超短編集:『全員アホの冒険』

七つ目の子

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さいきょうのぱーてぃ

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 この世界には人間と動物、そして人間を襲うモンスターがいる。
 その中で人間だけは神の祝福を受け、死んでも無限に生き返るのだ。

 彼らは寿命まで決して命尽きない。
 そして彼らは夢見ているのだ。
 いつかモンスターのいなくなる世界を。


 ある一つの冒険者パーティがあった。
 メンバーは勇者A、勇者B、聖女、魔王、そして破壊神である。
 この上ない、さいきょうのぱーてぃだといえるだろう。


 「現れたな! 我が宿敵、ドラゴンよ! みんな、気を抜くなよ。」

 勇者Aは身構える。彼の目には見えているのだ、ドラゴンが。
 聖女が目の前に持ってきたレオパという種のドラゴンが。
 正式名称はヒョウモントカゲモドキ。
 間近に持ってこられたら誰だって巨大なドラゴンだと勘違いするに違いない。

 「どこだドラゴンは!? 次は負けんぞ!」

 勇者Bも身構える。彼の目には何故かドラゴンは映っていない。
 もしかしたら透明化の能力があるのかもしれない。

 「どこ!? 私の”どらごん”が火を噴くわ!」

 どうやら聖女の目にもドラゴンは映っていないようだ。手に持ったレオパのどらごんを優しく抱きしめる。
 何故か突然目の前から居なくなったドラゴンに勇者Aも警戒する。
 やはり今回のドラゴンは透明化の能力を持っているらしい。

 「……」

 魔王は緊張している。隣に破壊神がいるのだ。
 彼はパーティを組んでから一度も話さないし戦わない。
 破壊神のメンツを立てることの方が大事なのだ。
 決して緊張していて何もできないわけではない。

 「我ハ全テヲ破壊スル者ナリ」

 破壊神は戦う気満々の様だ。
 彼が話す言葉はその一つだ。それだけで十分なのだろう。
 彼はとても優しい。率先して皆を守れる位置に立つ。

 みんながドラゴンへの警戒をあらわにする。
 しかし、中々ドラゴンは現れない。

 「我ハ全テヲ破壊スル者ナリ」

 破壊神にも見えない程今回のドラゴンは強力らしい。
 警戒しろと皆に告げる。

 皆の緊張が最高潮になる。



 「ぐはあっ!」

 突然勇者Bが死ぬ。
 何故か分からない。だが、勇者Bは突然死んだのだ。
 やはり見えないドラゴンはとてつもなく強力だ。

 「きゃあああ!」

 聖女も死ぬ。崩れ落ちる聖女の手からレオパをそっと魔王が受け取る。
 レオパには低温は適さない。程よい魔王の体温がレオパを安心させる。

 「くっ!どこだ!見えないドラゴングッハァ!」

 遂には勇者Aも死んでしまう。

 「……」

 「我ハ全テヲ破壊スル者ナリ」

 おかしい、今回のドラゴンは何故こんなにも強いのだ。
 勇者達が復活して戻ってくるまで、破壊神と魔王は緊張を続けたまま待ち続けた。



 しかし、何度来ても彼らはすぐに死んでしまう。

 「我ハ全テヲ破壊スル者ナリ」

 何十回繰り返しただろうか。やがて破壊神は何かに気づいたらしい。
 悲しそうな顔をすると、彼は別の世界へ破壊の旅に出てしまった。



 どうやら、破壊神の放つ緊張の殺気が彼らを殺してしまっていた様だ。
 レオパだけは魔王がずっと守っていたので無事だったのだが……。

 数年後、そんな事実にようやく気付いた勇者達は、傷心の破壊神を救い出すべく別の世界に旅立つのだった。


                                  おわり
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