文バレ!①

宇野片み緒

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第四章 忍者たちとの邂逅

「絶対に勝つ」countdown『1』

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「唄唄い高校にお気をつけて」
 冬のある夜、居間で復習をしているとミカエルから携帯に電話が入った。聖コトバとも何度か練習試合をしていて、一応連絡先の交換をしているくらいには親睦があるのだ。金銭感覚とかが違いすぎるせいで、そこから普段も遊ぶ友人に発展したりはないのだが。
「唄唄い高校?」
「ええ。東京にある、芸能専修高校でございます。ご存知でしょう、あの派手な……」
 去年は一回戦であっけなく負けていた高校だ。私服校らしく、体操服ではなくチームTシャツみたいなのを着ていたのを覚えている。それがものすごい蛍光色で記憶に残ったのだ。だが戦い方も目立った点はなく、服装以外は本当にごく普通の、むしろ弱小校に見えた。
「そこが、全国にスパイを放っているのです」
 ミカエルがそう続けたので、はあ? と大きく首をかしげてしまった。曰く、黒づくめの怪しい人が全国各地の体育館付近をうろついていて、何やら記録を付けているそうだ。事件性があるかもしれないので、聖コトバと関わりのある情報機関が念のため何者かを調べたところ、唄唄い高校の文芸バレーボール部員たちだったらしい。黒づくめの彼らがうろつきだしたのは、この一月に入ってからだという。戦略を決定する時期を狙ってのことか。
「見学させてくださいとかって言ってくるのか?」
「まさか。君は見学を申し出てきたライバルの前で、易々と戦法や弱点を明かしますか?」
「しないな」
「そうでしょう。ですから彼らは、物陰に潜んで勝手に盗み見るのですよ」
 ミカエルは重ねて「お気をつけて」と言った。
「いや、わりとこっちの台詞なんだが。弱点狙われないように気を付けろよ」
「おや、僕のチームに弱点があると仰いますか?」
 心当たりがないというように神々しい声が返る。下ネタ無理じゃねえかお前ら。
 その唄唄い高校とやらも気がかりになったが、いよいよ目前にせまったニチセイとの練習試合が今は気になる。そして、その後の全国大会。各々、全力で取り組んできた。文法などの基礎知識で分からないところは、国語便覧に載っている内ではもうない、はずだ。
 俺は両親の影響か、昔の偉人の名言ってジャンルにはもともと詳しかった。父は旅行代理店勤務のためいろんな土地の歴史をよく学ぶ。母は単純に、名言集とかをすぐ買ってしまうロマンチストだ。漢文についてはあまり復習しなくてもちゃんと頭に入っていた。
 ただ厄介なのは、ニチセイが必ず文法で挑んでくるとは限らないことである。あえて裏をかくかもしれない。対策として敵の得意分野を完璧にしておくのは絶対に正解だ。だがしかし、そこだけを完璧にしたらいいわけではない。学ばなければいけないことは山ほどあった。
 日本再生大学付属高等学校というエリート校が、待ち受けている。
 やれるだけのことは、もうやった。いざ尋常に、国語。
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