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街角の占い師

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 俺の名前は斉藤丈瑠35歳。会社で嫌なことがあってムシャクシャしてる最中だ!

「ったくよ?あの課長!事あるごとに俺をサンドバッグにしやがって!」

「本当だよな!自分のミスも俺達に流してきやがる!」

 愚痴に応えてくれたのは、一年後輩の宮内隆29歳。21歳の嫁をもらった新婚だ!爆ぜろ!

「それによ!いくら社内は自由だからって、草鞋はないよな?」

 服装髪型自由が社風だが、そこはTPOを考えて皆行動してるんだが、うちの部署の課長は膝丈の短パンにアロハシャツで、足元はシルクの帯で作った草鞋を愛用していた。

「水虫だからか?」

「だとしても、急な来客であれが出て行ったら・・・なぁ?」

「・・・先輩が休んでる時にそれ・・・僕が対応しました。先方場目が点になってて、再起動まで時間がかかったのと、その後の商談がメチャクチャでしたよ」

 すでに起こっていたのか・・・クッソ!「誰かアイツにでもかけてくれないかな!」

「先輩?それ細やかだけど、地味に来る呪いじゃないですか・・・って、何叫んでるんですか!」

 ついな

「それ面白いね?いいよ?」

 二人だけのはずの路地裏で三人目の声が聞こえた

「誰だ?」

 目を凝らして見ると、少し先に男が座っていて

「占い師?」

 足元に立て看板が見えたが、こんな路地裏で商売できんのか?

「それで、どうします?相手の持ち物・・・名刺でも大丈夫ですよ?さっきの内容だったら・・・そこの居酒屋の1時間飲み放題で手を打てますが?」

 ・・・やっす!でもまぁ、その程度なら・・・話半分飲みのネタで面白いな

「OK!支払いは後が良いか?それとも、今から一緒に飲むか?」

「先輩!その人知り合いですか?」

「いや?初対面に決まってるだろ?」

「・・・」

「じゃあ飲むか!」

「おー!」

 そして異質な飲み会が始まり・・・

「しぇんぱい!かちょーがうまくいったらボクものっかってもいーでふか?」

 ・・・あっという間だったな

「あはは。その時はよろしく!報酬はそのの度合い次第だから。それと、相手の事が分かる物が深ければ深い程、より確実だから」

「なら、今回は名刺だから・・・薄目かな?」


 そんな飲み会の翌週・・・

⦅ドガっ!⦆

「痛え!誰だ!こんな所になんざ置きやがったのは!」

「「「「箪笥?」」」」

 見れば事務所内の通路に骨董と言っても良いくらいの厳かな箪笥が・・・

「昨日までなかったよな?」
「それ以前に、朝もなかったよ?」
「むしろ・・・が立ち上がるまで無かったよ?」

「「「・・・?」」」

 その様子を外回りから戻ってきた俺と宮内は

「先輩・・・あれってまさか」

「あぁ、だが、までセットで出てくるんだな。てっきり箪笥的なロッカーとかの角で打つと思ってたんだが・・・こわいな」

「名刺の認識でこれなら・・・匂い付きの愛用品だったら・4・」

 恐ろしい結果しか見えてこないな

 そして箪笥は・・・

「「「「「消えた?」」」」」

 みんなが見てる目の前で、スーッと消えて・・・

「・・・本物だな」

「ですね・・・(よしっ、準備するぞ!)」


 後日・・・

『ニュースをお伝えします。
 本日未明、都内に住む29歳の男性と、21歳の女性の変死体が発見されました。遺体には目立った外傷はなく・・・』

「宮内夫婦の歳と重なるな?しかもあの映像のマンションって・・・」

 いや、そんなはずは

「えー宮内君だが、家庭の事情でしばらく休むことになった。引き継ぎが行われてない案件については、周囲の者と協力してあたってくれ」

 家庭の事情?何も聞いてないぞ!?

「課長!宮内はいつ頃復帰できるんですか?」

 同じ部署のやつがそう聞くが、はっきりとした答えが返ってこない

 しばらくは業務に差し障りがあったが、次第に・・・宮内がいないことにも慣れてきた頃・・・

「おや、また会いましたね」

 居酒屋で一人で飲んでいると、以前出会った占い師とバッタリ・・・

「久しぶりだな!そうそう、あんたの言った通り、課長が職場で箪笥の角に小指ぶつけて・・・さ・・・なぁ?あの時俺と一緒にいた奴の事覚えてるか?」

「えっと・・・宮内さんでしたか?」

 違和感・・・

「ん?アイツ名乗ったか?」

「あぁ、数日後にいらっしゃったんですよ。なんでも奥様の素行調査の結果次第で・・・おっと、これ以上は顧客情報でしたね」

「ちょっとまて!・・・今宮内の奴、行方不明状態なんだ。詳しい事が知りたい!あんたの迷惑にならない程度で構わないから、教えてくれ!対価が必要なら言ってくれ!」

 手がかりはもうここしか残ってないんだ

「・・・仕方がないですね。それじゃぁ・・・この店の年間飲み放題パスで手を打ちましょう。あぁ、一年で十分ですよ」

 一日一回二時間迄。店休日以外・・・なかなかに高いが・・・支払えない額じゃない

「OKだ。早速・・・って、本人確認が必要な奴だったな・・・前金が好ましいだろうから、今日の会計に追加してもらおう。と言っても、結局は話を聞いた後になっちまうが・・・構わないか?」

 個人情報・・・顧客情報・・・とても大事な物なんだが・・・

「貴方は信用できる・・・と思うから、今回は事後で構いませんよ。
 さてそれじゃぁどこから・・・」







「それじゃぁ、パスありがとうね。と言っても、正当な報酬だから・・・ありがとうってのもおかしな・・・それでも、ありがとうね~」

 占い師はしこたま飲んだはずなのに軽い足取りで路地の闇に消えていった・・・
 しかし・・・そんなことよりも・・・今聞いた話はどこまでが本当なんだろうか・・・いっそ全部夢で・・・いや・・・
 占い師が語った内容とは、宮内が課長の呪いの結果を知った数日後に彼の元を訪れ、奥さんが浮気をしている節があり、探偵に調査を依頼していて、内容次第で復讐したいと・・・その対価は・・・本人の寿・・・それでよくOKだしたな・・・結果・・・え?寿命の半分って?

「・・・忘れよう・・・これは悪夢だ・・・」

 一時の悪夢だ・・・寝て・・・起きれば・・・またいつもの日常が訪れる・・・そうしてまた・・・






「人とは業が深い・・・」

 占い師は想う・・・

「結局対価として寿命をもらったが・・・使い道がないんだよな・・・それこそ彼からもらった年間パスの方がどんだけ有用か・・・」

 彼の願いは

【奥さんが自分から一生離れられないように!】
 
「呪いなんてものに定型なんてないんだよ・・・どこで誰が介入してどうねじ曲がるか誰にもわからないんだ・・・結果・・・二人の人間が溶け合って混ざり合って・・・それでも生きてはいたけど、その状況に心が保たなくて・・・発狂死・・・そして彼も、寿命が58歳・・・定年前に亡くなる運命だったとはいえ、半分にしたら・・・ほぼ即死だよね・・・警察も検察も・・・遺体検分も大変だよね・・・細胞レベルで溶け合って混ざってるわけだし・・・変死体とはよく言ったものだ」

 実際、その現場を直視した警察や管理人、検死担当者は揃って・・・消し去れないトラウマを植え込まれてしまっていた

「さて、この力・・・対価さえ払えば・・・今も降ってるこの雨を・・・『えい!』・・・今のは対価でもらった寿命を一年分使ったけど・・・晴れ間が見えるね・・・でも所詮は一年分・・・ほら、すぐに雨が・・・君の寿命は大切にさせてもらっておくよ」

 占い師・・・呪術師は路地裏に消えていく・・・強大な力を持ちながら・・・自由気ままに自分勝手な生き物人間の相手をしながら・・・


~~~~~~~~~~

こんな感じで不定期投稿していきます
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