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入場証明

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「すまなかったorz」
「ごめんなさいorz」

 巨人‘sの土下座から始まったボクの目覚めは・・・まだ兵士の詰所の中だった

「えっと?何が起こったのか記憶が曖昧なので説明していただけると助かるんですけど」

「えっと、それは私がキミのタリスマンを見ているときに、その特徴的な意匠に思い当たる物があって、それを思い出した瞬間に立ち上がっちゃって・・・その・・・キミの首にかかっていた皮の紐が思いの外丈夫で・・・そして意識が途絶えて、この仮眠室で休んでもらっていたの」

 なるほど・・・おのれめ・・・まさか身長差に引導を渡されそうになるとは思いもよらなかったぞ

「それとキミの身分はミリアが思い出したタリスマンで証明されたから、年齢も街への入場も可能だ。何なら今日はこのままここで休んで、明日改めて街に入っても構わないが・・・その・・・ベッドが硬いのがな・・・」

 そう・・・この仮眠室のベッドは硬いのだ・・・それこそ孤児院のベッドと同じくらいに・・・

「ダメですよ隊長!こんな硬いベッドに寝かせたら、成長する身長も成長を止めてしまいますよ!」

 そうだそうだ!・・・って悲しくなるね

「そうは言ってもな・・・この時間から宿屋を探すにしても・・・何処もいっぱいだと思うぞ?」

「わかってます。なので私の家で」

「それこそダメだろ・・・なら俺の家で・・・」

「娘さん大丈夫ですか?」

「うっ・・・」

 そういえばこの人さっき自分の娘が十歳で身長が・・・って言ってたな

「娘と同い年なら話し相手にもなるだろうし・・・そろそろを促すのも・・・という訳で、引継ぎと残務は終わっているな。ミリアは罰としてこのまま夜勤に突入して、明日の朝の俺と交代だ!」

「えぇぇぇぇ!?酷い!横暴だ!モラハラだ!」

「マテ!どこがモラハラなんだ!?」

「( ゚д゚)・・・顔?」

「・・・よ~し、よ~~く分かった。ミリアは今からフル装備で夜勤な。その間座ることも許可しない。いいな?」

「:(;゙゚'ω゚'):マジ?」

「よし。そういえば名前まだ聞いてなかったな?」

「そうですね。ボクは『モーリア』と言います。よろしくお願いします」

「俺は『イボール』だ。まぁ、職業柄『隊長』で通ってるから、それでも構わんぞ。じゃぁ行くか」

 後ろからミリアさんの泣き叫ぶ声が聞こえるが、同時にカチャカチャと音も聞こえるので、隊長の指示通り、重装備に換装しているんだろう・・・南無

 そして街の中に入ったボクは・・・その大きさと人の多さに驚き、軽く目眩を

「ハハハ。驚いただろ?ミリアから聞いた限りだと人口数十人の小さな村から来たんだろ?まずは人混みに慣れろ・・・とは言っても難しいだろうから、出歩く時間帯を覚える方がいいな」

 朝と昼と夕方から夜の間は、人が多いが、それ以外の時間だと特定の場所以外は割と人が少ないということも教えてもらった。

「俺の家はもう少し先の・・・あそこだ」

 そう言って指差した方角にあったのは、三階建ての立派な家で、門には門番が・・・あれ?門番の家に門番が???

「・・・モーリアの考えてることはわかるぞ。の家にって思ってるんだろ?あくまで今日は門番をしていたが、普段はこの街の兵士を取り纏める隊長職なんだ。門番の隊長でなく、全兵士の隊長なんだよ」

 そう話してる間に門に近づき

「「お疲れ様です!」」

 門番に挨拶されたイボールさんは

「お疲れ!この子はモーリアと言って今日は我が家の客人だ。今後も訪ねてくることがあるかもしれないから、覚えておくように」

「「ハッ!」」((しかし小さいな))

 ボソッと言ったんだろうけど、聞こえてるからな!

「とりあえずは寝床・・・の前に飯か。好き嫌いはあるか?」

 いやいや、客人として招かれておいて、好き嫌いを言うなんて失礼なことは・・・

「生肉と石のように硬い黒パン以外はなんでも食べれます!」

 遠慮せずにそう答えると

「・・・そうか・・・強く生きろよ・・・」

 なんて同情されて・・・涙ぐんでいた。そして門から家までの少しの間を歩いて室内に入ると

「帰ったぞ!モリスはいるか!」

「毎度のことながら・・・そのような大きな声をなさらずとも、旦那様の背後に居ますよ」

 そう言った白髪の老紳士はイボールさんの背後に立ち、首筋に手刀を当てていた。こえぇよ!何この暗殺者!

「お前もな・・・家長の背後に立つ使用人がいてどうするんだよ!
 その少年はモーリアと言って、【鉄拳】が認めた子だぞ」

 鉄拳?

「・・・まさか・・・【鮮血】ですか?」

 鮮血?って院長先生の二つ名【鮮血の巫女】かな?有名人なの?

「それにモーリアの腰の得物の意匠と、革鎧見てみろよ」

 マントからチラッと見える長剣と革鎧?をチラッと見た老人紳士は、糸のような目をカッと見開き

「・・・こ、これは・・・」

「見ますか?」

 そう言って腰の剣帯から外して老紳士に差し出そうとすると

「いけません。たとえどのような場面で、どのような相手でもそう簡単に自らの武器を相手に差し出すのは、ダメです」

 さすがに油断しきってるな・・・注意が必要か・・・そう考えていると奥から

「お父様?お帰りになったんですか?」

 鈴が転がるような可愛らしい声が聞こえて、その方向を見れば・・・

「おぉ!カシュー!帰ったぞ!」

 あれが噂の隊長の娘さんか・・・スラッとしててカッコ可愛いな・・・あれで同い年・・・ますます自信がすり減っていくな・・・

「お父様?そちらの子供は?まさか・・・攫ってきたのですか?」

 ・・・それが父親に対する声か!
 イボールさんが何か言う前にこちらから

「今朝門に着いたんですけど、ちょっとした出来事があって、今日の宿がないところをイボールさんに誘われて一晩の軒先を借りにきました。ボクの名前は『モーリア』です」

 あえて最後に年齢を伝えてみた

「・・・?十歳?てっきりお父様が何処からか私の為に弟を攫ってきたのかとヒヤヒヤしました。
 私はイボールの娘『カシュー』と言います。どうぞよろしくね」

 その声と容姿からは想像できない毒を呼吸をするように吐く・・・でも嫌いじゃないな・・・

「さぁ、食事の準備(お父様の分で良いですよね?)もできてますので、ご一緒しませんか?」

 そう言ってカシューはボクの手を取り奥へといざなう・・・そして玄関に取り残された家長と老紳士

「「・・・ハッ!」」

 そして食堂では二組の暖かい食事が湯気を立てており

「さぁ食べましょう?」

 違和感を感じつつも席につき、食事を始めようとすると

「マテマテマテ!モーリア!そこは俺の席な!?お前の分は今から用意するから!カシューも、勝手に話を進めるんじゃない!なんだよ!自分のために弟を攫ってきたって・・・そんな怖い設定・・・何処で覚えたんだ!?」

 一気に捲し立ててハァハァしているイボール

「ぁ、食事は大丈夫です」

 そう断って腰鞄から取り出したのはツノ兎の串肉だ。焼きたてのような湯気をたて、野生的な香りが室内を襲う

「・・・お父様?随分と食欲を唆る香りがしますが・・・あれは?」

「今鞄から出したよな?それでこの暴力的な香り・・・【鉄拳】絡みならありうるのか?モーリア?その串肉の素材はなんだ?」

「え?ただのツノ兎ですよ?」

「・・・兎?兎にツノはないぞ?」

 一般的に動物に無くて魔物にあるもの・・・その代表的なものがだ(と知ったのは、後日冒険者登録後の説明の時)

「え?じゃぁこれは何なんですか?」

 肉と皮。骨と内臓は使い道がないと判断したので、穴に埋めて埋葬とした。本も攻撃に使ってたことから、硬いと判断したのでツノは取ってある

「そのツノは・・・明日にでも冒険者ギルドで換金してもらえ。それとその串肉・・・余分があるなら少し分けてもらえないか?どうにも我慢が・・・」

 そう言ったイボールさんだが、それ以上にカシュー・・・十歳の女の子が口から涎を溢れさせて、物欲しそうに指をしゃぶりながらこっちを見るんじゃありません!
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