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第二章:美少女魔法使いを育てる
第十四話:陽の可能性を探る
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本日も二人は青の道を歩く。
少女の作る青い道はマナを吸って生きる為、自然環境に影響を与えることは無い。
普通の魔法使いであれば、数日咲いた後に枯れてしまう開花の魔法だが、少女の作る花の道は枯れることがなかった。
それは青年に出会ったことで変化した意識故に使える様になった、少女の本気の魔法が成せる技である。
最も、二人は常に移動しているのでそれを知ることは無いのだが。
「お前はもしかしたら勇者なのかもしれんな」
ふと、勇者の青年はそんなことを呟く。
勇者の力は通常生まれ持ったものであり、大抵の人はその異常さにすぐに気付くことになる。
その多くは有り余る身体能力を持っていることが多く、幼少期から大人を凌ぐ膂力を発揮したりするからだ。
一部、体は普通だが魔物を操れるなど、超能力的な勇者もいるにはいるが、レアケース。自分が勇者だと気付かない勇者は更にレアなケースである。
「確かに、意識し始めてからは体内のマナが減ってる気すらしないんですよね。夜までずっとやってるのに何も感じません。お父さんはマナの残量は大体分かるって言ってましたけど、私は今まで未熟だから分からないのだと思ってました」
「お前が勇者だとするなら、マナタンクがそもそも無いとかな。お前の体には蛇口しかない。海から取り出し放題。そんなのはどうだ?」
「どうだ? って言われても……。確かにそれは理想的な魔法使いかも知れないですけど」
マナは常に巡っている為世界から枯渇することは無い。どれだけでも使い放題なら確かに嬉しいものだけれど、普通に考えたらそんなことはあり得ない。
と、思った所で思い出す。普通じゃない発言をしている相手は普通じゃない相手だった。
「まあ、俺にはマナが尽きない理由なんかは全く分からん。今お前の出力では尽きないだけで、これから出力が上がれば尽きるかもしれないしな。でもどっちにしろ――」
「今の時点では無限ですね……」
二人はのんびりと歩き続ける。
もう花を咲かせるイメージは普通の会話なら全く問題なく出来る程に固まっている。
相変わらず花の色は青いまま。これは今さら変えるのは逆にレインを意識しているみたいで悔しいと言うサニィの意地の様なものだった。
「そういえば魔法で肉体強化とかは出来ないのか? 俺くらいに動ければ随分と楽になるぞ?」
「私にとってレインさんはただの化け物なんで、そこまでの強化は不可能ですね。見ていても想像付かないって言うのが正直なところです。それに、仮にイメージ出来てもそんな蛇口は開きません」
レインの俺くらいと言う発言はそもそも意味が分からないとサニィは思うが、そこには突っ込まない。
王宮で働いていた母親ですら、1番凄かった魔法使いは地面を20m斬り裂いた。勇者ってのは凄いね、と言っていた。30mを軽く斬り裂くレインは実際に見て尚想像の外だ。
「肉体強化ですか。近接戦闘は剣士の役割、その裏から魔法使いはサポートや攻撃をするって言うのが一般的なのでしばらくは難しいかもしれません」
「肉体強化すると剣士と変わりない上に戦闘時間もごく短時間というわけか」
「そういうことです。夜なんかに少し練習してみますね」
「それが良いだろうな。今は出力とイメージ継続の訓練だ。ただ、現状無限のタンクを持つお前はなんでも出来るってのが理想だろう。ところで、そこに鹿と猪がいるけど、今日はどっちが良い?」
「贅沢な理想だなあ。今日はシカが良いです」
二人はこんな他愛ない会話を繰り返しながら歩く。
会話の内容は別に何でも良い。一番得意なイメージを、話しながらも継続できることがまずは重要だ。
その後、レインは次いでの様に鹿を獲ってくる。彼にとってはかなりゆっくりとした動きで。
しかし、その動きをサニィはまだ正確に把握できない。
「まだよく見えませんね……」
「もうちょいゆっくりか。意外と難しいな」
「難しいんですか?」
「これより遅くすると逃げられるんではないかと思ってしまう」
「…………見えない速度を逃げられる生き物っているんでしょうか……」
過去のことがあったからだろうだろうけれど、鍛錬のしすぎも少し困りものなのかな。
全く、仕方のない人だ。私が普通を教えてあげよう。
私は逆に、彼から非常識を学ぼう。誰かを守れるほど強くなる為には、あそこまでとは言わないけれど、人外の強さは欲しい。
サニィは歩きながらそんなことを思う。
今のところ順調に成長している。つい使ってしまう雷も、かつてない威力だ。
少なくとも既に、お父さんが見せてくれたものよりも強くなっている。それを連続で撃てる程には強くなってる。
「でも、一人であのオーガの群れを倒せるようにはなりたいな」
「一度俺の実践を見たほうが良いかもな。いきなり倒すのは無理だろう」
「そうですねー。まだ戦ったこともないですもんね」
「よし、明日の狩りはお前だ!」
「頑張ります!」
平原はまだ続く。
少女の作る青い道はマナを吸って生きる為、自然環境に影響を与えることは無い。
普通の魔法使いであれば、数日咲いた後に枯れてしまう開花の魔法だが、少女の作る花の道は枯れることがなかった。
それは青年に出会ったことで変化した意識故に使える様になった、少女の本気の魔法が成せる技である。
最も、二人は常に移動しているのでそれを知ることは無いのだが。
「お前はもしかしたら勇者なのかもしれんな」
ふと、勇者の青年はそんなことを呟く。
勇者の力は通常生まれ持ったものであり、大抵の人はその異常さにすぐに気付くことになる。
その多くは有り余る身体能力を持っていることが多く、幼少期から大人を凌ぐ膂力を発揮したりするからだ。
一部、体は普通だが魔物を操れるなど、超能力的な勇者もいるにはいるが、レアケース。自分が勇者だと気付かない勇者は更にレアなケースである。
「確かに、意識し始めてからは体内のマナが減ってる気すらしないんですよね。夜までずっとやってるのに何も感じません。お父さんはマナの残量は大体分かるって言ってましたけど、私は今まで未熟だから分からないのだと思ってました」
「お前が勇者だとするなら、マナタンクがそもそも無いとかな。お前の体には蛇口しかない。海から取り出し放題。そんなのはどうだ?」
「どうだ? って言われても……。確かにそれは理想的な魔法使いかも知れないですけど」
マナは常に巡っている為世界から枯渇することは無い。どれだけでも使い放題なら確かに嬉しいものだけれど、普通に考えたらそんなことはあり得ない。
と、思った所で思い出す。普通じゃない発言をしている相手は普通じゃない相手だった。
「まあ、俺にはマナが尽きない理由なんかは全く分からん。今お前の出力では尽きないだけで、これから出力が上がれば尽きるかもしれないしな。でもどっちにしろ――」
「今の時点では無限ですね……」
二人はのんびりと歩き続ける。
もう花を咲かせるイメージは普通の会話なら全く問題なく出来る程に固まっている。
相変わらず花の色は青いまま。これは今さら変えるのは逆にレインを意識しているみたいで悔しいと言うサニィの意地の様なものだった。
「そういえば魔法で肉体強化とかは出来ないのか? 俺くらいに動ければ随分と楽になるぞ?」
「私にとってレインさんはただの化け物なんで、そこまでの強化は不可能ですね。見ていても想像付かないって言うのが正直なところです。それに、仮にイメージ出来てもそんな蛇口は開きません」
レインの俺くらいと言う発言はそもそも意味が分からないとサニィは思うが、そこには突っ込まない。
王宮で働いていた母親ですら、1番凄かった魔法使いは地面を20m斬り裂いた。勇者ってのは凄いね、と言っていた。30mを軽く斬り裂くレインは実際に見て尚想像の外だ。
「肉体強化ですか。近接戦闘は剣士の役割、その裏から魔法使いはサポートや攻撃をするって言うのが一般的なのでしばらくは難しいかもしれません」
「肉体強化すると剣士と変わりない上に戦闘時間もごく短時間というわけか」
「そういうことです。夜なんかに少し練習してみますね」
「それが良いだろうな。今は出力とイメージ継続の訓練だ。ただ、現状無限のタンクを持つお前はなんでも出来るってのが理想だろう。ところで、そこに鹿と猪がいるけど、今日はどっちが良い?」
「贅沢な理想だなあ。今日はシカが良いです」
二人はこんな他愛ない会話を繰り返しながら歩く。
会話の内容は別に何でも良い。一番得意なイメージを、話しながらも継続できることがまずは重要だ。
その後、レインは次いでの様に鹿を獲ってくる。彼にとってはかなりゆっくりとした動きで。
しかし、その動きをサニィはまだ正確に把握できない。
「まだよく見えませんね……」
「もうちょいゆっくりか。意外と難しいな」
「難しいんですか?」
「これより遅くすると逃げられるんではないかと思ってしまう」
「…………見えない速度を逃げられる生き物っているんでしょうか……」
過去のことがあったからだろうだろうけれど、鍛錬のしすぎも少し困りものなのかな。
全く、仕方のない人だ。私が普通を教えてあげよう。
私は逆に、彼から非常識を学ぼう。誰かを守れるほど強くなる為には、あそこまでとは言わないけれど、人外の強さは欲しい。
サニィは歩きながらそんなことを思う。
今のところ順調に成長している。つい使ってしまう雷も、かつてない威力だ。
少なくとも既に、お父さんが見せてくれたものよりも強くなっている。それを連続で撃てる程には強くなってる。
「でも、一人であのオーガの群れを倒せるようにはなりたいな」
「一度俺の実践を見たほうが良いかもな。いきなり倒すのは無理だろう」
「そうですねー。まだ戦ったこともないですもんね」
「よし、明日の狩りはお前だ!」
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