68 / 592
第七章:グレーズ王国の魔物事情と
第六十八話:世界を変える聖女の奇跡
しおりを挟む
「さて、本題に入ろうか」
オリヴィアが新たな道を切り開いた後、再び部屋に戻った一同は会議を始める。オリヴィアの席はもちろんサニィの隣だ。レインの方も見ていたが、くっ等と声を漏らしながらサニィの隣に陣取った。
諦めると口には出してみるものの、直ぐに切り替えられるものではない。いや、そもそも男女の違いがある。
「聞こう。予言ではどのように?」
レインは相変わらずいつもの調子を崩さないが、サニィの腕に絡みつくオリヴィアの方を見ている。
「予言では、次に魔王が出るのは約1年後。392日後と言っていたな。場所は……勇者レインの所だ」
王も平静を装ってはいるが、オリヴィアとサニィの方を向いている。
「なるほど。俺の所か。ならばその時には人の居ない所にいなければならんな」
「すまないが頼む。しかし、もう一つ問題が出た。今から28日後、この首都にドラゴンが2頭飛来するらしい。原因はまたもやレインと言うことだが、お前を追い出してみたところで襲われるのは首都、と言うことだ。これの討伐を命じる」
「俺のせいならば仕方がない。両方共俺が倒そう」
二人はオリヴィアとサニィの方を向いたままそんな会話を済ませると、再びオリヴィアとサニィの方を見る。……改めて、しっかりと注視する。
「しかしまあ、片方は娘とは言え、美少女同士が絡み合ってるというのも良いものだな、お前ら」
「そうだな。決闘したのは正解だったと言えよう」
「……お前ら…………」
そんな会話をしつつ二人を眺める王とレイン、呆れた顔のディエゴに、サニィの顔は赤く染まる。
王妃はそんな様子を羨ましそうに見ているのがサニィの気になるところではあったが、王とレインに目の保養だと言われてまんざらでもない様子のオリヴィアはサニィの腕に頬を擦りつけていた。
確かにオリヴィアはとても可愛いので、サニィ自身も懐かれて悪い気はしていない。
とは言えサニィはノーマルだ。オリヴィアの表情は明らかにただ懐いているソレではない。
正直、全く会議に集中できていない。
遅れて今頃、先ほどの王とレインの会話が頭に入ってきた。
「あ、いや、ちょっと待ってください。あの、ドラゴン2頭って言いました?」
「ああ、言ったが」
サニィの遅めの質問に王が答える。
その言葉を聞いて、サニィはキリッと表情を変えた。それを見たオリヴィアの表情がうっとりと変わる。
ついでに王妃もうっとりとする。
「片方は、私にやらせてください」
「……それはまた、どうしてだ?」
覚悟を決めたその一言に、レインはその表情を険しいものに変える。
ディエゴはなんとか保っているものの、王と王妃がビクッとするほどだ。
それを見て、オリヴィアはビクッとした後、遂には蕩けだす。「はぁん、レインさまぁ」等と言っているが、それを聞いている者はこの場には居なかった。
「私が勇者レインに並ぶ者、聖女サニィだからです」
顔を真っ赤にしながら、覚悟を決めた女はそう告げた。
その瞳には覚悟を決めた色。しかし、レインの方を見て微笑んでもいる。
言外に、私がレインさんを守る番でもあります。そう言っている様だ。
決闘の後、「変な口上を言っちゃったあぁぁぁぁ……」等と真っ赤になりながら泣いていた者とは思えない程に、その表情は慈愛に満ちていた。
「良いだろう。片方はお前に任せる」
そんな決意を見せられては、応えないわけにはいかなかった。
「レインさん! ありがとうございます!」
「ただし、これからの26日間は地獄の特訓を課すぞ。覚悟しろ」
「ひ、ひぃぃいいいいい!!」
レインを守る為のドラゴン戦よりもレインの特訓の方が怖い。
何やら矛盾しているようではあるが、素直なサニィの素直な感情だった。
「わたくしにも同じレベルの稽古をつけてくださいませ、レイン様!」
そんなことを言うオリヴィアに、真剣に止めたほうが良いと語るサニィは、ちゃんとお姉さんをしている様で微笑ましい。
そんな二人を見て、レインは余計な決断をした。
「よし、オリヴィアは俺の弟子2号にしてやろう。マイケルに勝たせてやる」
「あらまあ、それは光栄の極みです! あ、あの、お姉さまさえよろしければわたくしをそのままレイン様の欲望の捌け口にご利用ください。ご命令とあらばなんでも致します! なんならお姉さまもご一緒に、はぁはぁ」
「ダメです。弟子2号は良いですけど、あなたは王女様なんですよ? ダメです。……ダメです」
両親の目の前でとんでもないことを言い出すオリヴィアだったが、両親はむしろやってやれという表情をしている。と言うより父親が「やれ!いけ!」等と小声で言っている。聞こえないようにしているつもりだろうが、いつもの訓練の一環、魔法で身体強化をしていたサニィには聞こえている。
「はあ、全く、この国の未来が心配です。ドラゴン退治、止めようかな……」
「それではわたくしがやります! マイケルも! 良いですよね、レイン様!?」
「ダメだ。お前では勝てん。俺の弟子になる以上敗北は許されない。今回はサニィに任せておけ。奇跡を見せてやる」
どんどんカオスになっていく会議とも言えない会議に、疲労が貯まるのはサニィとディエゴだけだった。
その後も公務もせずに一時間ほどだべっていると、遂にサニィが切れる。
「もう! うおおおおおおおおおおおお!!」
そのまま部屋の中が蔦で埋め尽くされ、その日の会議は幕を閉じた。
その場から脱出出来たのはレインだけ。
ディエゴ以外は閉じ込めて二時間程反省させた後、食事会場へと移動した。
彼ら三人は震えていた。暗闇の中でどれだけ頑張っても身動き一つ取れないという恐怖を体験したのは当然ながら初めてだった。しかも、いつ解放されるのかすら分からない。音も、サニィの魔法によって遮断されていた。
「せ、聖女様、先ほどは申し訳御座いませんでした」
そんなことを言いながら頭を下げる王に、最早威厳などは存在しない。
娘と日を同じくして、王妃と王女がサニィに惹かれる理由を、王は躾によって理解した……。
オリヴィアが新たな道を切り開いた後、再び部屋に戻った一同は会議を始める。オリヴィアの席はもちろんサニィの隣だ。レインの方も見ていたが、くっ等と声を漏らしながらサニィの隣に陣取った。
諦めると口には出してみるものの、直ぐに切り替えられるものではない。いや、そもそも男女の違いがある。
「聞こう。予言ではどのように?」
レインは相変わらずいつもの調子を崩さないが、サニィの腕に絡みつくオリヴィアの方を見ている。
「予言では、次に魔王が出るのは約1年後。392日後と言っていたな。場所は……勇者レインの所だ」
王も平静を装ってはいるが、オリヴィアとサニィの方を向いている。
「なるほど。俺の所か。ならばその時には人の居ない所にいなければならんな」
「すまないが頼む。しかし、もう一つ問題が出た。今から28日後、この首都にドラゴンが2頭飛来するらしい。原因はまたもやレインと言うことだが、お前を追い出してみたところで襲われるのは首都、と言うことだ。これの討伐を命じる」
「俺のせいならば仕方がない。両方共俺が倒そう」
二人はオリヴィアとサニィの方を向いたままそんな会話を済ませると、再びオリヴィアとサニィの方を見る。……改めて、しっかりと注視する。
「しかしまあ、片方は娘とは言え、美少女同士が絡み合ってるというのも良いものだな、お前ら」
「そうだな。決闘したのは正解だったと言えよう」
「……お前ら…………」
そんな会話をしつつ二人を眺める王とレイン、呆れた顔のディエゴに、サニィの顔は赤く染まる。
王妃はそんな様子を羨ましそうに見ているのがサニィの気になるところではあったが、王とレインに目の保養だと言われてまんざらでもない様子のオリヴィアはサニィの腕に頬を擦りつけていた。
確かにオリヴィアはとても可愛いので、サニィ自身も懐かれて悪い気はしていない。
とは言えサニィはノーマルだ。オリヴィアの表情は明らかにただ懐いているソレではない。
正直、全く会議に集中できていない。
遅れて今頃、先ほどの王とレインの会話が頭に入ってきた。
「あ、いや、ちょっと待ってください。あの、ドラゴン2頭って言いました?」
「ああ、言ったが」
サニィの遅めの質問に王が答える。
その言葉を聞いて、サニィはキリッと表情を変えた。それを見たオリヴィアの表情がうっとりと変わる。
ついでに王妃もうっとりとする。
「片方は、私にやらせてください」
「……それはまた、どうしてだ?」
覚悟を決めたその一言に、レインはその表情を険しいものに変える。
ディエゴはなんとか保っているものの、王と王妃がビクッとするほどだ。
それを見て、オリヴィアはビクッとした後、遂には蕩けだす。「はぁん、レインさまぁ」等と言っているが、それを聞いている者はこの場には居なかった。
「私が勇者レインに並ぶ者、聖女サニィだからです」
顔を真っ赤にしながら、覚悟を決めた女はそう告げた。
その瞳には覚悟を決めた色。しかし、レインの方を見て微笑んでもいる。
言外に、私がレインさんを守る番でもあります。そう言っている様だ。
決闘の後、「変な口上を言っちゃったあぁぁぁぁ……」等と真っ赤になりながら泣いていた者とは思えない程に、その表情は慈愛に満ちていた。
「良いだろう。片方はお前に任せる」
そんな決意を見せられては、応えないわけにはいかなかった。
「レインさん! ありがとうございます!」
「ただし、これからの26日間は地獄の特訓を課すぞ。覚悟しろ」
「ひ、ひぃぃいいいいい!!」
レインを守る為のドラゴン戦よりもレインの特訓の方が怖い。
何やら矛盾しているようではあるが、素直なサニィの素直な感情だった。
「わたくしにも同じレベルの稽古をつけてくださいませ、レイン様!」
そんなことを言うオリヴィアに、真剣に止めたほうが良いと語るサニィは、ちゃんとお姉さんをしている様で微笑ましい。
そんな二人を見て、レインは余計な決断をした。
「よし、オリヴィアは俺の弟子2号にしてやろう。マイケルに勝たせてやる」
「あらまあ、それは光栄の極みです! あ、あの、お姉さまさえよろしければわたくしをそのままレイン様の欲望の捌け口にご利用ください。ご命令とあらばなんでも致します! なんならお姉さまもご一緒に、はぁはぁ」
「ダメです。弟子2号は良いですけど、あなたは王女様なんですよ? ダメです。……ダメです」
両親の目の前でとんでもないことを言い出すオリヴィアだったが、両親はむしろやってやれという表情をしている。と言うより父親が「やれ!いけ!」等と小声で言っている。聞こえないようにしているつもりだろうが、いつもの訓練の一環、魔法で身体強化をしていたサニィには聞こえている。
「はあ、全く、この国の未来が心配です。ドラゴン退治、止めようかな……」
「それではわたくしがやります! マイケルも! 良いですよね、レイン様!?」
「ダメだ。お前では勝てん。俺の弟子になる以上敗北は許されない。今回はサニィに任せておけ。奇跡を見せてやる」
どんどんカオスになっていく会議とも言えない会議に、疲労が貯まるのはサニィとディエゴだけだった。
その後も公務もせずに一時間ほどだべっていると、遂にサニィが切れる。
「もう! うおおおおおおおおおおおお!!」
そのまま部屋の中が蔦で埋め尽くされ、その日の会議は幕を閉じた。
その場から脱出出来たのはレインだけ。
ディエゴ以外は閉じ込めて二時間程反省させた後、食事会場へと移動した。
彼ら三人は震えていた。暗闇の中でどれだけ頑張っても身動き一つ取れないという恐怖を体験したのは当然ながら初めてだった。しかも、いつ解放されるのかすら分からない。音も、サニィの魔法によって遮断されていた。
「せ、聖女様、先ほどは申し訳御座いませんでした」
そんなことを言いながら頭を下げる王に、最早威厳などは存在しない。
娘と日を同じくして、王妃と王女がサニィに惹かれる理由を、王は躾によって理解した……。
0
お気に入りに追加
402
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる