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第六章:青と橙の砂漠を旅する
第四十七話:建前は遅れを取り戻す
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デスワームの件でサニィがパニックに陥って次の日、サニィはレインの背中に背負われていた。
デスワームが出現する地域はオアシスの南西500km程度よりも更に南西の地域のみ。かなり限られた地域にのみ生息する。
非常に限定された地域にしか生息していない上で強力な魔物であるが故に、その姿などは曖昧な情報しか手に入らなかった。自ら進んで砂漠に入る者などほぼ居ない上に、そんな場所に超強力な魔物が出ると知って近づく者など更に居ない。巨大なヘビの様な虫の魔物という情報が、いつしか毒液を吐く巨大なデーモン並みの恐ろしさのミミズという情報として広まっていた。
実際のところはデーモンよりは弱く、その毒を合わせてもデーモンには及ばない。その程度の魔物なわけだったが、サニィの感じたように、未知でいて巨大な虫と言うものはそれだけで恐ろしい。
それはともかくとして、そんなデスワームがトラウマになったサニィは、その日の晩は一睡も出来ずに、次の日に汗をしっかりと落とすと、レインの背中で気を失うように眠り始めた。
その圧倒的な強さの背は非常に乗り心地も良く、そこにいれば100%安全だと本能ごと理解しているかのように、一度眠り始めたらぐっすりだった。
(涎が垂れてきているが……)
流石にサニィが好みの美少女だとは言え、肩口に涎を垂らされて喜びはしない。とはいえ、サニィの体は上着越しでも程よく柔らかく、背負い心地も良いものだった。尤もサニィは人によっては貧乳と言うだろう部類なので、胸部が特に、などということもない。
標準体型ではあるものの全体的に女性特有の柔らかさがちょうど良い。そんな感じだ。
その日はレインの足でもって300km程移動すると、デスワームの地帯を抜けた。
サニィは程よく眠ると目が覚めていたが、デスワームの地域を抜けるまでは目を開けたくなかったこと、そして予想外にもレインの背の乗り心地が良かったことでずっと狸寝入りを決めていた。
とは言えデスワームはレインが全て回避していたことも分かっていたが。
「……今日はありがとうございました」
「構わない。俺も約得と言ったところだしな。と言うことで明日オアシスまで走るというのはどうだ?」
「そうですね。今日は魔法の訓練が疎かでしたし、明日は一日今日の分を取り戻したいです。また背中、お願いします」
レインは自分の発言で生娘のサニィなら気を悪くするだろうなと思いつつそう提案をしてみたが、サニィの反応は意外にも次の日もレインの背に乗りたいということだった。
もちろんサニィは訓練を理由にしているが、実はその背の乗り心地が良かったことが大いに関係していることも理由だ。当然それは言わないけれど。
そして次の日、レインはサニィを背に乗せ、残りの450kmを走り出す。
時速45kmでも10時間。砂漠で人を一人背負ってそれだけの距離を移動するのは普通に考えれば不可能。しかし、サニィのサポートによってそれは案外簡単だった。
サニィは魔法によって常に砂漠の砂を平に固め道を作り、透視の応用でオアシスの方向を探り、道中の魔物を全て蹴散らし、砂嵐を鎮めた。レインはただ指示を受けた方向に走るだけの道中。朝の6時に出発すると、昼13時過ぎ頃にはオアシスへと到着してしまった。
もちろん道中は常に代わり映えもしない砂と空の世界だ。最初は時間とともに形を変える砂漠も楽しいと思ったものだったが、それも最初の二日程度のものだった。
それはデスワームが出たことで最早嫌なことの域に達し、できる限り早くオアシスに辿り着きたい。サニィはそんな風に思っていた。レインはデスワームを気持ち悪いとは思うものの、サニィ程の拒否反応は起こさなかったが、砂漠の風景にはすぐ飽きていたこともまた事実だった。
補色の関係である青とオレンジだけで構成された空間は最初こそ強い印象を与え、ある種の感動を与えるものの、最初に強いインパクトがある分飽きるのも早い。ましてやずっと殆ど変わらない景色だ。
しかも、暑い上に歩きづらい。昼夜の変化も一日二日を楽しめば十分だ。すぐにそんな風に思う様になっていた。
その為、5日で1000km近い道のりを駆け抜けてオアシスへと辿り着く。
アリスとエリーに出会って遅れた分も取り戻せるしちょうど良い。そんな風に納得しながら。
「おおお、ここがオアシスですか! こんな湖がこの砂漠の真ん中にあるなんて……」
「緑もあって良い景色だな。俺にとってはここに住むのは死の山に住むより大変な気がするが」
そこは直径1km程の湖を囲うように草木が生い茂り、砂岩で造られた家々がそれらに馴染んで町を形成している。
「そうですね。ここは観光には良いですが住むには向いてないですよね。オアシスだけで一生過ごせるなら良いかもしれないですけど……、今回は何日滞在します?」
「今回は4日にしようか」
「そうですね。3日だとまた砂漠に出る準備をするのに短いし5日だと早く今度は砂漠に出るのが嫌になりそうですしね」
二人はようやく観光気分を取り戻し、砂漠の中の楽園へと足を踏み入れた。
デスワームが出現する地域はオアシスの南西500km程度よりも更に南西の地域のみ。かなり限られた地域にのみ生息する。
非常に限定された地域にしか生息していない上で強力な魔物であるが故に、その姿などは曖昧な情報しか手に入らなかった。自ら進んで砂漠に入る者などほぼ居ない上に、そんな場所に超強力な魔物が出ると知って近づく者など更に居ない。巨大なヘビの様な虫の魔物という情報が、いつしか毒液を吐く巨大なデーモン並みの恐ろしさのミミズという情報として広まっていた。
実際のところはデーモンよりは弱く、その毒を合わせてもデーモンには及ばない。その程度の魔物なわけだったが、サニィの感じたように、未知でいて巨大な虫と言うものはそれだけで恐ろしい。
それはともかくとして、そんなデスワームがトラウマになったサニィは、その日の晩は一睡も出来ずに、次の日に汗をしっかりと落とすと、レインの背中で気を失うように眠り始めた。
その圧倒的な強さの背は非常に乗り心地も良く、そこにいれば100%安全だと本能ごと理解しているかのように、一度眠り始めたらぐっすりだった。
(涎が垂れてきているが……)
流石にサニィが好みの美少女だとは言え、肩口に涎を垂らされて喜びはしない。とはいえ、サニィの体は上着越しでも程よく柔らかく、背負い心地も良いものだった。尤もサニィは人によっては貧乳と言うだろう部類なので、胸部が特に、などということもない。
標準体型ではあるものの全体的に女性特有の柔らかさがちょうど良い。そんな感じだ。
その日はレインの足でもって300km程移動すると、デスワームの地帯を抜けた。
サニィは程よく眠ると目が覚めていたが、デスワームの地域を抜けるまでは目を開けたくなかったこと、そして予想外にもレインの背の乗り心地が良かったことでずっと狸寝入りを決めていた。
とは言えデスワームはレインが全て回避していたことも分かっていたが。
「……今日はありがとうございました」
「構わない。俺も約得と言ったところだしな。と言うことで明日オアシスまで走るというのはどうだ?」
「そうですね。今日は魔法の訓練が疎かでしたし、明日は一日今日の分を取り戻したいです。また背中、お願いします」
レインは自分の発言で生娘のサニィなら気を悪くするだろうなと思いつつそう提案をしてみたが、サニィの反応は意外にも次の日もレインの背に乗りたいということだった。
もちろんサニィは訓練を理由にしているが、実はその背の乗り心地が良かったことが大いに関係していることも理由だ。当然それは言わないけれど。
そして次の日、レインはサニィを背に乗せ、残りの450kmを走り出す。
時速45kmでも10時間。砂漠で人を一人背負ってそれだけの距離を移動するのは普通に考えれば不可能。しかし、サニィのサポートによってそれは案外簡単だった。
サニィは魔法によって常に砂漠の砂を平に固め道を作り、透視の応用でオアシスの方向を探り、道中の魔物を全て蹴散らし、砂嵐を鎮めた。レインはただ指示を受けた方向に走るだけの道中。朝の6時に出発すると、昼13時過ぎ頃にはオアシスへと到着してしまった。
もちろん道中は常に代わり映えもしない砂と空の世界だ。最初は時間とともに形を変える砂漠も楽しいと思ったものだったが、それも最初の二日程度のものだった。
それはデスワームが出たことで最早嫌なことの域に達し、できる限り早くオアシスに辿り着きたい。サニィはそんな風に思っていた。レインはデスワームを気持ち悪いとは思うものの、サニィ程の拒否反応は起こさなかったが、砂漠の風景にはすぐ飽きていたこともまた事実だった。
補色の関係である青とオレンジだけで構成された空間は最初こそ強い印象を与え、ある種の感動を与えるものの、最初に強いインパクトがある分飽きるのも早い。ましてやずっと殆ど変わらない景色だ。
しかも、暑い上に歩きづらい。昼夜の変化も一日二日を楽しめば十分だ。すぐにそんな風に思う様になっていた。
その為、5日で1000km近い道のりを駆け抜けてオアシスへと辿り着く。
アリスとエリーに出会って遅れた分も取り戻せるしちょうど良い。そんな風に納得しながら。
「おおお、ここがオアシスですか! こんな湖がこの砂漠の真ん中にあるなんて……」
「緑もあって良い景色だな。俺にとってはここに住むのは死の山に住むより大変な気がするが」
そこは直径1km程の湖を囲うように草木が生い茂り、砂岩で造られた家々がそれらに馴染んで町を形成している。
「そうですね。ここは観光には良いですが住むには向いてないですよね。オアシスだけで一生過ごせるなら良いかもしれないですけど……、今回は何日滞在します?」
「今回は4日にしようか」
「そうですね。3日だとまた砂漠に出る準備をするのに短いし5日だと早く今度は砂漠に出るのが嫌になりそうですしね」
二人はようやく観光気分を取り戻し、砂漠の中の楽園へと足を踏み入れた。
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