５歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか？--

旅館

　先日まで滞在していたホテルと言う場所は、豪華で豪勢で・・・普段の王城での生活とさほど変わりはなかったが、食やそれ以外で数々の発見や面白みがあって楽しかった。しかしこちらの旅館というものは、それらと打って変わって物静かな・・・落ち着く・・・最初こそ素っ気ない建物や部屋に若干の残念さを感じていたが、静かな・・・心落ち着かせて周囲を感じる余裕が出てくると、これはこれで・・・

「虫の声？風の音？心落ち着かせるとこれほどに自然の音が聞こえてくるものなのだな・・・」

　それとこの部屋着・・・浴衣と申していたな・・・着方等、新鮮で、最初こそ心ともなかったが、逆にその脆さを醸し出す衣服のおかげで、静かに動けて・・・

「あなた・・・流石にこの姿は恥ずかしいのですが」

　妻の所作も・・・グッとくる！

そんな女性陣の感想をわかっているのか、食事は各部屋に運ばれてくるようだ

「お食事をお持ちしました。準備致します」

　そういって従業員が数名部屋に入ってきて、テーブルの配置を変更したり、料理を運び込んできた。最初の驚きを与えてくれるかのように、今回も四角い大きな箱が人数分・・・

「それでは失礼します」

　そう言って箱を開けると、中からは小さな小皿に小分けにされた色とりどりの・・・それぞれの量はさほど多くはないが、なんと言っても色鮮やかで、目を楽しませてくれる

「どうぞ、まずはご自由にお楽しみください。疑問の際は、私がご説明させていただきます」

　ホテルでは肉や魚が多かったが、こちらは・・・どうにも野菜系がメインのようだ。子供たちは普段からあまり野菜系を食べず、少々困っていたのだが・・・

「とうさま！このおやさいすごくおいしいです！」

　息子は気に入ってくれたようだ。娘の方も、最初は野菜を避けて他のものに手を伸ばしていたが、それらが無くなるのと、普段の姿を知る弟の食べる姿に触発され、食べてみると顔を輝かせ・・・あれもこれもと・・・おっと、私も食べないとな・・・ふむ・・・普段食べる野菜は、生サラダがメインだったがこのように味の染み込んだものもあるのだな・・・刺身にも驚かされたが、これらの技法も是非学びたいものだ

「これらの野菜料理はとても味が染み込んでいるが、何か特殊な調理方法なのか
？」

「いいえ？それらは普通に味付けをした物です。調理法が気になるようでしたら、明日にでも料理場へご案内いたしますが？」

「それは嬉しい限りだが、よろしいのか？」

「何がですか？」

　説明役の女性が不思議そうにこちらをみている

「この島独自の料理法とかであれば、それ相応の対価を支払う準備はあるが・・・」

　王国料理長の技術は門外不出。例え弟子であってもおいそれと知る事はできない

「料理は市井に広まってこそのもの。秘匿する意味がわからないのですが？」

　真理か・・・