文バレ！②

逸話 小野家と山ノ内家

タテ兄

　山ノ内家の中間子に当たる、タテ兄こと山ノ内盾はトラブルメーカーだ。山ノ内眼鏡店は家族経営だが、彼は手伝わない。いつもどこかに出かけている、もしくは部屋にこもっている。学歴もはちゃめちゃだ。高校進学の際、陶芸家になりたいなどと言い出して専修高校に行った。だがどうも途中で気が変わったらしく中退。その数日後「家出するぞい！」と書き置きを残し失踪、と思いきや「東京に着いたぞい」と電話してくる。どこぞかの落語家に弟子入りしていた。だが一年で諦めて戻ってきた。数日引きこもって求人誌を見ていたと思いきや、高校時代の友人と突如コンビを結成して漫才をやりだす。だが三日で飽きて、同じやつとバンドやりだす。方向性の違いで三日で解散。そいつと三日坊主を十種類くらいくり返した挙句、なんかのエキストラ事務所に登録。とりあえず、タテ兄はいつだって、何かしらクリエイティブなことをしている。いつも珍妙なプリントシャツを着ていて、それらのおさがりが俺とソウルに回ってくる。「マトよ、勇者の服を授けよう」とか言って渡してくる。ポーカーフェイスで。自由人を絵にかいたようなタテ兄のことが、俺はわりと好きだ。常識に縛られない。そんなタテ兄に、長男のケン兄はかなり困らされているけれど……。