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第1章
8話
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ガーラの話口調はいたって冷静だった。まるで用意されたシナリオを読んでいるように、淡々と話を進めていく。だが組まれた手が彼の心情を表すように、何度も何度も組みかえされていた。
「僕はこことは全く別の世界から、突然召喚された。リース王国とは遠く離れたとある国の勇者計画によって、僕は勇者としてこの世界に来た。召喚された当時は右も左も分からず、ただ鍛錬に明け暮れる日々だった。ダンジョンをいくつか攻略しながら、気付いたら3年が経っていた。すると僕に魔王を倒すだけの力がついたことを知った国の連中は、僕を魔王討伐に繰り出した。結果として、君も知っている通り、僕は魔王を倒した」
ガーラはもう一度手を組みなおす。前のめりになった姿勢の彼とシオンの視線は交わらない。
「これでもう厳しい鍛錬ともお別れだと歓喜した僕だったが、地獄はここからが始まりだった。連中は魔王を討伐した僕を、どう扱っていいか考えあぐねていた。国の重要機密をいくつか知っている僕を野放しにするわけにはいかない。かといって、元の世界に戻る術も分からない。僕は完全に厄介者扱いだった。1年は王宮で暮らしていいことになったが、常に監視がついて回り自由はほとんど無かった。外に出ることも出来ずに缶詰め状態で、会えるのは一緒に鍛錬をした騎士団の数人だけ。そうして王宮で暮らす最後の日に突然、国王から望みは無いかと聞かれた。僕は外に出たいと伝えた。そうしたら……」
そこでガーラは言葉を詰まらせた。
「国の外に出るというのなら僕の友人を人質にとると言い出した。他国に情報を売るような真似をすれば、そいつを殺すと言った。僕はきっと王の逆鱗に触れてしまったんだろうな。あの時の僕は正気じゃなかった。外に出られるなら何でもいいと思っていたんだ。友人……さっき言った騎士団所属の奴なんだが、そいつに話も付けずにそれでいいと言ってしまったんだ。僕は王との謁見を済まし、友人に会った時に初めて後悔した。僕がいる限り国に監視を付けられる運命を彼に背負わせてしまった」
ガーラの表情が曇る。その時のことを思い出しているのだろうか。
「僕は自由と引き換えに、友人の命を取られた。それから、国王はどうせ国を出るなら、魔物を討伐しろと命令を下した。結局僕は事実上は国の使いってことだ。自由なんて、幻だった。魔物討伐の拠点をつくるために、僕はこの館を立てた。僕は物理攻撃より、魔法の方が得意なようで、頭で思えば大概のことは魔法で具現化できる。この館も、スイの人体変化も、魔法の一種だ。勇者になってよかった唯一の点と言っていいくらい役に立つ」
そこまで言って、ガーラは顔をあげてシオンの瞳を見つめ返した。
「これが、今までの僕の過去だ。シオン。改めて聞こう。僕たちと一緒に来る気は無いか?」
ガーラはシオンに向けて手を差し伸べた。その手のひらは、彼の背負う過去に付けられたと思われる傷跡が、痛々しく刻まれていた。
「僕はこことは全く別の世界から、突然召喚された。リース王国とは遠く離れたとある国の勇者計画によって、僕は勇者としてこの世界に来た。召喚された当時は右も左も分からず、ただ鍛錬に明け暮れる日々だった。ダンジョンをいくつか攻略しながら、気付いたら3年が経っていた。すると僕に魔王を倒すだけの力がついたことを知った国の連中は、僕を魔王討伐に繰り出した。結果として、君も知っている通り、僕は魔王を倒した」
ガーラはもう一度手を組みなおす。前のめりになった姿勢の彼とシオンの視線は交わらない。
「これでもう厳しい鍛錬ともお別れだと歓喜した僕だったが、地獄はここからが始まりだった。連中は魔王を討伐した僕を、どう扱っていいか考えあぐねていた。国の重要機密をいくつか知っている僕を野放しにするわけにはいかない。かといって、元の世界に戻る術も分からない。僕は完全に厄介者扱いだった。1年は王宮で暮らしていいことになったが、常に監視がついて回り自由はほとんど無かった。外に出ることも出来ずに缶詰め状態で、会えるのは一緒に鍛錬をした騎士団の数人だけ。そうして王宮で暮らす最後の日に突然、国王から望みは無いかと聞かれた。僕は外に出たいと伝えた。そうしたら……」
そこでガーラは言葉を詰まらせた。
「国の外に出るというのなら僕の友人を人質にとると言い出した。他国に情報を売るような真似をすれば、そいつを殺すと言った。僕はきっと王の逆鱗に触れてしまったんだろうな。あの時の僕は正気じゃなかった。外に出られるなら何でもいいと思っていたんだ。友人……さっき言った騎士団所属の奴なんだが、そいつに話も付けずにそれでいいと言ってしまったんだ。僕は王との謁見を済まし、友人に会った時に初めて後悔した。僕がいる限り国に監視を付けられる運命を彼に背負わせてしまった」
ガーラの表情が曇る。その時のことを思い出しているのだろうか。
「僕は自由と引き換えに、友人の命を取られた。それから、国王はどうせ国を出るなら、魔物を討伐しろと命令を下した。結局僕は事実上は国の使いってことだ。自由なんて、幻だった。魔物討伐の拠点をつくるために、僕はこの館を立てた。僕は物理攻撃より、魔法の方が得意なようで、頭で思えば大概のことは魔法で具現化できる。この館も、スイの人体変化も、魔法の一種だ。勇者になってよかった唯一の点と言っていいくらい役に立つ」
そこまで言って、ガーラは顔をあげてシオンの瞳を見つめ返した。
「これが、今までの僕の過去だ。シオン。改めて聞こう。僕たちと一緒に来る気は無いか?」
ガーラはシオンに向けて手を差し伸べた。その手のひらは、彼の背負う過去に付けられたと思われる傷跡が、痛々しく刻まれていた。
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