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第十章:未来の為に
第百三十五話:七人の英雄
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アルカナウィンド王都、アストラルヴェイン。
その王城の一室に、六人は揃った。
魔王殺し、今はまだ影の英雄でしかない勇者レイン。
魔法の仕組みを根本から作り変える術を持つ聖女、元魔王にして魔王殺しの事実上の伴侶であるサニィ。
そして、次の魔王討伐作戦の最高戦力になるだろう勇者、王女オリヴィアと、指揮官のアリエル。若き天才魔法使いルークとエレナ。
現在世界で最も強いだろう六人、少なくとも、北の二大陸では確実に。
「エリーさんはいらっしゃいませんでしたの?」
「アリスが呪いに罹っているからな。彼女のほんの一瞬の不安を感じ取ったらしい。仕方ないさ」
「なるほど、それは仕方ない。僕としてはエリー君も気になる所だったが、いつかまた会うこともあるだろう」
オリヴィアの質問に答えるレインに対して、納得を見せたのは第三者、いや、この中では第一人者だろうか。赤の魔王討伐に多大な貢献をした英雄、マルスその人だった。
彼は再びルークとエレナに会いに行ったサニィが、割と近くにいることを感じ取り連れて来たのだった。
本来は巻き込みたくは無かったが、何故こんな所に居るのかと尋ねた所「僕は君達の英雄譚を、歴史の真実を書き記すことに決めたのさ」と答えが返ってきたらしい。そこで今後も魔王が、と口を滑らせてしまったのが運の尽き、是非連れて行ってくれと引かなかったと言うことだ。
「行っておくがマルス、お前は戦闘禁止だ。もう十分に戦っている」
「ははは、君はヴィクトリア君よりも言い方が優しいね。なるべく守るよ。ただし、現地取材はさせてもらうからね!」
「それはオリヴィアやアリエルに聞いてくれ……」
「不屈のマルスをなめちゃいけない。嫌と言っても八年頼み続けてあげるさ。とは言え、僕は君の言った通り一般人になるつもりだから、今はアレスと名乗っているからそう呼んでくれ」
ちょっと面倒くさい奴を連れてきてしまった。レインとサニィは思わずそう思ってしまったが、オリヴィアやアリエルは歴史に名前が残っている本当の英雄を前に、もちろん何も断ることはないと興奮気味だ。
随分と騒がしい会議になってしまったものだな、マルスを除けば平均年齢は15歳に満たない。まあ、仕方ないものだろう。
「さて、魔王ってのはそもそも何かって所から話して行こうか」
皆が落ち着いた所で、レインからそう切り出す。
魔王は基本的には魔物が変化したもの。魔物が更に強大な陰のマナに飲まれ、急激に変異したものが魔王だ。心臓に極小のマナ結晶を宿し、それを抜けば元に戻るが魔物の魔王ならば普通に殺せば良いだけ。
ただし、その強さはグレーズ王国滞在時のレイン並。
「魔王の特性は元の魔物によって違う。デーモンロードは魔法を使わないが、俺並の体術を使った。サニィの魔王は世界中のあらゆる魔法を使った。例えば、ルーク、お前の魔法を使っていた」
「え、それってどういう……」
ルークは驚いた顔をする。サニィが魔王化したことは聞いたけれど、その内容は詳しく聞いていなかった。
「あ、そう言えば、私のこと、まだ詳しく説明してなかったですね……私は……」
サニィは厳密には魔法使いではなく、マナを感じ取り、マナに語りかける勇者。魔王のサニィは、世界中の全てのマナを感じ取り、新たに作られた魔法すら自身の物とすることが出来た。
もちろん、今までのサニィの得意魔法もその威力は魔王クラスに変わって。
「因みに赤の魔王はイフリート。僕は三ヶ月に渡って灼熱の炎に焼かれ続けたんだよ。不死者を三ヶ月焼き続けて、ようやく切れるマナタンク持ちの炎魔法使い、と言えるね」
「我が国に残る文献では、緑の魔王はドラゴン。羽ばたく風はあらゆるものを吹き飛ばし、そのブレスはあらゆるものを焼き尽くした。初代エリーゼは風を纏う能力で弓を放ち、彼の魔王を撃ち落とした、とされている」
「俺の経験上の話だが、魔王は両者とも全く同じ強さだった。もちろん相性によって大きく変わると思うけどな。世界の意思がなんとかと言っていたから、魔王ってのはそもそもそういうものなのかもしれない」
「確かに僕が戦った魔王は、あの時のレイン君の全力程ではなかった様に思う。まあ、正直僕とは差があり過ぎて殆ど分からないけれど」
そんな話の中で、やはり誰しもが重要視する点は、レインの言った2点。
魔王はグレーズ王国滞在時のレインと同等の強さ、そしてどれもが同じ強さだと言うことだ。
「と言うことは、世界の戦力が今のレイン様並にならなければならない、と言うことですわね……」
無理だ、とオリヴィアは思う。
現状では、どれだけの自分が集まっても決してレインに敵う想像が付かない。ましてや、そんな自分が最高戦力になるのだ。
南にどれだけの戦力がいるのかは分からないが、最初の魔王が倒されて450年、南の英雄と言えばヘルメスとヴィクトリア、フィリオナ。彼らは決して最強の英雄とは言われていない。
ならば普通に考えて、北と変わらない筈だ。
自分レベルが一人か二人、集まれば良い方だろう。
そして今のペースで自分が成長したとして、エリーの潜在能力ならば超えられる可能性が高い。3年後はともかく、8年後には。そうなれば、エリーの成長も滞り、魔王討伐は絶望的になる可能性が高い。僅か7歳の戦士を見て、オリヴィアは、それを感じていた。
だから、王女は改めて決意する。
約束の為に。自分の為に。
そして、親愛なる二人の為にも。
「お姉様、お師匠様、はっきり言いますが勝てるイメージが湧きませんわ。だから少し、殺す気で鍛えて頂けませんか?
せめて、エリーさんの目標となれるまでは」
その王城の一室に、六人は揃った。
魔王殺し、今はまだ影の英雄でしかない勇者レイン。
魔法の仕組みを根本から作り変える術を持つ聖女、元魔王にして魔王殺しの事実上の伴侶であるサニィ。
そして、次の魔王討伐作戦の最高戦力になるだろう勇者、王女オリヴィアと、指揮官のアリエル。若き天才魔法使いルークとエレナ。
現在世界で最も強いだろう六人、少なくとも、北の二大陸では確実に。
「エリーさんはいらっしゃいませんでしたの?」
「アリスが呪いに罹っているからな。彼女のほんの一瞬の不安を感じ取ったらしい。仕方ないさ」
「なるほど、それは仕方ない。僕としてはエリー君も気になる所だったが、いつかまた会うこともあるだろう」
オリヴィアの質問に答えるレインに対して、納得を見せたのは第三者、いや、この中では第一人者だろうか。赤の魔王討伐に多大な貢献をした英雄、マルスその人だった。
彼は再びルークとエレナに会いに行ったサニィが、割と近くにいることを感じ取り連れて来たのだった。
本来は巻き込みたくは無かったが、何故こんな所に居るのかと尋ねた所「僕は君達の英雄譚を、歴史の真実を書き記すことに決めたのさ」と答えが返ってきたらしい。そこで今後も魔王が、と口を滑らせてしまったのが運の尽き、是非連れて行ってくれと引かなかったと言うことだ。
「行っておくがマルス、お前は戦闘禁止だ。もう十分に戦っている」
「ははは、君はヴィクトリア君よりも言い方が優しいね。なるべく守るよ。ただし、現地取材はさせてもらうからね!」
「それはオリヴィアやアリエルに聞いてくれ……」
「不屈のマルスをなめちゃいけない。嫌と言っても八年頼み続けてあげるさ。とは言え、僕は君の言った通り一般人になるつもりだから、今はアレスと名乗っているからそう呼んでくれ」
ちょっと面倒くさい奴を連れてきてしまった。レインとサニィは思わずそう思ってしまったが、オリヴィアやアリエルは歴史に名前が残っている本当の英雄を前に、もちろん何も断ることはないと興奮気味だ。
随分と騒がしい会議になってしまったものだな、マルスを除けば平均年齢は15歳に満たない。まあ、仕方ないものだろう。
「さて、魔王ってのはそもそも何かって所から話して行こうか」
皆が落ち着いた所で、レインからそう切り出す。
魔王は基本的には魔物が変化したもの。魔物が更に強大な陰のマナに飲まれ、急激に変異したものが魔王だ。心臓に極小のマナ結晶を宿し、それを抜けば元に戻るが魔物の魔王ならば普通に殺せば良いだけ。
ただし、その強さはグレーズ王国滞在時のレイン並。
「魔王の特性は元の魔物によって違う。デーモンロードは魔法を使わないが、俺並の体術を使った。サニィの魔王は世界中のあらゆる魔法を使った。例えば、ルーク、お前の魔法を使っていた」
「え、それってどういう……」
ルークは驚いた顔をする。サニィが魔王化したことは聞いたけれど、その内容は詳しく聞いていなかった。
「あ、そう言えば、私のこと、まだ詳しく説明してなかったですね……私は……」
サニィは厳密には魔法使いではなく、マナを感じ取り、マナに語りかける勇者。魔王のサニィは、世界中の全てのマナを感じ取り、新たに作られた魔法すら自身の物とすることが出来た。
もちろん、今までのサニィの得意魔法もその威力は魔王クラスに変わって。
「因みに赤の魔王はイフリート。僕は三ヶ月に渡って灼熱の炎に焼かれ続けたんだよ。不死者を三ヶ月焼き続けて、ようやく切れるマナタンク持ちの炎魔法使い、と言えるね」
「我が国に残る文献では、緑の魔王はドラゴン。羽ばたく風はあらゆるものを吹き飛ばし、そのブレスはあらゆるものを焼き尽くした。初代エリーゼは風を纏う能力で弓を放ち、彼の魔王を撃ち落とした、とされている」
「俺の経験上の話だが、魔王は両者とも全く同じ強さだった。もちろん相性によって大きく変わると思うけどな。世界の意思がなんとかと言っていたから、魔王ってのはそもそもそういうものなのかもしれない」
「確かに僕が戦った魔王は、あの時のレイン君の全力程ではなかった様に思う。まあ、正直僕とは差があり過ぎて殆ど分からないけれど」
そんな話の中で、やはり誰しもが重要視する点は、レインの言った2点。
魔王はグレーズ王国滞在時のレインと同等の強さ、そしてどれもが同じ強さだと言うことだ。
「と言うことは、世界の戦力が今のレイン様並にならなければならない、と言うことですわね……」
無理だ、とオリヴィアは思う。
現状では、どれだけの自分が集まっても決してレインに敵う想像が付かない。ましてや、そんな自分が最高戦力になるのだ。
南にどれだけの戦力がいるのかは分からないが、最初の魔王が倒されて450年、南の英雄と言えばヘルメスとヴィクトリア、フィリオナ。彼らは決して最強の英雄とは言われていない。
ならば普通に考えて、北と変わらない筈だ。
自分レベルが一人か二人、集まれば良い方だろう。
そして今のペースで自分が成長したとして、エリーの潜在能力ならば超えられる可能性が高い。3年後はともかく、8年後には。そうなれば、エリーの成長も滞り、魔王討伐は絶望的になる可能性が高い。僅か7歳の戦士を見て、オリヴィアは、それを感じていた。
だから、王女は改めて決意する。
約束の為に。自分の為に。
そして、親愛なる二人の為にも。
「お姉様、お師匠様、はっきり言いますが勝てるイメージが湧きませんわ。だから少し、殺す気で鍛えて頂けませんか?
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