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prologue
しおりを挟む二千百十一年。
国語力と体力が著しく衰えた現代っ子たちを更生すべく、
日本再生協会は立ち上がった。
全国各地の高校に新設されたその部活の名は、
文芸バレーボール部!
って急に言われても、は? って思うよな。とりあえず、「十頁だけ読んでごらんなさい。十頁読んで飽いたらこの本を捨ててくださって宜しい」。なんて遠藤周作を引用しだすあたり、我ながらかなり文バレ部員らしいと思う。(とか言うとさらに、は? だな)
あ、名前を言ってなかった! 俺はこの物語の主人公、小野マトペだ。変わった名前と思われるだろうが本名。新古今高校の二年生で、この春から文芸バレーボール部のキャプテンをやってる。まあ俺や文バレの話は後にして、まず、日本再生協会のことから説明しよう。
日本再生協会とは、作家・評論家・国語教師・文学研究者などの文芸に携わる者が中心となって、二千八十四年に立ち上げられた大規模なプロジェクト組織のことである。かつての日本文化全てを取り戻すことを最終目標にしていると聞く。会員数は、幽霊会員も多そうだが今で百十六名いるらしく、俺たちの顧問である古井寿限無先生も所属している。収入のほとんどは会員の給料とはせず、日本再生の投資金にしているという。よってこの組織に所属する者は、基本的に別の仕事と掛け持ちしているエリートなのだ。主な活動は、文学史や一般常識、日本の伝統に関する書物の制作と出版。あとは国語力向上のセミナーや、伝統工芸体験のイベントを開催するなど様々だ。無料の電子雑誌を配信する活動も行っている。内容は文芸に関するコラムの他、読み物や占い、ニュースなど。
そして二千九十年、なんと協会は政府と手を組み、日本再生大学なるものを設立した。国内一の難関と言える文系大学である。続いて二千九十四年には、日本再生大学付属高等学校を設立。留まらない勢いで、そのまま彼らは血迷ったか、二千九十六年ついに、文芸バレーボールを提唱した。この球技の内容を簡単に言うと、文学に関するワードを叫びながらバレーボールをするという一聞アホみたいなものだ。でも協会も選手も大真面目である。
さらに協会は二千百年に、公式ルールブックを出版。二千百十一年には日本全国の高校、全三百五校に訴えかけ、内五十校が文芸バレーボール部を設立した。
そうだ。全三百五校。全国に高校は今や、たった三百五校しか存在しないのだ。桁を間違えたわけではない。三百五。現実である。勉強を全くしない子供と、それを甘やかす親が異常に増えて中卒が基本となってしまった昨今、高校数の減少が著しいのだ。大学数なんて百に満たない。しかし文芸バレーボールを提唱してから、少しずつだか進学率が上がってきているという。満を持して日本再生協会は二千百十二年三月に、第一回高校文芸バレーボール部全国大会を開催した。そして同年七月現在、協会の会員は変わらず、国語力の維持と向上に全力をかけて、日本を再生しようとしてくれている。これはそんな日本再生協会の下で文芸バレーボールに青春を捧げた、文系高校生たちの戦いの記録である!
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