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第二部第一章:鬼神を継ぐ二人
第五話:まあ、負けることはないにせよ、筋肉痛がね
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大賢者アレス、そう呼ばれる人物が纏めた最強の英雄【鬼神レイン】の真実が発表された。
今まで推測されてきたその人物像は、聖女の守護神。
聖女のみを守る最強の守護者であって、ドラゴンをあしらう力を持った魔人の様なもの。その正体は聖女の呼び出した守護神、召喚獣、鬼神、異世界人、宇宙人、調教された魔王。ともかく、聖女の側で彼女を守ることのみが目的の正体不明の、しかしドラゴンよりも上位の化け物。
そんな生き物だと推測されてきた。
だからこそ、聖女サニィがこの世界を去ったのと同時に何処かへと消え去っていった。
それを制御できるのはサニィだけなので消えてくれたこと自体は有難い。
鬼神レインは、そんな存在だった。
しかしそれは全くもって間違っている。
ソレは紛れもなく人。
狛の村と呼ばれる魔物殺しの村に生まれた唯一の勇者で、聖女を聖女にまで成長させたのは実際のところ、この男の実績である。
男は存命中から世界中の強者とコンタクトを取り、次に生まれる魔王に対しての対策を講じ続けてきた。
それは裏のことではあるが、聖女が発展させた魔法を凌駕する功績を、実は他にも残している。
もちろん、単独での魔王殺し。それも二回。
ソレは、弟子を二人取っていた。
第一の弟子はエリーと呼ばれる田舎の農村出身の少女。
ある特殊な能力を持った勇敢な少女で、あらゆる武器の扱いに長けた低身長の、不遜な少女。
第二の弟子は、グレーズ王国王女オリヴィア・S・グレージア。
12年前、ドラゴンの襲撃にショックを受け引きこもってしまったとされる絶世の美女。
しかし実はレインに弟子入りしており、クレーズ王国騎士団長、聖女と鬼神を除けば最強、人外と言われるディエゴ・ルーデンスを超える最高戦力。王子が生まれ、無事に成長したことによって、前線に立つことを許された戦姫。
魔王を除けば、世界で唯一鬼神レインから一本を取った最強の美女。
そんな彼女は、エリーと呼ばれる少女を一番弟子だと認めている。
それが意味することは、つまり、きっと彼女達によって世界平和は保たれるだろう。
魔王など、二人の少女によってきっちりと倒されるだろう。
そんな希望だった。
現金なもので、ついこの間までは勇者は最近情けないだとか、魔法使いも勇者と呼べといった言葉は二人のアイドル、偶像の出現によって瞬く間に大人しくなっていった。
二人の強さは魔法使いの街、グレーズ王国のサウザンソーサリスを中心に、広がっていったからだ。
勇者だとか魔法使いだとかいった言葉よりも、今は魔王に対する対抗策が重要だ。
二人でもきっと倒せるが、女の子だけに任せるのはなんとも。
単純に二人を応援したい。可愛い。
そんな風に置き換わる世間の様子を見ていると、なんとも言えない気持ちになるものの、エリーとオリヴィアは異変を感じる火山へと向かって歩いていた。
――。
以前にもここでは強大なファイアエレメンタルのイフリートが活性化していたという事実がある。
大賢者アレス、以前は【不屈のマルス】という名前だった英雄がイフリートの魔王を倒したということから、その可能性も決して低くはない。
魔王は基本的に色で呼ばれる。最初の魔王と言われるドラゴンが緑、イフリートは赤、そして100年前、世界を恐怖に陥れたヴァンパイアロードの魔王は黒。
レインが倒した魔王、デーモンロードは紫、そして、黄。
どういうことか分からないが、世界で誰かがその種の魔王に色をつけると、今後の占いでは全て同種は同じ色で示される。
その為、魔王は色で呼ばれる。
次に生まれる魔王が何か分からない以上は、それがなんの魔王なのかは分からない。占いも100%ではない。まだだと思っていたら実は生まれていた。それで滅んだ国も、過去にはあったという。
だからこそ、二人は最大限に警戒した状態でその火山へと向かった。
もしも魔王が生まれていれば、世界中で警戒している同志達に連絡を取らなければいけない。
一度退却をして、情報収集から始めなければならない。
「イフリートの異常繁殖。これはヤバいわね」
「普通に国が潰れるレベルですわね……」
イフリートは強大な魔物。デーモン程ではないが、1体の強さはオーガで言えば80匹程度だろうか。
それが、見渡す限りにひしめいている。
どこまでも続く炎の絨毯。その奥に、魔王の影はないとエリーは言う。
しかし、通常の勇者はデーモン一体を倒せれば優秀。イフリートの絨毯等、一国が早期に立ち上がったところで解決出来るかどうか。そんなレベルだ。
ただ、ここに居るのは、通常の勇者ではなかった。
最強の英雄の弟子だった。
たった二人しか居ない、ソレの弟子だった。
「ちょっと、覚悟を決めないとね。行くわよ【月光】」
「エリーさんがそんなことを言うと緊張しますわ」
「まあ、負けることはないにせよ、筋肉痛がね」
「……それもまた気持ち良いんですのに」
緊張感があるのかないのか、二人はその炎の絨毯へと突撃する。
――。
3時間後、二人は火山に伏していた。
そこに残ったのは見渡す限りの消し炭と、残る5匹のイフリート。
何やら筋肉の悲鳴に悶えるオリヴィアは既にイフリートを見ず、エリーはそれを見て最早やる気をなくしていた。
もう、終わりだ。
あと少しで全ての決着が着く。
二人はもう、動かない。
そうして倒れ伏した二人を見て勝利を確信し、襲いかかろうとしたイフリート達は悲鳴を上げる。
天から5本の武器が降り注ぎ、残りのイフリート達が全て真っ二つになり、消し炭と化す。
それは、残り少なくなったのを見越して、エリーが天に放っておいた愛剣達だった。
【短剣ヘルメス】【片手剣ベルナール】【長剣レイン】【大剣ヴィクトリア】【戦槍マルス】
そう名付けられた、英雄達の名前を冠する愛剣達。ドラゴンと魔王、そして超希少金属で鍛えられた宝剣達。
それらがエリーの狙い通りに、全てを切り裂いた。
今まで推測されてきたその人物像は、聖女の守護神。
聖女のみを守る最強の守護者であって、ドラゴンをあしらう力を持った魔人の様なもの。その正体は聖女の呼び出した守護神、召喚獣、鬼神、異世界人、宇宙人、調教された魔王。ともかく、聖女の側で彼女を守ることのみが目的の正体不明の、しかしドラゴンよりも上位の化け物。
そんな生き物だと推測されてきた。
だからこそ、聖女サニィがこの世界を去ったのと同時に何処かへと消え去っていった。
それを制御できるのはサニィだけなので消えてくれたこと自体は有難い。
鬼神レインは、そんな存在だった。
しかしそれは全くもって間違っている。
ソレは紛れもなく人。
狛の村と呼ばれる魔物殺しの村に生まれた唯一の勇者で、聖女を聖女にまで成長させたのは実際のところ、この男の実績である。
男は存命中から世界中の強者とコンタクトを取り、次に生まれる魔王に対しての対策を講じ続けてきた。
それは裏のことではあるが、聖女が発展させた魔法を凌駕する功績を、実は他にも残している。
もちろん、単独での魔王殺し。それも二回。
ソレは、弟子を二人取っていた。
第一の弟子はエリーと呼ばれる田舎の農村出身の少女。
ある特殊な能力を持った勇敢な少女で、あらゆる武器の扱いに長けた低身長の、不遜な少女。
第二の弟子は、グレーズ王国王女オリヴィア・S・グレージア。
12年前、ドラゴンの襲撃にショックを受け引きこもってしまったとされる絶世の美女。
しかし実はレインに弟子入りしており、クレーズ王国騎士団長、聖女と鬼神を除けば最強、人外と言われるディエゴ・ルーデンスを超える最高戦力。王子が生まれ、無事に成長したことによって、前線に立つことを許された戦姫。
魔王を除けば、世界で唯一鬼神レインから一本を取った最強の美女。
そんな彼女は、エリーと呼ばれる少女を一番弟子だと認めている。
それが意味することは、つまり、きっと彼女達によって世界平和は保たれるだろう。
魔王など、二人の少女によってきっちりと倒されるだろう。
そんな希望だった。
現金なもので、ついこの間までは勇者は最近情けないだとか、魔法使いも勇者と呼べといった言葉は二人のアイドル、偶像の出現によって瞬く間に大人しくなっていった。
二人の強さは魔法使いの街、グレーズ王国のサウザンソーサリスを中心に、広がっていったからだ。
勇者だとか魔法使いだとかいった言葉よりも、今は魔王に対する対抗策が重要だ。
二人でもきっと倒せるが、女の子だけに任せるのはなんとも。
単純に二人を応援したい。可愛い。
そんな風に置き換わる世間の様子を見ていると、なんとも言えない気持ちになるものの、エリーとオリヴィアは異変を感じる火山へと向かって歩いていた。
――。
以前にもここでは強大なファイアエレメンタルのイフリートが活性化していたという事実がある。
大賢者アレス、以前は【不屈のマルス】という名前だった英雄がイフリートの魔王を倒したということから、その可能性も決して低くはない。
魔王は基本的に色で呼ばれる。最初の魔王と言われるドラゴンが緑、イフリートは赤、そして100年前、世界を恐怖に陥れたヴァンパイアロードの魔王は黒。
レインが倒した魔王、デーモンロードは紫、そして、黄。
どういうことか分からないが、世界で誰かがその種の魔王に色をつけると、今後の占いでは全て同種は同じ色で示される。
その為、魔王は色で呼ばれる。
次に生まれる魔王が何か分からない以上は、それがなんの魔王なのかは分からない。占いも100%ではない。まだだと思っていたら実は生まれていた。それで滅んだ国も、過去にはあったという。
だからこそ、二人は最大限に警戒した状態でその火山へと向かった。
もしも魔王が生まれていれば、世界中で警戒している同志達に連絡を取らなければいけない。
一度退却をして、情報収集から始めなければならない。
「イフリートの異常繁殖。これはヤバいわね」
「普通に国が潰れるレベルですわね……」
イフリートは強大な魔物。デーモン程ではないが、1体の強さはオーガで言えば80匹程度だろうか。
それが、見渡す限りにひしめいている。
どこまでも続く炎の絨毯。その奥に、魔王の影はないとエリーは言う。
しかし、通常の勇者はデーモン一体を倒せれば優秀。イフリートの絨毯等、一国が早期に立ち上がったところで解決出来るかどうか。そんなレベルだ。
ただ、ここに居るのは、通常の勇者ではなかった。
最強の英雄の弟子だった。
たった二人しか居ない、ソレの弟子だった。
「ちょっと、覚悟を決めないとね。行くわよ【月光】」
「エリーさんがそんなことを言うと緊張しますわ」
「まあ、負けることはないにせよ、筋肉痛がね」
「……それもまた気持ち良いんですのに」
緊張感があるのかないのか、二人はその炎の絨毯へと突撃する。
――。
3時間後、二人は火山に伏していた。
そこに残ったのは見渡す限りの消し炭と、残る5匹のイフリート。
何やら筋肉の悲鳴に悶えるオリヴィアは既にイフリートを見ず、エリーはそれを見て最早やる気をなくしていた。
もう、終わりだ。
あと少しで全ての決着が着く。
二人はもう、動かない。
そうして倒れ伏した二人を見て勝利を確信し、襲いかかろうとしたイフリート達は悲鳴を上げる。
天から5本の武器が降り注ぎ、残りのイフリート達が全て真っ二つになり、消し炭と化す。
それは、残り少なくなったのを見越して、エリーが天に放っておいた愛剣達だった。
【短剣ヘルメス】【片手剣ベルナール】【長剣レイン】【大剣ヴィクトリア】【戦槍マルス】
そう名付けられた、英雄達の名前を冠する愛剣達。ドラゴンと魔王、そして超希少金属で鍛えられた宝剣達。
それらがエリーの狙い通りに、全てを切り裂いた。
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