な治療叶わず戦死という結果となったのだ。
エレナによって作り出された完全な幻術が死体を作り出し、オリヴィアの侍女だけが王女が生きている事実を知りアーツに報告した。
彼らが緊急の報告で聞いた予定通りの死とはつまり、彼女が無事生存を続けているということ。
それを聞いたアーツと王妃シルヴィアは、侍女と共につい生存を喜び口元を緩めてしまったという訳である。
――。
「これでアーツも王様かー。頑張って欲しいものだね」
「そうですわね。でも、アーツなら大丈夫ですわ。わたくしも最大限の補助をしますもの」
新王の戴冠式を前にして、エリーはオリーブと名を変えたオリヴィアと共に会場で待っている。
髪をルークの魔法で金色に変えたオリヴィアは、さながらエリーの超美人の姉の様な風貌となっている。それをエリーの力で目立たなくすれば、誰も彼女が死んだ王女だとは気づかない。
エリー自身も目立たない様に民衆と同化すれば、新王アーツの誕生を心待ちにしている一冒険者さながらだ。
戴冠式が始まるまで、まだ時間がある。丁度良いと、エリーはレインの走馬灯について語りだす。
「そうそう。忙しくて話せなかったけど、ちょっと師匠の話して良い?」
「う、ちょっと怖いですけれど……」
「怖がることなんかないよ。師匠はオリ姉を凄く評価してた。ちょっと無理をさせたみたいだって、むしろ師匠が申し訳なさそうにしてたくらい」
「あの特攻はお師匠様には怒られそうなものだと思いましたけれど、そうなんですの?」
「うん。まあ、私が意識を集中させてたからこそなんだけどね」
「むっ、それは確かにそうですけれど、エリーさんに言われるとむっとしてしまうのはなんででしょう」
「ま、私達はライバルだものね、オリ姉」
「そう言われると……何も言えませんわ」
「ははは。たまちゃんが抑えてくれてたおかげで余り殺さずに済んだんだって、私達が倒してくれたおかげで成長を見れて嬉しかったんだって、師匠はそう言ってたかな」
魔王となったレインは、何処から漏れたのだろうか、誰かの力でバレたのだろうか。今や世界中の人がそれを知っている。世界最強の英雄が一転、世界最悪の犯罪者扱いだ。
聖女を殺したのが元から魔王だったレインだという話すら出ている。
今は名前を出していない為に周囲の人々は訝しげな顔をするだけで済んでいるものの、もしもレインという名前を出せばどうなるか……。
「お師匠様は、本当なら被害者なはずですものね……」
「うん。だから、私だけはそれを忘れない。オリ姉は国のことを考えないといけないけれど、私は――」
「あ、それなんですけれど、わたくしは両立することにしますわ」
言って、オリヴィアは懐から小瓶を取り出す。
「あぁ、オリ姉の秘密兵器ね。うん、良いんじゃないかな」
それを見て、面白そうに笑う。
魔王との決着の日以来、オリヴィアの体には少しばかりの変化が起きていた。
それはレインに腹部を貫かれたことが理由だろうか、たまきの治療が原因だろうか、理由は分からないものの、それがオリヴィアにとっては天啓の様に感じたのかもしれない。
「わたくしはまた今までの様に、ブロンセンと王都を往復する生活をすることになりますわね」
「おぉ、オリ姉がブロンセンに居るなら安心だ。ねえ、一つ聞いてよ」
あのね、とエリーが話し出す。
ちょうどそのタイミングで、戴冠式が始まる。
大音量で鳴り響く音楽と民衆の大歓声の中、なんとなく分かっていたその話に、オリヴィアは一言。
「それが良いですわね」
そう返すのだった。
全く、自分の父親ながらピーテル前王は少しだけ余計なことをしたと、そう思う。
いや、彼女の性格からして、大切なことは決まりきっているのだ。
きっと王が何をしていようが、この結末に変化は無かったのだろう。
だからこそ、オリヴィアは続けて言う。
「ただし、わたくしが勝ったら話は別ですわ。戴冠式の後、決闘しましょう」
0
お気に入りに追加
402
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる