青月

南いおり

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上弦の月

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陽が沈んで月が珍しく青色に見える。
テスト期間だからどの部活も休みで校舎に生徒は誰もいない。俺はテスト勉強で使うワークを学校に忘れ取りに来た。真っ暗な廊下に射し込む青色の光が綺麗で見惚れながら教室に入った。するとそこにはクラスメイトの夏石双葉がいた。

休み時間に他のクラスメイトと談笑することもなく、1人で本を読む。友達がいないわけでもなさそうで班を作るときなどにもすんなり女子の輪に入っていく。彼女が自分のことを話すことがないから、同じクラスになって3年目の俺でも知っていることはほとんどない。

彼女は窓側にある自分の席に座って、外を見ていた。

「夏石さん?」

声をかけると彼女は俺に気づいたようで焦って教室を出ていった。すれ違った瞬間、彼女の目から涙がこぼれたのが見えた。振り返ったがもう帰ったようだった。俺はそのまま忘れ物を持ち帰ったが、家に帰っても彼女のことが頭から離れなかった。  

 
彼女はなぜあんな時間に学校に1人でいるのか。

彼女はなぜ泣いていたのか。


次の日の放課後、人が帰り始めた時に話しかけた。

「あのさ、昨日なんで放課後あんな時間まで学校にいたの?」
「そっちこそ、なんであの時間に来たの?」
「俺は昨日英語のワーク忘れたから」
「そうなんだ」
「で、昨日なんでいたの?」
「別に。理由なんてない」
「じゃあ、なんで泣いてたの?」
「見間違いじゃない?私は泣いてない」

昨日、彼女の目からはたしかに涙が流れていた。見間違いではない。

「どっちにしても、もし辛いことがあるなら誰か頼りなよ」

あまり触れて欲しくないのだと思い、そう言い立ち去ろうとした。

「じゃあ…私の友達になってほしい」

彼女は俺の顔をじっと見ながら言った。まさか俺と友達になってなんていうお願いをされると思わなくて、動揺した。

「え。別にいいけど、夏石さん、友達いるよね?」
「いることにはいるけど、休みの日とか放課後に遊んだり、話したりする友達がほしくて…ダメかな?」
「ダメじゃないよ…」
「…ありがとう」

その時の彼女の笑顔にドキッとしてしまった。











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