108 / 592
第九章:英雄たち
第百八話:この戦いが終わったら、結婚しよう
しおりを挟む
次に現れる魔王、黄の魔王。
レインの所に現れるというそれは、確かにレインを中心に渦の様に陰のマナとして徐々に形を成し始めているらしい。レインにはそれを感じることは一切できないものの、サニィは少しずつ大きくなるその存在を確かに感じている。
「全体のマナ量としてはやっぱりデーモンロードの魔王と同じ位、ですかね」
「あれに圧勝しなければ、か。怖いな……」
レインは過去の戦いで3度、デーモンロードの魔王に殺されている。呪いによって、その時の恐怖が蘇る。
一瞬の戦闘ではあったものの、確かに深く傷ついたレインを見ているサニィにとっては、それはただ事ではなかった。
「それでも一人で戦わないと、なんですね?」
「ああ。この戦いで俺は過去を克服して、お前を救わないといけない」
「何やらよく分かりませんけど、あんまり気負い過ぎたらいつもの動きが出来なくなっちゃいますよ?」
これまでに通ってきた街で、レインはいくらかの調べ物をしてきた。
それは魔王に関して。魔王の出現に関する資料や、魔王の種類などを、一人の時間を作っては独自に調べてきた。
その結果分かったことは、魔王は元となる魔物が変化して誕生するもの。
レインが倒したデーモンロードの魔王を紫とすれば、マルスが倒したものがイフリート、ボブが倒したものはほぼオーガロードだと推測できた。ベルメールが倒したものは巨大な白い馬。一本の角を生やし、との記述があったのでユニコーンだろう。そして、ヴィクトリアとフィリオナが倒したものは推測でしかないが、恐らく強力な魔法使い系の魔物。そう推測した理由は、呪いの存在だ。
なんとかして魔王が現れる前に処理してしまえないかと考えていたものの、マナを一切感じ取れないレインには対処の仕方が全く分からない。
サニィに関しても、魔王らしきマナの渦を感じ始めたのは、マルスの所を出て少ししてからだ。
ここ3ヶ月程それを感じているものの大きな変化はなく、ずっとレインの周りを大きな渦として巻いている。そんなことをサニィは言う。
「まあそれでも、今のレインさんなら大丈夫だと思っちゃいますけど。あの時よりもだいぶ強くなってますよね?」
「ああ、次は負けるわけにはいかないからな」
「本当にこだわってますね。そんなに負けたのが悔しかったです?」
「そんなところだ」
次は負けない。レインは魔王の生まれる時を聞いて1年間、何度もこの言葉を繰り返し、サニィと共に訓練してきた。強くなったのは何もサニィだけではなく、訓練してきたのもサニィだけではない。
以前魔王を倒したことで再び成長の勘を取り戻したことで、レインはサニィが追いつけない程に強くなっている。言ってみれば、サニィが努力して強くなる以上に、レインは一人鍛錬をこなしてきていた。
「私は今、マナの感覚が鋭くなっていますけど、それ以外はそこまで成長している様な感じがしません。でもレインさんはそれを抜けたって感じですね」
「ああ、同じだけ鍛錬をしているとは言え、伸び率は様々だ。一人の中で見ても、伸びるときは伸びるし、止まる時は止まる。多くの者は止まった時には苦しくて止めてしまうが、その時こそ重要だ」
「魔法は真っ直ぐ伸びないってよく聞きます。ある日突然伸びて、基本は停滞。そんな風に。まあ、大体のことは同じなんですよね」
最初の1年半で大きく力を伸ばしたサニィは、2年目に入ってからあまり伸びなくなっていた。
それはサニィの才能がどうという問題ではなく、一先ず魔法の成長に対する手がかりが途切れていることにある。最近になってよりマナに対する感覚は鋭くなってきたものの、かと言って魔法の繊細さが向上したわけではなかった。あと、ほんの少しだけ何かが足りない。そんな感覚を覚えていた。
「まあ、一つ分かることは、お前はまだ限界ではない。停滞は焦りを生むが、そんなに焦る必要もない」
「今までちょっと焦ってきたレインさんにそう言われても……」
「…………自分のことには鈍感ってこともあるさ……」
「あはは、ま、頑張ってくださいね。私はなんだかんだで準備は出来てるつもりです。ここ最近伸びないと言っても、レインさんの助けになる方法は色々と考えてますから」
そんなサニィが、素直に頼もしいと感じる。
彼女に出会うまでは本当に一人だった。孤高とも言える強さを持っていたレインがそんなことを言われる日が来るとは、彼女に出会うまでは思ってすらいなかった。
しかし、今のサニィは以前戦ったドラゴンなら一人で普通に倒せてしまうだろう。
それほどまでには強くなっている。
魔王にはまだまだ届かないものの、ドラゴンよりは上。グランドドラゴンの群れも、彼女にとっては子ども同然。それほどに成長している。
そんなサニィは今のレインにとって、確実に支えとなっている。
魔王の出現までは残り30日。
ここから先は、歴史では決して語られることの無い闇。
【歴史の真実を語る者アレス】ですら、未来永劫それを語ることはない。
黄の魔王は、ただレインを苦しめる為だけに存在する魔王なのかもしれない。
残り【1310日→1239日】 次の魔王出現まで【30日】
レインの所に現れるというそれは、確かにレインを中心に渦の様に陰のマナとして徐々に形を成し始めているらしい。レインにはそれを感じることは一切できないものの、サニィは少しずつ大きくなるその存在を確かに感じている。
「全体のマナ量としてはやっぱりデーモンロードの魔王と同じ位、ですかね」
「あれに圧勝しなければ、か。怖いな……」
レインは過去の戦いで3度、デーモンロードの魔王に殺されている。呪いによって、その時の恐怖が蘇る。
一瞬の戦闘ではあったものの、確かに深く傷ついたレインを見ているサニィにとっては、それはただ事ではなかった。
「それでも一人で戦わないと、なんですね?」
「ああ。この戦いで俺は過去を克服して、お前を救わないといけない」
「何やらよく分かりませんけど、あんまり気負い過ぎたらいつもの動きが出来なくなっちゃいますよ?」
これまでに通ってきた街で、レインはいくらかの調べ物をしてきた。
それは魔王に関して。魔王の出現に関する資料や、魔王の種類などを、一人の時間を作っては独自に調べてきた。
その結果分かったことは、魔王は元となる魔物が変化して誕生するもの。
レインが倒したデーモンロードの魔王を紫とすれば、マルスが倒したものがイフリート、ボブが倒したものはほぼオーガロードだと推測できた。ベルメールが倒したものは巨大な白い馬。一本の角を生やし、との記述があったのでユニコーンだろう。そして、ヴィクトリアとフィリオナが倒したものは推測でしかないが、恐らく強力な魔法使い系の魔物。そう推測した理由は、呪いの存在だ。
なんとかして魔王が現れる前に処理してしまえないかと考えていたものの、マナを一切感じ取れないレインには対処の仕方が全く分からない。
サニィに関しても、魔王らしきマナの渦を感じ始めたのは、マルスの所を出て少ししてからだ。
ここ3ヶ月程それを感じているものの大きな変化はなく、ずっとレインの周りを大きな渦として巻いている。そんなことをサニィは言う。
「まあそれでも、今のレインさんなら大丈夫だと思っちゃいますけど。あの時よりもだいぶ強くなってますよね?」
「ああ、次は負けるわけにはいかないからな」
「本当にこだわってますね。そんなに負けたのが悔しかったです?」
「そんなところだ」
次は負けない。レインは魔王の生まれる時を聞いて1年間、何度もこの言葉を繰り返し、サニィと共に訓練してきた。強くなったのは何もサニィだけではなく、訓練してきたのもサニィだけではない。
以前魔王を倒したことで再び成長の勘を取り戻したことで、レインはサニィが追いつけない程に強くなっている。言ってみれば、サニィが努力して強くなる以上に、レインは一人鍛錬をこなしてきていた。
「私は今、マナの感覚が鋭くなっていますけど、それ以外はそこまで成長している様な感じがしません。でもレインさんはそれを抜けたって感じですね」
「ああ、同じだけ鍛錬をしているとは言え、伸び率は様々だ。一人の中で見ても、伸びるときは伸びるし、止まる時は止まる。多くの者は止まった時には苦しくて止めてしまうが、その時こそ重要だ」
「魔法は真っ直ぐ伸びないってよく聞きます。ある日突然伸びて、基本は停滞。そんな風に。まあ、大体のことは同じなんですよね」
最初の1年半で大きく力を伸ばしたサニィは、2年目に入ってからあまり伸びなくなっていた。
それはサニィの才能がどうという問題ではなく、一先ず魔法の成長に対する手がかりが途切れていることにある。最近になってよりマナに対する感覚は鋭くなってきたものの、かと言って魔法の繊細さが向上したわけではなかった。あと、ほんの少しだけ何かが足りない。そんな感覚を覚えていた。
「まあ、一つ分かることは、お前はまだ限界ではない。停滞は焦りを生むが、そんなに焦る必要もない」
「今までちょっと焦ってきたレインさんにそう言われても……」
「…………自分のことには鈍感ってこともあるさ……」
「あはは、ま、頑張ってくださいね。私はなんだかんだで準備は出来てるつもりです。ここ最近伸びないと言っても、レインさんの助けになる方法は色々と考えてますから」
そんなサニィが、素直に頼もしいと感じる。
彼女に出会うまでは本当に一人だった。孤高とも言える強さを持っていたレインがそんなことを言われる日が来るとは、彼女に出会うまでは思ってすらいなかった。
しかし、今のサニィは以前戦ったドラゴンなら一人で普通に倒せてしまうだろう。
それほどまでには強くなっている。
魔王にはまだまだ届かないものの、ドラゴンよりは上。グランドドラゴンの群れも、彼女にとっては子ども同然。それほどに成長している。
そんなサニィは今のレインにとって、確実に支えとなっている。
魔王の出現までは残り30日。
ここから先は、歴史では決して語られることの無い闇。
【歴史の真実を語る者アレス】ですら、未来永劫それを語ることはない。
黄の魔王は、ただレインを苦しめる為だけに存在する魔王なのかもしれない。
残り【1310日→1239日】 次の魔王出現まで【30日】
0
お気に入りに追加
402
あなたにおすすめの小説
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる