283 / 592
第四章:最弱の英雄と戦士達
第四十六話:ヴィクトリアの再来、その全力を見せてやる
しおりを挟む
この世界にドラゴンと名が付く魔物はいくつもいる。
代表的なドラゴンは単純に最もメジャーで強敵として知られているが、それ以外にもこの大陸固有のグランドドラゴンやリヴァイアサンの小型亜種がシードラゴンと呼ばれていたり、手足の無いドラゴンスネーク、ワイバーンの亜種のフライングドラゴン等がいる。
そしてそのどれもがドラゴンには及ばないものの凶悪な魔物だ。基本的には群れないのが特徴だ。
しかし今回出現が予測されている魔物がそれらの群れ。
それらは場合によっては複数集まればドラゴンにも勝ると言われている。
その為に、今回集められたのがこの面々だ。
「クーリア姉、全力で行くよ」
エリーは背負ったいくつもの武器の中から大剣を選択して構える。
「ああ、ヴィクトリアの再来、その全力を見せてやる」
随分と気持ちを持ち直したクーリアも、そう言って背中に背負った巨大な両手剣を抜く。
クーリアはこの武器によって多くの魔物を一撃で葬ってきた。その代表がドラゴンだ。いくら成長しなくなったとは言え、オリヴィアのカバーさえあれば未だにそんな実力を持っている。
何より、エリーの大剣の師とも呼べる存在が彼女だろう。
一人で戦うとなると厳しいだろうが、それでもレイン達の鍛錬によってそこらの騎士や魔法使いとは比べるまでもない程の力。
そもそも、もしもレインとサニィが存在しなければ世界最強だったはずなのが彼女だ。
覚悟を決めて構えるその姿には、獣の様な獰猛性が満ちていた。
「よし、勝負よ。いっぱい倒したほうが勝ち!」
「望むところだ。大剣だけならお前にもまだ負けられん」
ニィっと顔を向け合って、笑い合う。
遠くでは別行動をするオリヴィアもそれを見て微笑む。
今回戦うのは三人だけ。
この三人が全力を出せばマルスは足でまといか巻き添えを喰らうだけだ。
今まで何千何万と物理的な死を経験してきているマルスをなるべく休ませようという皆の配慮もあるが、どうしても戦いたいとのことで実際に一度戦闘に参加したところ一瞬でミンチになった経験がある。
それ以来、大規模な戦闘では戦いを控えている。
「毎度ながら心苦しいが、クーリア、頑張ってきてくれ」
「ああ、二人の時にまた戦わせてやる」
「気をつけて」
「ああ」
そんなイチャつきを二人の弟子は微笑ましく見守りながら、戦闘に赴いたのだった。
オリヴィアの担当は最前線で、もしもドラゴンが出た場合の対応をしつつ強敵を中心に戦う。
その後ろでエリーとクーリアが大剣で討伐数を競う形だ。
この面々は皆、対複数の戦闘が得意だ。
ルークもマナが持っている間は得意だが、敵が余りにも多いとマナが持たない為に抑えて戦わなければならない。以前の戦いでは霊峰マナスルで戦っていたからこそめちゃくちゃな戦いが出来たというわけだ。
ディエゴは攻撃力が足りない。騎士団と共に戦えばそれなりにいけるはずだが、そもそも現状でグレーズ王国を離れるわけには行かない。
アルカナウィンドのライラもそうだ。女王アリエル・エリーゼを守らなければならない為に個人で動くことが出来ない。そして彼女は基本的には一体一に特化している。複数を倒すのもわけはないが、その殲滅速度で言えばこの3人に劣る。
そしてウアカリのナディアとイリスも一先ずはウアカリを守っている。
あとは鬼神レインの友人という英雄候補がいるのだが、連絡が取れない。
そういうわけで、少ない手数で相手を倒せるクーリアと、どんな状況でも戦えるように鍛えられた鬼神の弟子二人に白羽の矢が立つわけだ。
さて、予言によれば今回守るべき都市は三つ。
それほど大きくない街が出現した魔物の進行ルートにあり、それがアルカナウィンドの王都に向かっていく。そんな予言だ。
そこで、最初に襲われるらしい都市で四人は落合、あとはエリーの直感に従って攻め込む作戦。
そうなると、一枚の壁の様に待ち構えるよりも二段階に待ち構えた方が抜けられる可能性も低くなるというわけだ。
そして念の為三番目の壁としてマルスが都市のすぐ側で待機して、都市の護衛団と守りを固めている。
そんな万全の状態でエリーの直感が告げる。
「ドラゴンはまだ分からないけど、断続的に出ると思う。いきなり体力使い果たさないでね」
「了解」
体力バカのオリヴィアは恐らく大丈夫だろうが、筋肉質で190cm程もの身長があるクーリアはそれほどスタミナが多いわけではない。
注意をしたところで、第一陣が現れた。一瞬の黒いもやと共に、魔物は現れる。
魔物は悪性のマナが物質化したもの。
その為少し前までは居なかった場所に現れることがあり、出現の瞬間を見た者は殆どいない。
今では『聖女の魔法書』によってその事実が認知されているが、以前はそのもやを何か何かと見に行って魔物に殺されてしまう者が多発していたらしい。
「……」「……」
オリヴィアが、暴れている。
現れるなんとかドラゴンを、片っ端から倒しまくっている。
強力なはずの大量の魔物を、片っ端から倒しまくっている。
「なあエリー、アタシ達いるのか?」
「まあ、まだまだ湧くから」
「そうか」
「もしも空気読まずに全部倒しちゃったらしばこうね」
「そうだな」
「うん」
無双王女を眺めながら、二人はしばし佇むことにした。
代表的なドラゴンは単純に最もメジャーで強敵として知られているが、それ以外にもこの大陸固有のグランドドラゴンやリヴァイアサンの小型亜種がシードラゴンと呼ばれていたり、手足の無いドラゴンスネーク、ワイバーンの亜種のフライングドラゴン等がいる。
そしてそのどれもがドラゴンには及ばないものの凶悪な魔物だ。基本的には群れないのが特徴だ。
しかし今回出現が予測されている魔物がそれらの群れ。
それらは場合によっては複数集まればドラゴンにも勝ると言われている。
その為に、今回集められたのがこの面々だ。
「クーリア姉、全力で行くよ」
エリーは背負ったいくつもの武器の中から大剣を選択して構える。
「ああ、ヴィクトリアの再来、その全力を見せてやる」
随分と気持ちを持ち直したクーリアも、そう言って背中に背負った巨大な両手剣を抜く。
クーリアはこの武器によって多くの魔物を一撃で葬ってきた。その代表がドラゴンだ。いくら成長しなくなったとは言え、オリヴィアのカバーさえあれば未だにそんな実力を持っている。
何より、エリーの大剣の師とも呼べる存在が彼女だろう。
一人で戦うとなると厳しいだろうが、それでもレイン達の鍛錬によってそこらの騎士や魔法使いとは比べるまでもない程の力。
そもそも、もしもレインとサニィが存在しなければ世界最強だったはずなのが彼女だ。
覚悟を決めて構えるその姿には、獣の様な獰猛性が満ちていた。
「よし、勝負よ。いっぱい倒したほうが勝ち!」
「望むところだ。大剣だけならお前にもまだ負けられん」
ニィっと顔を向け合って、笑い合う。
遠くでは別行動をするオリヴィアもそれを見て微笑む。
今回戦うのは三人だけ。
この三人が全力を出せばマルスは足でまといか巻き添えを喰らうだけだ。
今まで何千何万と物理的な死を経験してきているマルスをなるべく休ませようという皆の配慮もあるが、どうしても戦いたいとのことで実際に一度戦闘に参加したところ一瞬でミンチになった経験がある。
それ以来、大規模な戦闘では戦いを控えている。
「毎度ながら心苦しいが、クーリア、頑張ってきてくれ」
「ああ、二人の時にまた戦わせてやる」
「気をつけて」
「ああ」
そんなイチャつきを二人の弟子は微笑ましく見守りながら、戦闘に赴いたのだった。
オリヴィアの担当は最前線で、もしもドラゴンが出た場合の対応をしつつ強敵を中心に戦う。
その後ろでエリーとクーリアが大剣で討伐数を競う形だ。
この面々は皆、対複数の戦闘が得意だ。
ルークもマナが持っている間は得意だが、敵が余りにも多いとマナが持たない為に抑えて戦わなければならない。以前の戦いでは霊峰マナスルで戦っていたからこそめちゃくちゃな戦いが出来たというわけだ。
ディエゴは攻撃力が足りない。騎士団と共に戦えばそれなりにいけるはずだが、そもそも現状でグレーズ王国を離れるわけには行かない。
アルカナウィンドのライラもそうだ。女王アリエル・エリーゼを守らなければならない為に個人で動くことが出来ない。そして彼女は基本的には一体一に特化している。複数を倒すのもわけはないが、その殲滅速度で言えばこの3人に劣る。
そしてウアカリのナディアとイリスも一先ずはウアカリを守っている。
あとは鬼神レインの友人という英雄候補がいるのだが、連絡が取れない。
そういうわけで、少ない手数で相手を倒せるクーリアと、どんな状況でも戦えるように鍛えられた鬼神の弟子二人に白羽の矢が立つわけだ。
さて、予言によれば今回守るべき都市は三つ。
それほど大きくない街が出現した魔物の進行ルートにあり、それがアルカナウィンドの王都に向かっていく。そんな予言だ。
そこで、最初に襲われるらしい都市で四人は落合、あとはエリーの直感に従って攻め込む作戦。
そうなると、一枚の壁の様に待ち構えるよりも二段階に待ち構えた方が抜けられる可能性も低くなるというわけだ。
そして念の為三番目の壁としてマルスが都市のすぐ側で待機して、都市の護衛団と守りを固めている。
そんな万全の状態でエリーの直感が告げる。
「ドラゴンはまだ分からないけど、断続的に出ると思う。いきなり体力使い果たさないでね」
「了解」
体力バカのオリヴィアは恐らく大丈夫だろうが、筋肉質で190cm程もの身長があるクーリアはそれほどスタミナが多いわけではない。
注意をしたところで、第一陣が現れた。一瞬の黒いもやと共に、魔物は現れる。
魔物は悪性のマナが物質化したもの。
その為少し前までは居なかった場所に現れることがあり、出現の瞬間を見た者は殆どいない。
今では『聖女の魔法書』によってその事実が認知されているが、以前はそのもやを何か何かと見に行って魔物に殺されてしまう者が多発していたらしい。
「……」「……」
オリヴィアが、暴れている。
現れるなんとかドラゴンを、片っ端から倒しまくっている。
強力なはずの大量の魔物を、片っ端から倒しまくっている。
「なあエリー、アタシ達いるのか?」
「まあ、まだまだ湧くから」
「そうか」
「もしも空気読まずに全部倒しちゃったらしばこうね」
「そうだな」
「うん」
無双王女を眺めながら、二人はしばし佇むことにした。
0
お気に入りに追加
402
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる