超短編集:『全員アホの冒険』

七つ目の子

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vs犬人間

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 この世界には人間と動物、そして人間を襲うモンスターがいる。
 その中で人間だけは神の祝福を受け、死んでも無限に生き返るのだ。

 彼らは寿命まで決して命尽きない。
 そして彼らは夢見ているのだ。
 いつかモンスターのいなくなる世界を。


 ある一つの冒険者パーティがあった。
 メンバーはリーダーのバーサーカー、ウォーリアー、バンディット、ガーディアン、そして副リーダーの猫である。全員レベルは25程度。ベテランだ。
 少々の偏りはあるが、全く問題のないパーティだろう。


「うおおぉぉい! 今日はダンジョンに行くぞおおお!」

 リーダーはメンバーに伝える。

「わたくしは死んだら終わりなので却下です」

 副リーダーは不満そうだ。

「ならどうするんだ~ぁ? あ~ぁん? 死ぬのが怖くて冒険ができるのか~ぁ?」

 ガーディアンは猫に詰め寄る。

「犬カフェに行きましょう。癒されますよ」

 副リーダーは答える。猫は犬派なようだ。

「ならば間を取って犬ダンジョンに行きましょう。冒険もできて癒されます。」

 バンディットが提案する。そんなものは存在しない。

「にゃ~ん」

 ウォーリアーが答える。どうやらコボルドと言うモンスターが犬人間みたいな見た目をしているらしい。
 ノールのいるダンジョンはどうかということだ。


 そうして満場一致で、犬カフェへ冒険に出掛ける事になった。


「うおおぉぉい! ここが犬カフェかあああぁあ! 猫がいっぱいいるなぁ!」

 リーダーが言う。ここが犬カフェである。犬と猫の見分けもつかないようだ。

「わんわん」

 ノールの店員が襲いかかってきた。
 どうやら猫と言われたことに腹を立てたらしい。

 レベル90近い店員の一撃によりリーダーは霧散する。

「くっ、骨をあげるので許してください!」

 副リーダーは僅かに残ったリーダーの骨を差し出す。
 どうやらそれで満足してもらえたようだ。

 犬カフェで楽しく過ごしていると、しばらくして復活したリーダーが戻ってきた。

「うおおぉぉい! 済まなかったなにゃんこおぉぉお!」

 リーダーは霧散する。
 二度目の無礼に店員の怒りはおさまらない。

 最早差し出す骨も残ってはいない。

 バンディット、ガーディアンも一瞬のうちに霧散してしまう。

 しかし!

「にゃ~ん」

 ウォーリアーのおっさんが可愛さをアピールする。

 即座に霧散する。

「くっ! 殺すなら殺せ!」

 副リーダーは足元に擦り寄り、上目遣いで店員を見つめる。

 効果は抜群のようだ。

 店員は猫なで声で副リーダーを撫で回す。
 文字通り、猫撫でである。ほぼ犬が。


 その後、店員に捕まった副リーダーを助けるため、パーティメンバーは毎日犬カフェに通いつめ、毎日癒されては霧散して帰っていくという日々が続いたのだった。


 数年後。
 ノールの間で犬カフェ経営が流行する。
 人間を簡単に引き寄せられるのだ。やつらは何度も何度もやってくる。マジチョロい。
 毎日毎日大金を落としていく人間どもを滅ぼすため、ノール達は今日も犬カフェで働くのだ。


                             おわり
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