24 / 26
第四章 忍者たちとの邂逅
「絶対に勝つ」countdown『1』
しおりを挟む
「唄唄い高校にお気をつけて」
冬のある夜、居間で復習をしているとミカエルから携帯に電話が入った。聖コトバとも何度か練習試合をしていて、一応連絡先の交換をしているくらいには親睦があるのだ。金銭感覚とかが違いすぎるせいで、そこから普段も遊ぶ友人に発展したりはないのだが。
「唄唄い高校?」
「ええ。東京にある、芸能専修高校でございます。ご存知でしょう、あの派手な……」
去年は一回戦であっけなく負けていた高校だ。私服校らしく、体操服ではなくチームTシャツみたいなのを着ていたのを覚えている。それがものすごい蛍光色で記憶に残ったのだ。だが戦い方も目立った点はなく、服装以外は本当にごく普通の、むしろ弱小校に見えた。
「そこが、全国にスパイを放っているのです」
ミカエルがそう続けたので、はあ? と大きく首をかしげてしまった。曰く、黒づくめの怪しい人が全国各地の体育館付近をうろついていて、何やら記録を付けているそうだ。事件性があるかもしれないので、聖コトバと関わりのある情報機関が念のため何者かを調べたところ、唄唄い高校の文芸バレーボール部員たちだったらしい。黒づくめの彼らがうろつきだしたのは、この一月に入ってからだという。戦略を決定する時期を狙ってのことか。
「見学させてくださいとかって言ってくるのか?」
「まさか。君は見学を申し出てきたライバルの前で、易々と戦法や弱点を明かしますか?」
「しないな」
「そうでしょう。ですから彼らは、物陰に潜んで勝手に盗み見るのですよ」
ミカエルは重ねて「お気をつけて」と言った。
「いや、わりとこっちの台詞なんだが。弱点狙われないように気を付けろよ」
「おや、僕のチームに弱点があると仰いますか?」
心当たりがないというように神々しい声が返る。下ネタ無理じゃねえかお前ら。
その唄唄い高校とやらも気がかりになったが、いよいよ目前にせまったニチセイとの練習試合が今は気になる。そして、その後の全国大会。各々、全力で取り組んできた。文法などの基礎知識で分からないところは、国語便覧に載っている内ではもうない、はずだ。
俺は両親の影響か、昔の偉人の名言ってジャンルにはもともと詳しかった。父は旅行代理店勤務のためいろんな土地の歴史をよく学ぶ。母は単純に、名言集とかをすぐ買ってしまうロマンチストだ。漢文についてはあまり復習しなくてもちゃんと頭に入っていた。
ただ厄介なのは、ニチセイが必ず文法で挑んでくるとは限らないことである。あえて裏をかくかもしれない。対策として敵の得意分野を完璧にしておくのは絶対に正解だ。だがしかし、そこだけを完璧にしたらいいわけではない。学ばなければいけないことは山ほどあった。
日本再生大学付属高等学校というエリート校が、待ち受けている。
やれるだけのことは、もうやった。いざ尋常に、国語。
冬のある夜、居間で復習をしているとミカエルから携帯に電話が入った。聖コトバとも何度か練習試合をしていて、一応連絡先の交換をしているくらいには親睦があるのだ。金銭感覚とかが違いすぎるせいで、そこから普段も遊ぶ友人に発展したりはないのだが。
「唄唄い高校?」
「ええ。東京にある、芸能専修高校でございます。ご存知でしょう、あの派手な……」
去年は一回戦であっけなく負けていた高校だ。私服校らしく、体操服ではなくチームTシャツみたいなのを着ていたのを覚えている。それがものすごい蛍光色で記憶に残ったのだ。だが戦い方も目立った点はなく、服装以外は本当にごく普通の、むしろ弱小校に見えた。
「そこが、全国にスパイを放っているのです」
ミカエルがそう続けたので、はあ? と大きく首をかしげてしまった。曰く、黒づくめの怪しい人が全国各地の体育館付近をうろついていて、何やら記録を付けているそうだ。事件性があるかもしれないので、聖コトバと関わりのある情報機関が念のため何者かを調べたところ、唄唄い高校の文芸バレーボール部員たちだったらしい。黒づくめの彼らがうろつきだしたのは、この一月に入ってからだという。戦略を決定する時期を狙ってのことか。
「見学させてくださいとかって言ってくるのか?」
「まさか。君は見学を申し出てきたライバルの前で、易々と戦法や弱点を明かしますか?」
「しないな」
「そうでしょう。ですから彼らは、物陰に潜んで勝手に盗み見るのですよ」
ミカエルは重ねて「お気をつけて」と言った。
「いや、わりとこっちの台詞なんだが。弱点狙われないように気を付けろよ」
「おや、僕のチームに弱点があると仰いますか?」
心当たりがないというように神々しい声が返る。下ネタ無理じゃねえかお前ら。
その唄唄い高校とやらも気がかりになったが、いよいよ目前にせまったニチセイとの練習試合が今は気になる。そして、その後の全国大会。各々、全力で取り組んできた。文法などの基礎知識で分からないところは、国語便覧に載っている内ではもうない、はずだ。
俺は両親の影響か、昔の偉人の名言ってジャンルにはもともと詳しかった。父は旅行代理店勤務のためいろんな土地の歴史をよく学ぶ。母は単純に、名言集とかをすぐ買ってしまうロマンチストだ。漢文についてはあまり復習しなくてもちゃんと頭に入っていた。
ただ厄介なのは、ニチセイが必ず文法で挑んでくるとは限らないことである。あえて裏をかくかもしれない。対策として敵の得意分野を完璧にしておくのは絶対に正解だ。だがしかし、そこだけを完璧にしたらいいわけではない。学ばなければいけないことは山ほどあった。
日本再生大学付属高等学校というエリート校が、待ち受けている。
やれるだけのことは、もうやった。いざ尋常に、国語。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
田中天狼のシリアスな日常
朽縄咲良
青春
とある県の平凡な県立高校「東総倉高等学校」に通う、名前以外は平凡な少年が、個性的な人間たちに翻弄され、振り回され続ける学園コメディ!
彼は、ごくごく平凡な男子高校生である。…名前を除けば。
田中天狼と書いてタナカシリウス、それが彼の名前。
この奇妙な名前のせいで、今までの人生に余計な気苦労が耐えなかった彼は、せめて、高校生になったら、平凡で平和な日常を送りたいとするのだが、高校入学後の初動に失敗。
ぼっちとなってしまった彼に話しかけてきたのは、春夏秋冬水と名乗る、一人の少女だった。
そして彼らは、二年生の矢的杏途龍、そして撫子という変人……もとい、独特な先輩達に、珍しい名を持つ者たちが集まる「奇名部」という部活への起ち上げを誘われるのだった……。
・表紙画像は、紅蓮のたまり醤油様から頂きました!
・小説家になろうにて投稿したものと同じです。
貧乳姉と巨乳な妹
加山大静
青春
気さくな性格で誰からも好かれるが、貧乳の姉
引っ込み思案で内気だが、巨乳な妹
そして一般的(?)な男子高校生な主人公とその周りの人々とおりなすラブ15%コメディー80%その他5%のラブコメもどき・・・
この作品は小説家になろうにも掲載しています。
土俵の華〜女子相撲譚〜
葉月空
青春
土俵の華は女子相撲を題材にした青春群像劇です。
相撲が好きな美月が女子大相撲の横綱になるまでの物語
でも美月は体が弱く母親には相撲を辞める様に言われるが美月は母の反対を押し切ってまで相撲を続けてる。何故、彼女は母親の意見を押し切ってまで相撲も続けるのか
そして、美月は横綱になれるのか?
ご意見や感想もお待ちしております。
放課後はネットで待ち合わせ
星名柚花(恋愛小説大賞参加中)
青春
【カクヨム×魔法のiらんどコンテスト特別賞受賞作】
高校入学を控えた前日、山科萌はいつものメンバーとオンラインゲームで遊んでいた。
何気なく「明日入学式だ」と言ったことから、ゲーム友達「ルビー」も同じ高校に通うことが判明。
翌日、萌はルビーと出会う。
女性アバターを使っていたルビーの正体は、ゲーム好きな美少年だった。
彼から女子避けのために「彼女のふりをしてほしい」と頼まれた萌。
初めはただのフリだったけれど、だんだん彼のことが気になるようになり…?
ファンファーレ!
ほしのことば
青春
♡完結まで毎日投稿♡
高校2年生の初夏、ユキは余命1年だと申告された。思えば、今まで「なんとなく」で生きてきた人生。延命治療も勧められたが、ユキは治療はせず、残りの人生を全力で生きることを決意した。
友情・恋愛・行事・学業…。
今まで適当にこなしてきただけの毎日を全力で過ごすことで、ユキの「生」に関する気持ちは段々と動いていく。
主人公のユキの心情を軸に、ユキが全力で生きることで起きる周りの心情の変化も描く。
誰もが感じたことのある青春時代の悩みや感動が、きっとあなたの心に寄り添う作品。
C-LOVERS
佑佳
青春
前半は群像的ラブコメ調子のドタバタ劇。
後半に行くほど赤面不可避の恋愛ストーリーになっていきますので、その濃淡をご期待くださいますと嬉しいです。
(各話2700字平均)
♧あらすじ♧
キザでクールでスタイリッシュな道化師パフォーマー、YOSSY the CLOWN。
世界を笑顔で満たすという野望を果たすため、今日も世界の片隅でパフォーマンスを始める。
そんなYOSSY the CLOWNに憧れを抱くは、服部若菜という女性。
生まれてこのかた上手く笑えたことのない彼女は、たった一度だけ、YOSSY the CLOWNの芸でナチュラルに笑えたという。
「YOSSY the CLOWNに憧れてます、弟子にしてください!」
そうして頭を下げるも煙に巻かれ、なぜか古びた探偵事務所を紹介された服部若菜。
そこで出逢ったのは、胡散臭いタバコ臭いヒョロガリ探偵・柳田良二。
YOSSY the CLOWNに弟子入りする術を知っているとかなんだとか。
柳田探偵の傍で、服部若菜が得られるものは何か──?
一方YOSSY the CLOWNも、各所で運命的な出逢いをする。
彼らのキラリと光る才に惹かれ、そのうちに孤高を気取っていたYOSSY the CLOWNの心が柔和されていき──。
コンプレックスにまみれた六人の男女のヒューマンドラマ。
マイナスとマイナスを足してプラスに変えるは、YOSSY the CLOWNの魔法?!
いやいや、YOSSY the CLOWNのみならずかも?
恋愛も家族愛もクスッと笑いも絆や涙までてんこ盛り。
佑佳最愛の代表的物語、Returned U NOW!
おてんばプロレスの女神たち ~男子で、女子大生で、女子プロレスラーのジュリーという生き方~
ちひろ
青春
おてんば女子大学初の“男子の女子大生”ジュリー。憧れの大学生活では想定外のジレンマを抱えながらも、涼子先輩が立ち上げた女子プロレスごっこ団体・おてんばプロレスで開花し、地元のプロレスファン(特にオッさん連中!)をとりこに。青春派プロレスノベル「おてんばプロレスの女神たち」のアナザーストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる