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第二章:美少女魔法使いを育てる
第七話:言葉に花を咲かせる
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「行きたい場所はあるか?」
朝、目を覚まし支度をしているとレインはそんなことを聞く。どうやら予定なんかは全く決まっていないようだ。もしかしたら気を遣っているのかもしれないけれど。
「そうだなぁ、死の山は東の方だから、私に会わなければそのまま西に行ってたんですか?」
「ああ。だが俺の旅はお前に出逢ったことで半分ほどは終わったも同然だ。お前の好きな所に連れて行くことも俺の目的になった」
「……。なら、南に行きたいです。南にあるジャングル! 守ってくれるんですよね!?」
レインは雑に扱っても良い。昨日一日だけでそれを学習したサニィはそう告げる。このまま西に行けば砂漠、北に行けば氷雪地帯、東に行けば死の山。それならば1番騒がしそうなジャングルが良い。
今は寂しさを感じる場所ではなく、騒がしい所の方がきっと良い。
その答えにレインは満足したようで、「任せておけ。この宝剣で全てを斬り伏せてやろう」などと胸を張っている。
その言葉に、サニィは少しだけ気になることがあった。
「宝剣って、その剣には名前って無いんですか?」
「必要か?」
「それは必要ですよ! 言霊は大事です。ちなみに私の杖は『フラワー2号』と言います」
「ダサいな」
えっへんと胸を張りながら名前を告げるサニィに一切の慈悲もない言葉が投げかけられる。言霊が大事だと言いながらあんまりな名前を付けているのだ。それも仕方はない。「1号はどこに行った」そんな呟きさえ聞こえて来そうだ。
しかし自信があったのだろう。今まではそれで受け入れられていたのだろう。サニィはその言葉を聞いて驚愕に目を見開くと、こう言った。
「レインさん大丈夫ですか? 私のこの素晴らしいネーミングセンスが分からないなんて、可哀想なんですけど」
「そうか。少なくともこいつにそんな名前を付けられる位なら俺は宝剣を名前にした方が良いと思うぞ」
「ええええ、ダメです! せめて『心太』にしましょう!」
「それは食い物だろうが! なんだ? 食ったばっかりなのに腹が減ったのか!?」
サニィの奇天烈な発言にレインはかつてない程に取り乱す。それも当然だ。目の前にいる一目惚れした筈の女は、実はドン引きするレベルでネーミングセンスが無い。
愛剣としてこれからの5年間を共に過ごそうと思った宝剣に『ところてん』などと名付けられそうになったのだ。
これには100年の恋も冷めるというもの。相手がレインでなければ。
「ならばお前をところてん女と呼ぶことになるが良いのか?」
「嫌に決まってます!」
「自分がされて嫌なことを人にするなと教わらなかったのか?」
「う……可愛いのに……」
可愛いのに自分が名付けられるのは嫌だ。さっぱり意味が分からない。
ただ、落ち込むサニィもまた悪くはない。
彼女は金髪碧眼。空の様に青い瞳と輝く金髪の美少女だ。身長は160cm手前。俗に言う貧乳。しかし胸は大きさではない。最も重要なのは感度だろう。
この女は言葉だけでガクガクし始める程だ。
「ああ、悪くない」
「……ところてん?」
レインの口をついた発言に上目遣いで反応するサニィ。
「いいや、全く別のことだ。この宝剣の名前は保留。また良いのが思い付いたら言ってくれ」
「もう、レインさんが持ち主なんだからあなたがつけてください!」
サニィは真面目に考えているのに青年は真面目に考える様子が無い。
それに少しばかり不満を持つが、青年が気にする様子もない。
「俺はお前に付けてもらいたい。センスの問題じゃなくてな。まあ、理由はそのうち言うとしよう」
「はあ、それじゃ仕方ないから良い名前考えておきます」
「物や食べ物は無しだからな」「はーい」
お互いに妥協すると、荷物をまとめ終えた二人は早速と歩き出す。
最初の目的地は南にあるジャングル。多くのモンスターと動物がひしめき合っている生の楽園。
――。
「よし!『フラワー2号』、私達も強くなろうね!」
そう告げるサニィの歩いた跡には、多くの花が咲き乱れていた。
朝、目を覚まし支度をしているとレインはそんなことを聞く。どうやら予定なんかは全く決まっていないようだ。もしかしたら気を遣っているのかもしれないけれど。
「そうだなぁ、死の山は東の方だから、私に会わなければそのまま西に行ってたんですか?」
「ああ。だが俺の旅はお前に出逢ったことで半分ほどは終わったも同然だ。お前の好きな所に連れて行くことも俺の目的になった」
「……。なら、南に行きたいです。南にあるジャングル! 守ってくれるんですよね!?」
レインは雑に扱っても良い。昨日一日だけでそれを学習したサニィはそう告げる。このまま西に行けば砂漠、北に行けば氷雪地帯、東に行けば死の山。それならば1番騒がしそうなジャングルが良い。
今は寂しさを感じる場所ではなく、騒がしい所の方がきっと良い。
その答えにレインは満足したようで、「任せておけ。この宝剣で全てを斬り伏せてやろう」などと胸を張っている。
その言葉に、サニィは少しだけ気になることがあった。
「宝剣って、その剣には名前って無いんですか?」
「必要か?」
「それは必要ですよ! 言霊は大事です。ちなみに私の杖は『フラワー2号』と言います」
「ダサいな」
えっへんと胸を張りながら名前を告げるサニィに一切の慈悲もない言葉が投げかけられる。言霊が大事だと言いながらあんまりな名前を付けているのだ。それも仕方はない。「1号はどこに行った」そんな呟きさえ聞こえて来そうだ。
しかし自信があったのだろう。今まではそれで受け入れられていたのだろう。サニィはその言葉を聞いて驚愕に目を見開くと、こう言った。
「レインさん大丈夫ですか? 私のこの素晴らしいネーミングセンスが分からないなんて、可哀想なんですけど」
「そうか。少なくともこいつにそんな名前を付けられる位なら俺は宝剣を名前にした方が良いと思うぞ」
「ええええ、ダメです! せめて『心太』にしましょう!」
「それは食い物だろうが! なんだ? 食ったばっかりなのに腹が減ったのか!?」
サニィの奇天烈な発言にレインはかつてない程に取り乱す。それも当然だ。目の前にいる一目惚れした筈の女は、実はドン引きするレベルでネーミングセンスが無い。
愛剣としてこれからの5年間を共に過ごそうと思った宝剣に『ところてん』などと名付けられそうになったのだ。
これには100年の恋も冷めるというもの。相手がレインでなければ。
「ならばお前をところてん女と呼ぶことになるが良いのか?」
「嫌に決まってます!」
「自分がされて嫌なことを人にするなと教わらなかったのか?」
「う……可愛いのに……」
可愛いのに自分が名付けられるのは嫌だ。さっぱり意味が分からない。
ただ、落ち込むサニィもまた悪くはない。
彼女は金髪碧眼。空の様に青い瞳と輝く金髪の美少女だ。身長は160cm手前。俗に言う貧乳。しかし胸は大きさではない。最も重要なのは感度だろう。
この女は言葉だけでガクガクし始める程だ。
「ああ、悪くない」
「……ところてん?」
レインの口をついた発言に上目遣いで反応するサニィ。
「いいや、全く別のことだ。この宝剣の名前は保留。また良いのが思い付いたら言ってくれ」
「もう、レインさんが持ち主なんだからあなたがつけてください!」
サニィは真面目に考えているのに青年は真面目に考える様子が無い。
それに少しばかり不満を持つが、青年が気にする様子もない。
「俺はお前に付けてもらいたい。センスの問題じゃなくてな。まあ、理由はそのうち言うとしよう」
「はあ、それじゃ仕方ないから良い名前考えておきます」
「物や食べ物は無しだからな」「はーい」
お互いに妥協すると、荷物をまとめ終えた二人は早速と歩き出す。
最初の目的地は南にあるジャングル。多くのモンスターと動物がひしめき合っている生の楽園。
――。
「よし!『フラワー2号』、私達も強くなろうね!」
そう告げるサニィの歩いた跡には、多くの花が咲き乱れていた。
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