3 / 23
1章
結婚前日
しおりを挟む
私は酷い侍女だと思う。ラナ様に一生かかっても返せない恩がありながらラナ様が毎日夜中泣いているのを知らないフリしている。
「ルイ様…ルイ様」
ラナ様が泣いているのがあの頃の自分と重なって…逃げてるんだ
「シエル様…会いたいです」
シエル様といつか会えることを信じてやまなかった私
あの頃の私に戻りたくはなかった
だから目を逸らしていたけど
今日は結婚式の前日だから、無視するなんて侍女として…いや人とし許されない
扉をノックする
「ラナ様、紅茶をお入れ致しました」
「マリー、ちょっと待って」
「はい、ラナ様」
ラナ様はお嬢様とではなくラナ様と呼んで欲しいと仰った
それは私には嬉しかった。だって私はーーだから
「マリー、入って」
ラナの好きなカモミールティーを持ってマリーは部屋に入る
「どうぞ」
ラナ様は泣いていなかった。否もう既に涙を隠していた
「ラナ様、こういう時はすがりついて泣いていいんですよ」
「…」
「殿下から手紙でも来たのですか?」
「…ええ、来たわ」
「何て?」
「読んでいいわよ」
白い封筒を開けると王族の透かしも入っていない薄汚い紙が出てきた
「私分かってたわ、ルイ様は自分の気持ちすら犠牲にする方だって…でも悲しいの」
「ラナ様」
「でも、私も同じ判断をしたかもしれないわ…アーデクトの将軍を怒らせたくはないから」
「ラナ様
「私…私」
「ラナ様失礼します」
私はラナ様の近くに行きギュッと抱きしめる
「…嫌ですか?」
「このまま…いてお願い」
「わかりました」
「結婚式は明日よ」
「…」
「私、ルイ様以外の妻となるの」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、私は大丈夫よ」
泣いている…?
「思い切り泣いてください。今日は」
「泣いてない」
「私も…誰も見てません」
「ルイ様…」
涙声になりながら想い人の名を言う姿が私とそっくりだった
「国のため…国のため」
「ラナ様」
「これもまた運命(さだめ)なの」
「ルイ様…ルイ様」
ラナ様が泣いているのがあの頃の自分と重なって…逃げてるんだ
「シエル様…会いたいです」
シエル様といつか会えることを信じてやまなかった私
あの頃の私に戻りたくはなかった
だから目を逸らしていたけど
今日は結婚式の前日だから、無視するなんて侍女として…いや人とし許されない
扉をノックする
「ラナ様、紅茶をお入れ致しました」
「マリー、ちょっと待って」
「はい、ラナ様」
ラナ様はお嬢様とではなくラナ様と呼んで欲しいと仰った
それは私には嬉しかった。だって私はーーだから
「マリー、入って」
ラナの好きなカモミールティーを持ってマリーは部屋に入る
「どうぞ」
ラナ様は泣いていなかった。否もう既に涙を隠していた
「ラナ様、こういう時はすがりついて泣いていいんですよ」
「…」
「殿下から手紙でも来たのですか?」
「…ええ、来たわ」
「何て?」
「読んでいいわよ」
白い封筒を開けると王族の透かしも入っていない薄汚い紙が出てきた
「私分かってたわ、ルイ様は自分の気持ちすら犠牲にする方だって…でも悲しいの」
「ラナ様」
「でも、私も同じ判断をしたかもしれないわ…アーデクトの将軍を怒らせたくはないから」
「ラナ様
「私…私」
「ラナ様失礼します」
私はラナ様の近くに行きギュッと抱きしめる
「…嫌ですか?」
「このまま…いてお願い」
「わかりました」
「結婚式は明日よ」
「…」
「私、ルイ様以外の妻となるの」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、私は大丈夫よ」
泣いている…?
「思い切り泣いてください。今日は」
「泣いてない」
「私も…誰も見てません」
「ルイ様…」
涙声になりながら想い人の名を言う姿が私とそっくりだった
「国のため…国のため」
「ラナ様」
「これもまた運命(さだめ)なの」
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり


【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

王女を好きだと思ったら
夏笆(なつは)
恋愛
「王子より王子らしい」と言われる公爵家嫡男、エヴァリスト・デュルフェを婚約者にもつバルゲリー伯爵家長女のピエレット。
デビュタントの折に突撃するようにダンスを申し込まれ、望まれて婚約をしたピエレットだが、ある日ふと気づく。
「エヴァリスト様って、ルシール王女殿下のお話ししかなさらないのでは?」
エヴァリストとルシールはいとこ同士であり、幼い頃より親交があることはピエレットも知っている。
だがしかし度を越している、と、大事にしているぬいぐるみのぴぃちゃんに語りかけるピエレット。
「でもね、ぴぃちゃん。私、エヴァリスト様に恋をしてしまったの。だから、頑張るわね」
ピエレットは、そう言って、胸の前で小さく拳を握り、決意を込めた。
ルシール王女殿下の好きな場所、好きな物、好みの装い。
と多くの場所へピエレットを連れて行き、食べさせ、贈ってくれるエヴァリスト。
「あのね、ぴぃちゃん!エヴァリスト様がね・・・・・!」
そして、ピエレットは今日も、エヴァリストが贈ってくれた特注のぬいぐるみ、孔雀のぴぃちゃんを相手にエヴァリストへの想いを語る。
小説家になろうにも、掲載しています。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

拝啓、大切なあなたへ
茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。
差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。
そこには、衝撃的な事実が書かれていて───
手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。
これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。
※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる