6番目のセフレだけど一生分の思い出ができたからもう充分

SKYTRICK

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1巻

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《質問》
【ID 非公開さん】
 恋愛に関して質問があります。アドバイスをご教示いただければ幸いです。


 ずっと昔から幼馴染おさななじみに恋をしています。
 その人は自分とは不釣り合いの憧れの存在で、子供の頃から好きな相手でした。
 幸いにもその人と体の関係を結ぶことができました。
 しかしセックスが終わると、すぐに解散です。いわゆるセフレという関係らしいです。
 どうしたら自然に、恋人になれるでしょうか?

(1人が共感しています)


《回答》
【ID kkk************さん】
 残念ながら脈なしです(笑)
 男はセックス脳なので、ヤることがゴールです。
 その過程で告白やデートや恋人になるなど段階があるのに、あなたは最終目的を最初に与えてしまったのです。
 もう既にゴールに達しているのに、ここからわざわざ面倒な過程を経てデートなど恋人らしいことなんてしてくれません。
 金も時間もかかるし、男にとっては面倒でしょう。
 厳しい意見でしたらすみません(笑)
 このまま都合の良い存在のセフレとしてやっていくのも良いですが、諦めるなり離れるなりしたほうが吉かと思われますw



   第一章 森良幸平もりよしこうへい 二十歳


 小学校低学年の頃についた渾名あだなは『ごぼひら』だった。理由はヒョロくて肌が白いからだ。幸平は知らなかったけれど、ごぼうというのは、皮を剥ぐと中が白いらしい。ごぼうと言えばきんぴらごぼう。それから派生して、幸平は『ごぼひら』と呼ばれた。
 あれは夏休み明けだった。長期休暇が終わり皆もストレスが溜まっていたのか、放課後に公園にいると体の大きなクラスメイト達がやってきて、『ごぼひらの皮剥ごうぜー』と公衆トイレの裏で服を脱がされかけた。薄暗い草陰で、幸平は恐怖で動くことができない。そこに差し込んだ光は、隣の家に住む親友の溝口陽太みぞぐちようただった。
 陽太は、贅肉ぜいにくを着ていると言ったほうが正しいほど体の大きな中田なかたに飛び蹴りを入れ、若い牡鹿おじかのように綺麗に着地する。目の前に中田が転がっている。呆然とする幸平に、陽太は言った。

「コウちゃん、今日はサッカーすんだろっ」

 陰気でクラスでも端っこにいる幸平に比べて、陽太は顔もかっこいいし運動もできるし、皆に人気な存在だった。
 でも陽太は友達でいてくれる。幸平は「うん」と頷いて立ち上がった。
 幸平は給食着を振り回し、中田の仲間達に突撃する。一人の顔に当てると、そいつは尻餅をつく。陽太は「ナイスヒット!」と笑った。二人で六人相手に必死で挑んだ。結果的に再起した中田に押し潰されてしまったが、不思議と心は晴れやかだった。
 その後、幸平と陽太は擦り傷だらけの足を構うことなく、日が暮れるまでサッカーボールを蹴って遊んだ。
 黙ってじっとしていた幸平の反撃がよほど予想外だったのか、それ以降中田達に絡まれることはなくなり、幸平は地味ながらも平穏に学校生活を過ごした。
 あの夕刻に見た、真っ赤な空は本当に綺麗で、忘れられない。
 しかし十年以上経った今、この話をしても誰も信じてくれない。幸平が反撃したことに関してではなく、皆、口を揃えて『溝口陽太さんは喧嘩に手こずる男じゃないだろ』と言うのだ。
 幸平も陽太も二十歳になった。幸平の膝や肩は擦り傷もすっかり治って綺麗なままだが、陽太は違う。小学校までは遊んでいたけれど、中学の半ばから陽太に話しかけても無視されるようになった。さらには学校を休みがちになり、高校に上がる頃には肩から腕にタトゥーが彫られていた。
 肩のタトゥーと、たくさん開いたピアス。そして数々の悪い噂。それらが『溝口陽太』を創るようになる。
 きっと私服校だからだろう、陽太は偶然にも幸平と同じ高校を選んでいて、二人はまたしても同級生になった。しかしクラスの隅にいる幸平にとって、陽太はとてつもなく遠い存在だった。
 校内で溝口陽太を知らない者はいなかった。黒髪の癖毛に隠れる耳にはたくさんのピアスが開いている。陽太が校外でつるむのは、ほとんどは大人だ。
 だが、陽太はそうやって恐れられていたけれど、決して嫌われているわけではなかった。
 悪い噂の反面、陽太は常ににこやかだった。男女問わず優しく接して、声を荒らげたり怒ったりはしない。何よりも誰もが見惚みとれるほどの美人だった。だから皆に恐れられながらも、憧れを抱かれる。陽太の周りには、学年も性別も選ばず、いつも人が絶えなかった。
 常に関係のある女の子が五人いた。一時期はサッカーチームが組めるほどの数だと噂されていた。皆納得の上で陽太の周りにいたが、彼女達は実際には恋人ではなく『セフレ』であり、その界隈は大奥と呼ばれていた。
 片や庶民の幸平は、そのきらびやかな世界を見上げるしかない。ただの一般人で、友達は三人だけ。
 多くを従え多くに好かれる陽太は、幸平が幼馴染おさななじみだったことを覚えているだろうか。一緒にサッカーをして遊んだこと。日が昇る前の明け方に話し込んだこと。毎日のように放課後集まったこと。
 幸平はただの一般人だけど、王様みたいな陽太に憧れ続けている。
 それは幸平が、子供の頃から陽太を好きだから。しかも、性愛も含む恋だと自覚しているからだ。
 高校を卒業してしまえば、陽太と話す機会はおそらく二度とない。
 王様に長年懸想けそうする一般国民は、とうとう卒業式に決意する。
 ならば最後に一度だけ、自分の秘めた恋を伝えるのだ、と。
 そうして幸平は卒業式の日、渾身の勇気を振り絞り、陽太へ長年の片思いを打ち明けた。

「――陽太君。俺、ずっと陽太君のことが好きだった」

 少し肌寒い日だった。まさかもう親しくもない男の幼馴染おさななじみから告白されると思わなかったのか、陽太はかなりの時間黙り込んでいた。それは幸平も同じで、緊張で硬直した体の自由が戻った時、ようやくきびすを返してその場を去ろうとした。
 しかし引き止めたのは陽太だった。そして彼は言った。

「俺とシたいって意味で?」

 あの時のやり取りの記憶は曖昧あいまいだが、結果的に、陽太と関係を持つことができた。
 幸平は『幼馴染おさななじみだった親しくない同級生の一人』から、『六人目のセフレ』に昇格したのだ。
 卒業したらもう二度と会えないと涙ぐんだ日も多かった。しかしそれから一年半の間、陽太と関係を持ち続けることができた。だが――

「……諦めるのが吉、かぁ」

 幸平の頭の中は、目の前を過ぎ去った光景と、あの残酷な回答文章でかき乱されている。乱されて荒らされて、息も吐けないほどに苦しい。雨が降る十一月の一晩中、傘もささずに立ちすくんでいたせいで寒い。でも、先ほど去っていった男女は雨に濡れない。彼らは傘の下で身を寄せ合っていた。
 陽太と綺麗な女性は、この明け方、陽太の部屋から出るとどこかへ歩いていった。
 昨晩、彼は幸平との待ち合わせに来なかった。あの女性といたのだから当然だ。最後にもう一度告白しようと思ったけれど、幸平にはその機会すら与えられなかったらしい。

「……うん」

 幸平は携帯を取り出した。ネットに投稿された質問文と回答が、暗がりに慣れた目に眩しすぎる。強烈な光に涙がにじみ出るのを自覚しながら、幸平は心の中で返信を思い浮かべてみる。
 ――はい、諦めます。でも、一生分の思い出ができたので充分です。
 十二年前に出会った陽太への長年の片思いが、冷たい雨に打たれて終わりを迎えたのだった。


    ◇


 昔はもっと友達が少なくて、小学校の頃に幸平と遊んでくれたのは近くに住んでいた陽太くらいだった。だが、二十歳ともなると子供の頃よりは親しい友達もいる。大学では、高校から友達だった谷田たにたと、バイト仲間でもあった時川ときかわとよく話す。だから最低二人はいる。つまり、いないわけじゃない。

「幸平は友達がいないだろ」

 だが幸平の隣に座る谷田は、容赦なく言い放った。幸平は箸を持ったまま固まりパチパチと瞬きをする。夏休みが明けた十月初めの学生食堂は騒がしく、このテーブルの会話など誰も気にしていない。

「え……俺、友達いない?」

 幸平が騒音に掻き消されそうな声で呟くと、谷田は焦燥を顔ににじませ、言い訳のように「いないっていうか、少ないっていうか。変な話だよな。幸平はすげぇ良い奴なのに」と付け足してくる。

「地味だけど良い奴なのに。世界が間違ってるんだな。少ないってなんだよ。何言ってんだ」

 谷田は自分で提起した問題に自分で文句を入れている。幸平が落ち込んだと思ったのか、彼は自分の茶髪を指でいじって、「この世界はおかしいな」と言った。実際、幸平に友達が少ないのは事実だから、気にしていない。今の谷田のほうがよっぽど幸平の友達事情を気にしている。

「えっと、なんつうか、友達少ない幸平の家から、俺ら以外の誰かが出てくるなんて変だと思ったって、それを言いたかったわけ」
「谷田君、それは失礼じゃないか?」

 朗らかに言ったのは目の前に座る時川だ。時川は呆れたように首を傾げた。彼の茶髪が揺れる。
 時川は同じ経済学部の二年で、講義や昼食をよく共にしている。今日は時川と学食に来ていたのだが、時川の眼鏡がラーメンの湯気で曇るのを眺めていたら、突然幸平の隣に谷田が座ってきたのだ。
 大学ではこの三人でよく過ごしている。温和な性格の時川はいつも爽やかに笑っており、今も「ほら、幸平君も微妙な顔してる」と綺麗に微笑んでいる。谷田は眉尻を下げて、「幸平、怒ったか?」と心配そうにした。高校の頃は谷田も幸平と同じ黒髪だったが、今は茶髪で雰囲気も垢抜けている。

「怒ってないよ。でも、谷田に何を心配されてるのか、よく分からない」
「いや。だって、さ。あれってさ……お、俺の見間違いじゃなかったらなんだけど」

 なんだろう……谷田の深刻な表情を見て嫌な予感がした。すると谷田は一度口をつぐむ。唾を飲み込み、幸平の危惧したとおり本題を突きつけてきた。

「一昨日、お前の部屋に来てたの、溝口……陽太さんだったよな」

 谷田は緊張した面持ちでその名を告げた。まるで名前を言ってはいけないあの人の話題を出すように、声が強張こわばっている。いや、声だけでなく表情も。
 なんと返したらいいのか、いつも思う。とっさのことに自分は、まるで対処できない。
 幸平の部屋から陽太が出てきた瞬間を、偶然にも谷田に見られていたらしい。でもそれが起こる可能性はゼロでない。町にゾンビが蔓延はびこる光景や隕石が降ってくる妄想はよくしていたのに、どうして自分と陽太が共にいる瞬間を見られる想像ができなかったのだろう。
 谷田は高校時代からの友人ではあるが、陽太との関係を話したことはない。今、初めて言及されたのだ。誤魔化ごまかしようがなかったし、何を誤魔化ごまかせばいいのか分からない。幼馴染おさななじみという事実か、それとは別の関係があることか。予告のない事態に対応するのが苦手な幸平はすっかり閉口する。

「――そうですよ」

 代わりに答えたのは、またしても唐突にやってきた人物だった。
 視界に彼の黒髪が入る。彼は時川の隣の席に腰を下ろし、ほんのりと笑みを唇に乗せて幸平を眺めてくる。いきなり登場するので驚いて見ていると、谷田が言った。

「ムロ君、また来たのかよ。チッ。いつもキラキラした顔してんな……同級生に友達いねぇの?」

 後輩の室井むろいは「いますよ。幸平先輩と違って」とにこやかに返した。谷田がすかさず「おい! 言われてっぞ幸平!」と自分を棚に上げる。
 室井は経済学部の後輩であり、中高時代からの後輩でもある。大学生になっても、たびたびこうして絡んでくる。どちらかと言うと、高校時代の室井は、幸平ではなく陽太を『陽太さん』と呼んで親しんでいたから、陽太に関して詳しい。だからなのか、彼はあっけらかんと言い放った。

「だって幸平先輩、陽太さんと付き合ってますもんね」

「はっ!?」谷田が目を見開く。
「意外だな」時川はさらりとした茶髪を揺らして顎を引いた。

「そりゃ家にも行きますよ。やることやってんだから」
「こ、恋人ではないよ」

 これ以上黙っていたらダメだ。幸平は、まだまだ何か言おうとする室井を遮った。
 すると数秒の沈黙が流れた。自分でもわかっている。あ、言葉を間違えた、と。あまりにも突然だったので返答を吟味できなかったのだ。谷田がもともといかつい顔をさらに引き締めて呟いた。

「まるで恋人ではないけど、そういう関係はあるみたいな言い方だよな」
「へー、意外でした。幸平先輩って、陽太さんのこと好きなのかと思ったから」

 その言葉に谷田はまた硬直する。室井は笑っているけれど、鋭い眼差しで幸平をじっと見つめ、唇の端を上げた。

「……あーあ、幸平先輩。ちょろいですね。すぐ動揺しちゃうんだ」
「ちょ、おいおい幸平。お前誤魔化ごまかしが下手すぎる」

 今更ではあるが「付き合ってるとかじゃない」と幸平は呟く。谷田はため息と共に頷いた。

「わかったから。でもさ、お前、反応が明らかだって。溝口さんのこと好きなのか?」

 陽太のことはこの場にいる全員が知っている。それも別々の立場から。
 谷田は陽太と高校の同級生だったし、時川にとってはバイト先で何度か見かけたことのある『美の圧が強い客』。室井は陽太のグループに属していて、仲の良い後輩だった。陽太に向けていた親しみの込めた笑顔を、今、幸平へ向けている。

「恋人じゃないなんて意外でした。そういう関係なのに」

 どうして『関係』を知っているんだろう……。幸平の脳裏をよぎるのは、高校時代に見た二人の光景だ。
 室井が楽しそうに陽太へ語りかけ、陽太も何か返している。その二人の様子を見て女子達が遠巻きに騒いでいた。残影を心に封じ込めて、幸平は口を開いた。

「……それ、陽太君から聞いた?」

 谷田は目を見開いて、「陽太君!?」と驚愕した。室井は幸平の質問には返さず、谷田へ告げる。

「陽太さんと幸平先輩って幼馴染おさななじみなんですよ」
「そうなのか!? だって高校ん時、お前ら一度も喋ってなかったのに。あの溝口陽太……溝口さん、と幼馴染おさななじみ?」

 さん、か、と幸平は心の中で苦笑する。
 こうして言い直すのは谷田だけではない。陽太を『溝口さん』と呼ぶ同級生は大勢いた。むしろそれが大半で、陽太と親しい一部の生徒達だけが、フラットに彼の名を呼ぶことを許されている。先輩達だってそうだ。年上の権利を振りかざして陽太と気軽に接する人などいなかった。
 陽太が過度に恐れられていたのは、異質だったからだと幸平は思う。二人が通っていた高校は進学校で校則のない私服校だった。勉強ばかりしていた幸平があの学校へ入学したのは進学校だったから。陽太の理由はきっと、校則のない私服校だったからだ。あの学校なら肩や腕に彫られたタトゥーを隠しやすいし、耳の妙なところにピアスが開いていたってとがめられない。
 高校には他に陽太のような生徒はいなかったし、その容姿も影響して周りとは一線を画していた。陽太の放つ雰囲気は尋常でなく、高校時代の谷田も『溝口さんとすれ違ったんだけど、まじでちびるかと思った。威圧が強すぎる。イケメンヤンキー、とかのレベルじゃない』と語っていた。
 確かに陽太は子供の頃から綺麗な少年だったが、成長すると背は百八十センチを越え、スタイルも良く、抜きん出た美貌を持っていた。癖毛の黒髪が白い肌によく映えて、通りすぎたあと誰しも振り返る。
 でも、陽太が恐れられるのは見た目のせいだけでない。一年の頃、彼は暴行事件を起こしかけた、らしい。幸平は内情をよく知らないが、陽太が同じクラスの男子を失禁させたのだ。
 実際には暴力なんて振るっていない。けれど陽太は男子生徒の発言に激怒し、その怒りに触れた男子生徒があまりの恐怖で失禁したらしい。あの場に居合わせた数人の生徒の伝聞がすぐさま校内中に広まったおかげで、陽太への畏怖いふに拍車がかかった。

「溝口さんと幼馴染おさななじみって、どうして教えてくれなかったんだよ」

 谷田は恐る恐る問う。その声は恐怖と驚きだけでない感情をはらんでいる。
 これは陽太を語る者が共通して見せる特徴の一つだ。陽太は恐れられているだけでない。谷田が今見せたように、憧れを抱かれていたのだ。
 そんな谷田と対照的に、幸平は単調に答えた。

「高校ではそんなに接点なかったから。それに幼馴染おさななじみっていっても、中学からは話してなかったし」
「やっぱ二人でいたことないよな? だって、違いすぎるだろ。幸平と溝口さんが幼馴染おさななじみって……想像つかねえ。どっちかっつうと、ムロ君と溝口さんのほうが一緒にいたイメージなんだけど」
「そうですか?」

 室井はにっこりと小首を傾げて、その黒髪が揺れた。その瞬間、幸平は、室井のにこやかな笑顔がわずかに暗く濁ったような気がした。再度話し出した時にはもう消えている。本当に一瞬だった。

「中学の途中までは二人いつも一緒にいましたよね。その時、幼馴染おさななじみだって聞いたから」
「俺が言ったんだっけ?」
「陽太さんから聞いたんですよ」

 幼い記憶が胸をかすめる。まだ陽太に無視をされる前だ。中学二年の時、クラスが分かれた幸平と陽太は、二人で示し合わせて美化委員会に所属した。中学の花壇はさほど本気で花を育てていない。だからたまの担当の日には、二人で話し込んだりしていた。
 その時に足繁く通っていたのが、室井だった。途中から陽太が仕事に来なくなったけれど。
 あの頃から室井は女子に『可愛い』と言われて人気だった。当時の室井は身長も低く、確かに女子みたいに可愛かったと思う。成長した今の彼は、可愛いというより美形だ。

「なんだ……恋人じゃなかったんですね。幸平先輩、陽太さんに告白したって聞いたので」
「えっ……」

 衝撃の発言を聞いて、幸平は言葉を失ってしまう。そんなことまで、知っているのか。

「陽太さんを責めないでやってください。あの人酔ってたし」

 室井は少し眉尻を下げて、幸平に微笑みかけた。幸平は酔った陽太どころか、陽太が呑んでいるところすら見たことがない。幸平は小さく唇を噛んでから、できる限り冷静な口調で返した。

「別に、責めないよ。ただの事実だし」

 こちらの内心を探るようにじっと室井が見てくるので、幸平は視線を逸らす。つい数分前までいつも通りのお昼だったのに、今は頭に暴風雨が吹き荒れているみたいだ。数々の情報に混乱する幸平を谷田も気遣いつつ、それでも好奇心に抗えないのか言いにくそうにしながらも切り出した。

「それで、関係があるって、つまりそういうことだよな?」
「そういうことって、どういうこと」
「付き合ってないのにヤッてんだろ? セフレってやつじゃん。ただれてんなぁ」

「酷いですよねー……」と呟いた室井の表情からは、たった今までの笑みが消え去っていた。彼の周りにただよう空気が妙に思えて、幸平は思わず凝視してしまう。室井がこちらに目を向ける前に、ずっと黙っていた目の前の男が切り出した。

「溝口陽太さんと幸平君ね……あの溝口さんって人、確かに雰囲気のある人だったね」

 時川はそう言って軽く笑みを浮かべた。箸の進まない幸平とは違って食事を終えたらしく、だらしなくテーブルに肘をつき手の甲に顎先を乗せている。谷田が「つうか」と、怪訝けげんな顔で首を傾げる。

「なんで時川が溝口さんを知ってんのか、分かんねぇんだけど」
「バイト先で何度か見かけたことがある。で、幸平君は、溝口さんが好きなんだろ?」

 こうして邪気のない顔で聞かれると困ってしまう。というより、男同士の話であるのにそこを疑問に思わないのだろうか……。時川は幸平の返事を聞く前にニコッと微笑んだ。

「いいね。幼馴染おさななじみの恋。ぜひ応援したいな」
「……時川は、男同士が変だって思わないの?」

 あまりにもあっさりしているから恐る恐る問うと、時川はまたもや軽やかに「確かに妙だなとは思っていた。でも皆がそれに触れないから」と笑顔を見せる。

「私が妙だと思っていることを、皆は受け入れてその先で話している。悔しいだろ? だから私も触れたら負けだと思って言わなかった。つまりそれを一番初めに言及した幸平君は今、負けたんだ」
「……」
「で、どうする。私はぜひ応援したいんだけど」
「時川は呑気すぎる。呑気っつうか、サイコパスだ。幸平はみ、ぞぐちさんに告白したのに、あの人は好きとか一個も返してないんだろ? それでセフレ? えぐい関係じゃん。それなのに、時川は曇りない笑顔で応援してんの? 怖いって」
「幸平先輩、なんでこんな無神経な人と友達なんかやってるんですか?」

 お茶を飲みながら黙って聞いていた室井が口を開く。すかさず谷田が反論した。

「お前のほうが無神経だ!」
「いや、谷田さん今、えぐい関係って言いましたよ。あんた酷い人ですね。幸平先輩が可哀想だ」
「さっきから追い詰めてるのはお前だろうがッ!」

 疲れてきた。幸平は「谷田は良い奴だよ……」と力なく言って、止まっていた食事を再開する。生姜焼き定食はすっかり冷めきっている。黙々と食す幸平の周りで会話が飛び交い始めた。

「にしても、溝口さんって男もイケんのか。死ぬほど遊んでるって聞いてたけど、同性も守備範囲? やっぱかっけえな。やること違うわ」
「陽太さんですからね。女子だけなんてもったいない」
「皆は幸平君を応援する気があるのか?」
「応援つってもよ。幸平と溝口さんがどうなるのがゴールなんだ?」
「ていうか、どうしろって言うんですか」
「質問サイトで質問してみたら?」

 幸平は視線だけで最後にそう言った時川を見る。時川は、眉根を寄せる谷田に笑顔を向けていた。

「ここにいる私達の中に、幼馴染おさななじみとセフレ関係にある人間へのアドバイスをできる野郎はいないからさ、質問サイト……質問小袋とかで助言もらって、今後の方針を決めていこう」
「一番やっちゃいけないことだろ」
「あんな暇人の掃き溜めみたいなクソ治安最悪サイトに質問して、どうするんですか」

 幸平には皆の会話の内容が理解できない。幸平はまたしても箸を止め、「質問小袋って?」と問いかける。すると谷田が「サイコパスはいるし口悪いのはいるし、幸平は世間知らずだし」と頭を抱えた。

「幸平先輩の悪口言わないでくださいよ。幸平先輩、質問小袋っていうのはね、恋愛でもなんでも匿名で質問できて、誰かが答えてくれるサイトです。先輩も使ってみたらいいと思いますよ」
「幸平、絶対に使うな」
「でも意外ですね。……陽太さんってずっと好きな人いるから、彼女作らないと思ってたんです」

 耳に入ってきた言葉のせいで、幸平は思わず箸を落としそうになった。硬直する幸平の周りで、同時に「え?」と複数人の声が重なる。どれほど沈黙が流れたのか分からない。幸平だけが震える唇を開いた。

「……好きな人?」
「そうですよ。高校の頃から陽太さん、女子に告白されても振ってたから。芹澤せりざわさん覚えてます? あの美女に告白されても頷かなかったんですよ。で、彼女押しが強かったんですけど、陽太さんウザがって「好きな奴いる」的なことを答えたらしいんです。あの女は性格悪いから、俺らに『好きな人がいるからって陽太さんに振られた』って漏らしたんですよ」

 息が詰まる。幸平はとっさに目を逸らし、テーブルの真ん中を凝視した。
 乾いた唇からこぼれた吐息が熱い。思考が麻痺して室井の言葉を受け止められない。顔を見なくても、谷田が青ざめて幸平を凝視しているのが伝わってくる。そして声だけでも、室井がにこやかな笑みを浮かべているのが分かった。

「だから幸平先輩と関係持ったって聞いて、ああその女性を諦めたんだなって思いました」

 室井の声が遠のいて聞こえた。『その女性を』の言葉が歪んでいる。

「陽太さんもいい加減、不毛な恋を続けてたって仕方ないですしね」
「……ど、どうして?」

 幸平はやっとのことで声を絞り出した。動揺なんか隠せない。陽太に……好きな人がいた? ガツンと頭を殴られたような衝撃に耐えつつ、幸平は必死に言葉を選んで恐々こわごわと呟いた。

「俺もその女の子達と一緒だって思わない? 陽太君に振られても周りにいる人達と同じだって。俺と関係持ったから好きな人を諦めただなんて、どうして」
「だって先輩は陽太さんの幼馴染おさななじみだから」

 幸平は唇を噛み締めた。鼻の奥がツンと痛くなり、息が苦しくなる。

「諦めて、幸平先輩と付き合ってるのかと思ってました。さすがの陽太さんも、長年自分のことを好きだった幼馴染おさななじみをセフレにしようなんか考えないと思ったんですけど。あの人はヤる男なんですね。幸平先輩は今までの女子とはタイプが違いすぎるし」
「……陽太君はまだその人のこと好きなままなのかな」

 乱れる心をできる限り押し込めようとすると、声が小さくなった。続く「誰か知ってる?」の声は、聞き取れないほどか弱くて、情けなくて堪らない。室井は決して幸平の言葉を聞き落とすことなく、幸平の反応など見えていないように素知らぬ顔をした。

「さぁ。あ、でも。サクラだかユリだか、花の名前の人とよく電話してました」

 花の名前……。何か言おうとするも、返す言葉をついに失ってしまう。黙り込む幸平と同じく友人二人も絶句したかのように沈黙している。室井が不意に携帯を見下ろす。やってきた時と同様に、突如として立ち上がった。

「じゃ、先輩。質問小袋に投稿する文章なら僕も一緒に考えますよ」

 室井は水をぐいっと飲み干し軽く右手を上げる。昔から人気のスイートフェイスで微笑みを振りくと、躊躇ためらいなく去っていった。
 残された三人は口を開かなかった。幸平が食事を再開すると、それを皮切りに谷田が口を開く。

「ムロ君って、お前に攻撃的すぎねぇか? わざと恋を邪魔しようとしてる感じ。今度来たら俺が追い払ってやる!」
「……今だけだよ」

 中高の知り合いが大学にもいたから、懐かしさでやってきているだけだ。いずれ興味が薄れて来なくなる、と幸平は思う。だが今の会話を聞くと、もしかして、とも考えた。室井は陽太のことを……

「なぁ、幼馴染おさななじみって本当なのか?」

 谷田は未だ信じられないのか繰り返した。なぜか幸平の代わりに時川が勝手に答える。

「二人は幼馴染おさななじみだよ。とても絆の強い幼馴染おさななじみ
「時川は無視するけど、幸平、お前からそんな話聞いたことねぇぞ。高校の時だって一緒にいんの見たことねぇ。二人で遊び行ったりしてんの?」

 幸平はふるふる首を横に振った。谷田は眉をひそめ、質問を変える。

幼馴染おさななじみって家が近いとかそういうの? お前らがそんな関係だったなんて意外すぎる。セフレでもなんでも、フレンドならうちの大学に遊びに来たりとか、俺らに会ったりとかするもんじゃね?」

 幸平は「そうなんだ」と呟く。陽太は別の大学に通っている。高校が被ったのは奇跡だったのだ。

「いつ会ってんの? 夜?」
「お昼とかに」

 谷田は「夜じゃねぇんだ」と目を瞬かせた。幸平は淡々と「夜は俺だってバイトある」と返す。

「じゃあ夜の溝口さんは自由なんだな。セフレって、他にもいんだろ」
「……六番目とかかな」

 曖昧あいまいなのは確かめていないからだ。他に何人と関係を持っているかなんて聞けるはずもない。少なくとも高校の頃は五人いると言われていた。幸平の内心を察したのか谷田は絶句し、息を吐いた。

「……よりにもよって、なんで溝口さんを好きになるんだ。つうか幸平、お前ってゲイだったのか?」
「分かんない。陽太君しか好きになったことないし。でも陽太君は男の人だから俺はゲイなんだろうね」
「女子の裸想像してムラムラしたりしねぇの」

『見て』ではなく『想像して』と脳内の範囲なのが谷田らしい。幸平は「ないかも。でも男の人にもない」と答えた。谷田がしばらく黙る。一度口を開いて閉じたが、やはり堪え切れなかったらしい。

「EDじゃん!」
「谷田君。君は本当に良くない人間だと思う」

 お茶をすすっていた時川が真顔で言った。谷田はハッとして、失言に気まずそうな顔をする。
 幸平は陽太との情事を思い浮かべてみる。……そうじゃないな。心の中ではっきりと否定しつつ、曖昧あいまいに首を横に振って視線を落とすと、携帯に通知が来ているのに気付いた。
 すると、叱られて勢いを失った谷田が真面目な顔をして問いかけてきた。

「なぁ幸平、本当にそのままでいいのか?」

 メッセージは陽太からだった。《今から会える?》の文を目にした幸平は無意識に立ち上がる。
 生姜焼き定食はキャベツの千切りが残っている。申し訳なく思いつつも、鞄を肩にかけた。

「ごめんもう行く」
「まさか溝口さん?」

 谷田の目にははっきりと恐れがにじんでいた。幸平は頷き、トレーを手に取った。

「幸平! 今日の飲み会来いよ!」

 歩き出すと谷田が叫んでくる。幸平は肯定か否定か分からない角度で首を振って、逃げるように場を去る。食堂を出てからは駆け足で駅へ向かった。


    ◇


 陽太と会うのはもっぱら幸平の家だ。急いで帰宅すると、アパートの部屋の前にしゃがんでいた彼が立ち上がる。残暑も終えた十月は肌寒く、陽太は長袖のトレーナーとジーンズを身にまとっている。

「コウちゃん、おかえり」
「陽太君、ごめん遅れたね」
「そんなに待ってない」

 今朝まで雨が降っていたから今日は冷える。寒くなかっただろうか。慌てて扉の鍵を差し込むと、陽太が訊ねてきた。

「今日午前講義だろ? 昼飯食べた?」
「うん。食べたよ」
「……そっか」

 歯切れの悪い反応を不思議に思いながらも扉を開く。部屋に入ってきた陽太は紙袋を持っていた。幸平の視線に気付いた陽太は、軽く微笑んで袋を揺らした。

「腹減ってたら、どうかなって」
「え? それ……パン? ごめん、せっかく持ってきてくれたのに俺」
「あ、大丈夫。大したもんじゃないし。押し付けられたやつだから」

 貰いものなのか。誰からだろう。昔から陽太は、まるで献上されるように何か貰っていることが多かった。
 狭い玄関で先に靴を脱いで廊下に上がった幸平は、未だそこに突っ立ったままの陽太に「大学でも人気なんだね」と笑いかける。陽太はじっとこちらを見つめると突然腕を伸ばしてきた。ぐいっと頭の後ろを掴まれて、引き寄せられる。
 唇が重なった。陽太の背後で扉が閉まる。その近さのまま、唇が触れる距離で陽太が呟く。

「食べる?」

 陽太にとってはなんでもない触れ合いだとしても、幸平にとっては心臓の鼓動が強く打つ瞬間だ。背後で扉が閉まり、二人は二人だけの世界に入る。幸平は動揺しているけれど陽太は余裕そうだった。
 初めからそうだった。初めてのキスも陽太は自然に唇を重ねてきたが、幸平はあまりのことに動揺して、必死に暴れる心を隠していたのだ。でももう二十歳になったのだから、もっと大人っぽく、幸平からキスを返すべきだ。分かっているのに幸平は今でも唇が触れただけで心が揺れて、その一つ前の段階の、質問で投げかけられたことへの対処しかできなかった。

「え、と……ううん。陽太君が貰ったものを俺が食べるなんて変じゃん」
「ま、そうだね」

 陽太はあっさりと答えて靴を脱いだ。幸平はかろうじて落とさずに済んだ鞄を抱え直す。
 貧乏学生の住むワンルームは狭い。短い廊下を抜けて、部屋に入ればすぐベッドがあり、小さな白いテーブルを挟んで反対側に棚が置かれている。陽太は青色のカーペットに腰を下ろした。
 青は、陽太が好きな色。だからそれを選んだ。廊下に面するキッチンは、あまり使っていないので綺麗なままだ。二つコップを取り出し、冷蔵庫で冷やしておいた麦茶を注ぎ、テーブルへ置く。陽太は窓を背にしてあぐらをかいていた。幸平はちょこんと、ベッドを背にして腰を下ろす。


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