未読の王様〜僕が次の一手をやる

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2. 別世界への扉

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  あの不思議な老人との出会いから数日が

 経ち、亜夢流はあの老人がいったい何者

 だったかもつかめずに、心にモヤモヤを

 抱えながら、日々過ごしていた。

 あれ以来、あの老人は現れなくなったが、

 あの不思議なしおりは亜夢流の机

 の引き出しにしまったままだった。

 
 夜中にピカピカ光り、あのしおりから不思議な

 音が発せられるというのに、

 当の本人は気づいてなかった。


 亜夢流はそのしおりをなぜか、机の引き出しに

 しまい、鍵をかけて、誰も開けれないように

 していた。

 自分だけの秘密にしたかった。

 あの不思議な自分の祖父という老人の言葉を
 
 一つ一つ、思い返しながら、自分だけ
 
 の記憶の中に閉じ込め、

 誰にも邪魔されたくないという思いが

 日に日に、強くなった。


 あの日以来、幸運というべきなのか、

 不思議な力が芽生えたのかは誰も

 知るよしもないが、亜夢流の身に

 小さな幸運が次々と起きるようになっていた。

  
  学校の成績も苦手な数学がなぜか、

  スラスラ解けるようになり、

  
  サッカーでも敵からボールを奪い、

  他をよせつけないような、

  サッカー選手並みの

  多彩なドリブルを発揮することもあった。

  今まで特に、得意なこともなく、

  かといって、劣等生でもない、

  並の学生だった亜夢流には

  まさに、棚からぼたもちのような

  ものが、亜夢流にもついにやってきた

  のだ。誰かに注目されることのない

  日陰の人生から少しずつ、上に

  上がってくるとはこの感覚だろうか。

  
  亜夢流が不思議な感覚を抱えながら,

  教室でボーっとしていると、

  いつもの馴染みのある顔が

  亜夢流の視界に入ってきた。



 「お前、最近、どうしたんだよ?

  何かに目覚めたのか?

  サッカー部に入ってほしいって

  顧問がいってたぜ」

 雄二が不思議そうな

 表情で、亜夢流のところにやってきた。

「別に何もないよ、

 ただ、たまたま今、幸運が巡ってきてる

 だけで、サッカーも得意なわけじゃないし、

 部活には入る気もないよ」

 亜夢流は無表情でさらっと答えた。

「そうなのか…

 何もないのに、成績もよくなって、

 スポーツもできるようになるなんて

 いいよなぁ…

 俺なんて、母ちゃんに怒られっぱなしだよ。

 何で、あんたはこんなに取り柄がないのかって、

 勉強でもしなさいって」


 「雄二がゲームばっかりしてるからじゃな    

  い?」
 
 亜夢流が冷たく、言い返すと、

 雄二がアムルの肩を両腕で勢いよく、つかんだ。


「なんか、あるんだろう?

 スピリチュアル的な…幸運が掴めるものとか

 やったんじゃないのか?

 やったなら、教えてくれよ…

 勉強嫌いで、困ってるんだよー」


 潤んだ瞳で、必死に他力本願で

 自分の問題を解決しようとする

 友人に若干、ひきながら、雄二よりも

 強い力で腕を払い、席を立った。


「勉強すれば、いい話だろう?

 雄二はいつも、人に頼んでばっかだな。

 スピリチュアル的なものはないよ

 じゃあ、僕は帰るから」

「そんな、冷たいなぁ。

 じゃあ、宿題手伝ってくれよお」

「ごめん、忙しいから、またな」

 宿題も人に手伝わせようとする

 お願いモード全開の友人のルカ

 手を払い、逃げるように急足で

 亜夢流は教室を出た。

 雄二はお願いを断られ、がっくり肩を

 おろして、床に座り込んでいたが、

 亜夢流はスルーして、直様、家に向かった。


 脳裏にあの老人との出来事が

 フラッシュバックしていた。


 もしかして、あのしおりが原因なのか。


 だから、成績がよくなったり、

 運動能力が上がったりしているのだろうか。

 自問自答しながら、あのしおりをとにかく、

 手に取らなければと思い、家に急いだ。

 
 家に帰る早々、部屋に直行し、

 机の引き出しの鍵を開け、

 あのしおりを取り出した。

 
 白い普通の厚紙のようなしおりだと

 記憶していたが、今はピカピカ光っていて、

 大きさも少し、前より大きくなって

 いるように見えた。

 
 これは普通のしおりじゃない。

 
 亜夢流がしおりを手にとり、しばらくすると、

 そのしおりは自ら、光を発しながら、

 亜夢流の手からすり抜け、

 ぷかぷかと宙に浮き始めた。

 
 亜夢流は驚きながら、手につかもうとするも

 その度に、しおりは生きているかのように、

 自由自在に動き、亜夢流から逃げる。

 
 そのやりとりが続いたところで、

 急に、しおりが高く飛び始め、

 アムルの頭上まできたところで、

 止まった。


 『アムル、聞こえるか?』

 しおりが亜夢流がいる方向をぐるっと向き、

 そこから声質のいい男の人の声が聞こえてきた。


 亜夢流はびっくりして、しおりと

 向かい合わせになり、耳を疑うが、

 間違いなく、そのしおりから声が

 聞こえているようだった。

 
 『アムル、よく聞いてくれ!

 君は賢者に選ばれた。

 今からこの世界から抜け出し、

 与えられた使命を全うしてほしい。

 私の言っていること分かるか?」

  
 「わ、わかりません。

  本のしおりから声が聞こえてくるなんて。


  いったい、あなたは誰なんですか」

 
  亜夢流は頭が混乱し、いったい、

 この声の主が何を言っているのかも

 分からず、使命とは何のことやらと

 一つ、一つ、意味を把握しようとしたが、

 理解はできず、その声の主に率直な疑問を

 投げかけた。


 『いきなり,言われても困るよな。

  私はコンデマソールという

  魔法の国からやってきた案内役だ。

  名はキルダだ。

  この使命に的確な人物、探し出し、

  賢者をこの国に案内するのが、

  私の仕事だ』

  
  「コンデマソール?

   魔法の国?
   
   賢者って、意味がわからない。

   どういうことですか?
   
   僕は魔法なんて使えない、

   普通の人間ですよ!」


 『ははは、最初はみんな、混乱するんたよ。

 大丈夫だ、私が案内するから。

 まず、目を閉じてくれ。

 今から、別世界に連れて行くよ』


 「えっ、今からって、僕は夕食の準備と

  宿題が…」
 
 亜夢流が抵抗する暇もなく、

 しおりから、激しい光と暴風が、

 亜夢流に襲いかかり,そのまま、

 ピカピカ光るしおりの中に

 吸い込まれていった。








 




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