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2巻
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しおりを挟む1 引っ越しを考える
リキオーはユシュト村の自宅の庭で、大きな鍋を使って木の皮を煮込んでいた。
しばらくすると木の繊維質がぐずぐずになる。それを取り出し、糊と混ぜて紙漉きをはじめる。
漉く、薄く延ばす、乾かすなどの工程を経て、ようやく紙らしきものができた。しかし、その品質は良いとはいえない。現代日本で手に入るような真っ白い紙ではなく、色が付いて表面はでこぼこしているのだ。
まあ、自分で使う分には気楽に扱えるのでちょうどいい。メモ帳代わりにはなるだろう。
そう考えて、リキオーは紙漉きをひと休みする。そして、リキオーのすることを不思議そうに見ていたアネッテに目をやった。
アネッテはエルフの精霊術士でリキオーのパーティ「銀狼団」の一員。人攫いに捕らわれていたところを助けて以来、ともに生活するようになった。ちなみに銀狼団には、あと一匹メンバーがいるのだが、おそらく近くで遊んでいるんだろう。この場にはいなかった。
リキオーがアネッテに話しかける。
「うーん、もう一人、パーティに誘おうかな」
急な提案に驚いたアネッテが、思わず大きな声を上げる。
「えっ! 急に、な、なんですか?」
「いや、アネッテがドジ踏んで襲われそうになることって多いだろ」
リキオーがいじわるなことを言う。
「……そうですね」
涙目で棒読みの返事をするアネッテに、リキオーが説明する。
「パーティ構成として回復役がアネッテ、遊撃役がハヤテと俺。そうなると盾役がいないんだ」
盾役とは敵の攻撃を一手に引き受け、他の仲間を守る役目のことである。基本的なパーティには必須の役割といえるが、銀狼団にはいなかった。
「つまり盾役の人を入れるってことですか?」
無言で頷くリキオー。それを受けてアネッテが言葉を継ぐ。
「となると、ギルドで募集するんですよね。盾役なので男の人なんでしょうか?」
「そうだなあ……」
当初、リキオーは王都の冒険者ギルドでパーティ募集をかけたほうが安上がりだろうと思っていたが、彼には彼なりの問題がある。
例えば、パーティメンバーのステータスを底上げできるという能力が他に漏れたらヤバイだろう。また、生活魔法を攻撃魔法のように使えることや様々な金儲けのタネなど、この世界の人に知られればいろいろ面倒なことが多い。
こうしたことを考えると新メンバーは奴隷のほうがいい。奴隷と結ぶ魔導契約では主が従者に口止めを強要することができ、情報が漏れてしまう危険性を拭い去ることができるからだ。
それに奴隷ならやはり女がいいだろう。男なんて見ていて楽しくない。
「いや、女で騎士か剣士だな。そのほうが楽しいし。っていうか他の男にアネッテにちょっかい出されたりしたら困るからな」
「またマスターのエッチの犠牲者が増えるんですね」
そう言ってジト目で睨むアネッテ。
「そういうことだな、フフッ」
「そこは否定してくださいっ」
顔を赤らめて、すかさずツッコミを入れるアネッテに、リキオーは不敵な笑みを返す。
そこへハヤテが走ってきた。すかさずリキオーは彼を捕まえて抱きかかえる。
リキオーがハヤテのもふもふとした毛を撫でまわすと、ハヤテは「はふはふ」と気持ちよさそうに息を吐き出して体を弛緩させた。
そんな仔狼を横目に、リキオーはぼんやりと部屋のなかを見回す。
(この村は居心地がいい反面、王都から遠く、物流が致命的に悪いんだよな)
リキオーは面倒くさがり屋で引き篭もりがちな傾向がある一方、飽きっぽい性格でもあった。
(生活の拠点を、王都にも便がいいイストバル辺りにでも移すかな)
しかしながら、リキオーが引っ越しを考えるに至ったのは、物流の悪さだけが理由ではない。
ハヤテの体が、犬で言えば成犬ほどの大きさまで成長しており、家が手狭に感じるようになってきた。
また、そもそも今の家は商家のボンボンの隠れ家として建てられたもので、スペース的にも広く造られているわけではない。そんな窮屈さも現代日本の自分の部屋みたいで好きだったのだが。
そんなことを考えながら、アネッテに声をかける。
彼女は、リキオーがハヤテをもふもふして遊んでいる間に、洗濯をしに部屋の奥へと引っ込んでいた。
「そういえば、アネッテ、ちょっと相談があるんだけどさ」
「はい、なんですか」
洗濯の手を休めてメインフロアへと歩いてくるアネッテ。
ちなみに洗濯は、昔懐かしいタライで手揉みするという方法がとられていた。アネッテも以前は冷たい水で洗っていたのだが、リキオーが風呂を考案したお陰で、温かい残り湯を利用することができるようになった。
それでも屈んでゴシゴシするのは腰に来るだろう。そう心配したリキオーはアネッテのために簡単な洗濯機を造ってあげた。
大きなボックスのなかに石鹸水を入れて、備え付けのペダルを踏むとなかの水がぐるぐる回るという簡単なつくりであったが、それでもアネッテには感激された。
さすがにここまで簡単なつくりでは売れるとは思えない。しかし、ポンプや風呂など現代日本では当たり前のものを造っただけで大ブームになってしまう世界である。
もしかしたらこの簡易の洗濯機もブームになる可能性はあるかもしれない。
それはさておき、彼のもとまでやってきたアネッテに尋ねる。
「じつは生活の拠点を移そうと思うんだ。これはまだ思いついただけなんだが。どう思う?」
「私はマスターが行くところにどこでも付いていきますよ。マスターは冒険者だし、一つのところに縛られる必要はないんじゃないでしょうか」
「じゃ、そうしようか」
「どこに住むかは決めてあるんですか?」
「今の時点ではイストバルかな。フェル湖のある」
「ああ! あのきれいな湖のところですね」
イストバルは、商業ギルドの招待で行った王都からユシュト村に里帰りしたときに通りかかった。そのためアネッテももちろん知っていた。
しかしイストバルまで行くとなると面倒なことがある。
冒険者は、財布が許すかぎりどこへ行くのも基本的に自由だが、関所を通るには「鑑札」という、地方領主やギルドから認められていることを示す通行許可証が必要となる。そして、この鑑札を得るための手続きが煩わしい。
しかし関所を通るには裏ワザがある。冒険者ギルドで関所の先にある場所で発生したクエストを受注すれば簡単に通してもらえるのだ。
というわけで、リキオーは冒険者ギルドへ向かうことにした。
ついでに商業ギルドへ行き、紙漉きで作った紙を見せてもいいかもしれない。じつは試作としていろいろ色を付けてみたものもあるのだ。こんなものでも、大量生産できれば身近で使える紙が増えて便利だろう。
「冒険者ギルドに行ってくるよ」
「はい、行ってらっしゃい、マスター」
アネッテに声をかけて、リキオーは家を出た。
通りを進んで広場に出る。
広場には銭湯があり、風呂の客目当ての商売人たちによってちょっとした市が立っていた。そういう雑多な雰囲気が好きだとリキオーは思った。
冒険者ギルドに到着し、観音開きになっているドアを開ける。
受付カウンターには午後担当の受付嬢リティナがいた。彼女はリキオーの顔を見つけると色っぽいウィンクをしてくる。
「はぁい、リキオーくん、なにか探しものかしら」
「王都方面に行く討伐行はないですか。あとじつは、討伐に行くついでに引っ越そうかと思っているんですよ」
「やぁん、残念だわ。でも仕方がないわね。ここらへん田舎だもんねぇ」
リティナはわかるわかるといったふうに頷く。
「それにランクCともなるとこの辺りの獲物じゃ物足りなくなるものね。やっぱり一旗揚げるには王都よねぇ」
「のんびりした雰囲気は好きだったんですけど、いかんせん買い物がね……。装備とか揃えようにも物がないし……」
「それでどこに行こうと思ってるの?」
「イストバルにしようかと思っています。村の名前に『バル』が付いているので都会でしょうし、王都にも近いですしね」
「バル」は、「祝福された土地」という意味の接尾語である。地名に「バル」の付く地域は領主によって管理されており、他の村より格段に栄えた地方都市となっている。
「いいわよねぇ、フェル湖でしょう。湖畔に建つ家なんて素敵よね」
ああ、そうか! とリキオーのテンションが上がった。利便性のことばかり考えていたが、そういう向きも期待できると気づかされたのだ。
「ん~と、そうなるとこれかしら」
リティナがカウンターから出て、ミニスカートから覗く大胆な美脚をくねらせる。そうして色気を振りまきながら掲示板から紹介書を取り上げた。カウンターに掴まってそれをリキオーに差し出す。
チューブトップに包まれた大きなバストがユサユサと弾んでいる。髪を掻きあげて微笑む仕草がとても艶っぽく、すべすべの腋の下もきれいだ。傍に立つリキオーはむっちりとした太ももを堪能した。
ギルド一階のカフェテリアに集う客たちも、その色香に引き寄せられてフリーズしている。
(ああ、たまらないなあ)
渡された紹介書に目を落としながらも、ついつい横目でリティナの素晴らしい美脚とボリュームのある胸元をチラ見してしまう。
こればっかりは逆らえない。男の性というやつだ。
煩悩に振り回されながらも、探していた条件に見合うクエストを発見する。
「お、これいいですね。募集がドルトン村ならイストバルの隣村だし」
案件は、近郊の森に出るホブゴブリンの討伐と調査。要求ランクはCなので、移動ついでに、アネッテやハヤテのレベル上げもできそうだ。
リティナにクエストを受注する旨を告げると、彼女は手早く手続きを進めてくれた。
「はい、決まりね。ウフッ、ランクCとしては初めての仕事になるわ。リキオーくんのことだから問題ないと思うけどよろしくね」
「わかりました。出発するときまた挨拶に来ますね」
ギルドの色っぽいおねーさんともお別れかと思い、ちょっぴり寂しくなるリキオーであった。このクエストのほかに道中にこなせそうな軽めのクエストをいくつか受注すると、冒険者ギルドを出て商業ギルドへ向かった。
建物の入り口で、ちょうど出かけようとしていた商業ギルド支店長、ラースに出くわした。ラースがリキオーに気づいて声をかけてくる。
「おや、リキオー様。今日はどうかなさいましたか」
「うん、じつは引っ越そうかと思っててね、その報告。と、紙について話をしようと思って来ました」
紙についてと聞いて突然ラースは目の色を変える。
「おお、これは一大事ですな。少々お待ちを。これエーリカ。この荷物を領主様のところへお届けしておくれ。私はこちらのお客様のお相手をせねばならんのでな」
「はいにゃ」
エーリカと呼ばれていたのは猫人族の女の子である。彼女はラースから荷物を受け取ると、目を細めてリキオーにぺこりと頭を下げた。そして、先っぽだけが白いしっぽをくねらせながら出て行った。
すぐにラースはリキオーを室内へと案内する。
「さて、失礼しました。こちらへどうぞ」
通された応接セットにリキオーが腰をかけるとラースは口早に切り出した。
「先ほどお引っ越しなさるとおっしゃっていましたが、転居先はすでに決まっておりますか?」
「イストバルを考えています」
「おお。あそこは眺めが素晴らしいですからな。わかりました。こちらからも鑑札を出しておきましょう。また向こうの支部にも連絡しておきますので、何かありましたらそちらへよろしくお願いします。それと……紙でしたな」
「はい、こんな感じです」
さっそくリキオーはサンプルとして用意しておいた色付きの紙を取り出した。キレイに裁断してあるものとわざと手作り感を残したもの。そして手近な材料で漂白したものまである。
ラースが目を見開き、感嘆の声を上げる。
「おお、これは実用に耐えられそうな出来ですね。色の差も面白い」
「色は材料の違いですね。元々、手間のかかるようなものでもないのですよ。そのあたりはこちらの資料にまとめてありますので」
そう言ってリキオーは紙の束をラースに手渡す。その資料も彼が紙漉きで作った紙でできている。
「材料さえあれば簡単にできますから、家庭でも作れます。また、紙は物書きの足しにできるだけでなく、教会で勉強をしているお子さんなどにも役立つと思います」
教会では子どもたちを集めて学校を運営していたが、紙不足は深刻な問題であった。もし安く大量の紙が提供されるようになれば、その状況も変わるだろう。
また紙漉きを上手く運用できれば、新たな産業を生み出すこともできるかもしれない。例えばポンプを造るといったことは高い技術が要求されるため熟練した職人にしかできないが、紙漉きならばコツさえつかめば誰でもできる。もし仕事がなくあぶれている者がいれば、そうした者たちにとって現金収入の手段の一つにもなるかもしれない。
「それはいい考えですな。フフ、リキオー様は、我ら残る者にさえこうした福音を授けてくださる。ありがたいことです」
それからリキオーは、ラースと家の明け渡しなどについての手続きを済ませ、商業者ギルドをあとにするのだった。
商業ギルドからの帰り道。リキオーが村の景色を眺めながら歩いていると、ものものしい雰囲気の漂う人だかりに出くわした。どうやら喧騒の中心にとあるパーティがいるらしい。
リキオーは群衆のなかにまぎれ込むと、その中心を眺めてみた。
いかにも高そうな防具を身につけた男を先頭に、ただならぬオーラをまとったパーティが歩を進めると、そのたびごとに人の波がザアッと分かれていく。
そのように派手な装いをする者たちといえばトップランカーの冒険者に違いない。
ランクSの冒険者ともなれば有名人である。宿屋の料金は依頼者持ちでタダ、地方領主からは夜の晩餐会に招かれる、そんな特権階級と言える存在だ。
パーティ構成は、剣士、双剣士、重戦士、法術士、賢者。それぞれが装備している武器や防具のグレードの高さは、武具に精通していない者にさえ容易にわかるほどであった。
「……ムッ?」
先頭を歩いていた派手な黒と朱の文様入りの鎧を身につけた剣士が一瞬視線を向けた。
その方向にいたのはリキオーである。
「こらッ、アル! 素人さんを怖がらせちゃダメっ! 聞いてるの?」
彼の背後にいた女性法術士が咎める。彼が群衆を睨んだと思ったようだ。しかし、同じパーティメンバーである賢者は、剣士が関心を向けた先に何かを感じ取っていた。
「今の男……アルブレヒトが注意を向けるとは何かあるのだろうな。念のため探りを入れておきましょうか……」
彼の名はタルコットと言う。彼は、群衆のなかにひそませておいたスパイに向けて目配せをすると、リーダーたちの後を追いかけていった。
ユシュトにある一番高い宿。
ここは今、ある有名なパーティが定宿にしていることで知られていた。
そこにやってきたのはひとりの男。
彼が、カウンターでグラスを磨いていたマスターに何事か話しかけると、マスターは頷き、階段の上のほうを示して顎でしゃくった。
男は階段を上り、何かの符牒を示すように一定のリズムをとって静かにドアを叩いた。
そうしながら彼は部屋に入ることなく、ドアの下から手紙を滑りこませる。
部屋のなかにはタルコットがいた。手にした手紙を見ると指示を書き込んでドアの下から返す。
それを受け取った男は返事も見ずに宿を出て行った。
「はてさて。この時期なら……」
タルコットは、各地の有力者の動向を把握していた。
毎年この時期にイストバル領主の娘が、叔母の家を見舞いに出るという情報を掴んでいたし、領主の継母がその娘を疎んじていることも……。
しばらく彼は難しい顔をしていたが、何かを閃いたように悪い顔をして口元に笑みを浮かべた。そうして部屋の奥でじっと佇んだままの男に話しかける。
「アルブレヒト。どうやら面白いことが起こりそうですよ」
アルブレヒトは彼を見向きもせず、背にした大剣の柄を握りしめていた。
***
話は少し遡る。
ランクSの冒険者パーティ「ガルム武闘団」は王都にいた。
ランクSともなると冒険者ギルドからの依頼では動かない。彼らを動かすのは、近衛情報部からの依頼、もしくは王室からの直接要請である。
ガルム武闘団の賢者タルコットは近衛からの呼び出しで、パーティを離れて王室に縁のある貴族の館にいた。
彼が招かれた部屋は塗り固められた壁で覆われており、誰も聞き耳を立てたりできない造りになっている。
そこには、タルコットのほかに前髪を垂らした甘いマスクの男がいた。近衛の団長付き士官である。その男が、前髪を掻き上げながらタルコットに話しはじめる。
「タルコットさん、今回の依頼ですが、ある人物を監視して、できることならその実力を確かめて欲しいというものなんです」
「ほう? 近衛が動くとなれば、それ相当の人物なのでしょうな」
「いえ、単なる冒険者ですよ」
タルコットはピクッと眉を顰めた。
目の前の人物は、自分がガルム武闘団の交渉役と知っているはずだ。そして自分たちのリーダーが食指を動かすような相手でないとガルム武闘団が動かないことも知っているはず。単なる冒険者の調査であれば冒険者ギルドで事足りるはずなのだが……。
タルコットがそう思案していると、男は表情を変えずに淡々と言い放つ。
「私からはこれ以上の情報はありません。でもあなた方のリーダーがその冒険者のことを知れば食いついてくるでしょう。それは保証しますよ」
そんな謎の言葉を残して男は去っていった。
そして、それはもうしばらくして現実のものとなる。
2 騒動に巻き込まれる
ユシュトの屋敷を引き払ったあと、リキオーたちはあらかじめ冒険者ギルドで受注していた魔物退治のクエストを消化しつつ、イストバル方面へと進んでいた。
馬車でウェスバル、サバラという途中の村を経由して進み、ドルトンというイストバル直前の村で一夜を過ごしたあと、ここからは歩きでイストバルへ向かうことになった。
急いでいないのでクエストを精力的に消化していく。ハヤテは地面を駆けるのが楽しいらしく、リキオーたちの先を走っていた。
「ハヤテさあ、ダッシュのスキルあるんだよね」
「そうなんですか。すごく速そうですね」
他愛のない話をアネッテとしながら歩いていく。とくに内容のない話だったが、それでも彼女はリキオーの言葉に熱心に相槌を打っていた。
「ハヤテはどんだけ大きくなるんだろうね。アネッテを乗せられるくらいになったら楽しそうなんだけど」
「そうなったらいいですね」
「今度住むことになっているイストバルの家は結構広いみたいなんだ。ハヤテも伸び伸びできるといいな」
ちなみに徒歩で移動していると野盗に出会う確率がぐんと上がる。街道筋といっても人気のない森のなかにいくらでも潜むことはできるのだ。そのため、のんびりと歩いていてもリキオーは最低限の警戒は怠っていなかった。
彼らが歩いている街道筋は、舗装がされているわけではない。ただ獣道より上等という程度の田舎道だ。結構アップダウンもあるので、馬車で通ると尻が痛くなりそうな道である。
先ほどからリキオーはとりとめのない話を続けている。
「そういえばさ、インベントリって使ってる?」
「使ってませんね。見えないものを触る感じが慣れなくて」
アネッテと話しながら歩いてきたが、そろそろ会話のネタも尽きてきた頃合いだ。そもそも丸一日歩いているのである。まあ、途中で野宿してもいいと思っているが。
「歩き疲れたら言ってね」
「大丈夫です。エルフは森のあるところでは元気なんですよ」
改めてアネッテを見てみると、言葉に違わず本当に元気そうだ。リキオーには元から体力増幅効果がかかっているので歩き続けても疲れない。ハヤテに至っては疲れるどころか楽しそうだ。
「この辺りにも、精霊樹ってあるの?」
アネッテの元気の秘訣は、精霊樹のおかげではないかと思ったので尋ねてみた。
ウェスバル西方に広がる大森林「隠れじの森」にはエルフの里があり、その中央には巨大な精霊樹がある。
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