9 / 18
お茶会 2
しおりを挟む
私は今、芳しい紅茶の香りと焼き菓子の甘い香りに包まれた、花々が美しい、見覚えのある中庭にいる。
そして、目の前にはピエロ王子。
相変わらず嘘くさい笑顔が張り付いている。逃げ出すことはできない、なぜなら、癒してくれるアルもいなければ、気を逸らしてくれるエルンダ嬢も今日はいない。
陛下への顔見せと殿下とのお茶会を無事済ませ、我が家はいつもの日常に戻った。
ひと月程経った頃、王妃様からお母様宛にお手紙が届いた。お母様と王妃様は知り合いらしく、久しぶりにお茶しにいらっしゃいという内容だった。お母様だけじゃなく、なぜ私まで・・・
そして今、目がちっとも笑ってない殿下にロックオンされている。怖いよぉ、私何かしたかしら??
「シエンナ嬢。お茶会以来だね、変わりないかい?」
「ええ、殿下もお元気そうでなによりです。」
だってついこの間だもの!
冷めないうちに紅茶をいただく。はぁ~やっぱり美味しいわ、きっと淹れてくれたのは何年も務めているベテランの侍女だろう。
「シエンナ嬢は甘いものは好きかい?そういえば、前回弟のアルと菓子の話していたな。」
やだ!聞かれてたのね!王城だということを忘れてた時だわ。
「ええ、好きですね。」
「そうか、遠慮せずに食べてくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
ダメだわ、ロボットみたいな返答しかできない。でもあっちもアンドロイドみたいな笑顔してるんだから、お互い様よね?
「・・・・。」
「・・・・。」
変な沈黙が流れるなか、紅茶を飲み干す絶妙なタイミングで侍女がおかわりを入れてくれる。さすがだ。
「シエンナ嬢。」
「はい。」
「気を悪くしないでほしいのだけど、シエンナ嬢は・・・王家に対してなにか後ろめたいことが?」
なに?怖い。そんな笑顔で変なこと聞かないで!
「い、いいえ?」
(そうだよな・・・父上には普通だったしな・・・私だけに対してか?)
んん?
殿下が何やらボソボソ呟いている。そもそも「あります!」なんていう人いるのかしら?
なんだか刑事ドラマの犯人のような気分だわ。なんの取り調べかしら?殿下はなにか事件を追ってるのかしら?なんてね、ふふ。
「何がおかしい。」
殿下が不機嫌そうに眉を寄せている。
不思議ね、なんだか殿下の不機嫌な顔を見ると安心するわ。
「いえ、なんだか尋問されている気分でしたので、申し訳ありません。ところで、殿下はなにをお知りになりたいのですか?」
「・・・・・・。」
「?」
「・・・今日は、この間のように逃げたりしないんだな。」
うっバレバレだったのね。。それは、確かに失礼なことだったのかもしれないわ。
「申しわ「詫びてほしい訳じゃない。私は理由を知りたいんだ。どうしてだ?この間は私にだけよそよそしく、父上やエルンダ嬢にも会うのは初めてだったはずだ。なのに、なぜ、私にだけ怯える?」
あの詐欺師みたいな笑顔を貼り付けていた殿下が、身を乗り出し、眉尻を下げ、困った子供の顔をしている。
私はこの顔が見たかったのかもしれない。眉間に皺がよった顔じゃなく。私がいうのもなんだけど、子供らしいかわいい顔だ。
「ふふふっ申し訳ありません。殿下はとてもかわいらしい方でしたのね。正直に申し上げますと、理由は、殿下の顔が怖かったからです。」
「かわっ!?いや、それはいい。顔が怖い?そんなことを言われたのは初めてだ。女性には褒められたことしかない。」
まぁ!自分で言う??・・・まぁ、実際そうなのかもしれない。
「私は怖くてたまりませんでした。今のお顔のほうが素敵ですわ。」
「今の?この間とどう違う?」
「ん~言葉にするのは難しいですけど、そうですね、感情と表情が一致してるかそうでないか、ではないでしょうか?」
もちろんホラー映画の話はしない。
「お前は感情が読めるのか?」
殿下の眉間に皺がよる。殿下の眉毛って表情豊かですわね。ふふ。
「まさか。でも今日の殿下は不機嫌な顔になったり、困った顔をしたり表情が豊かです。」
「表情か・・・。」
「はい。ふふ」
今日の殿下は困り顔が多いわね。無自覚だったのかしら?
「今日はよく笑うな。シエンナ嬢。これから私のことはフィルと呼んでくれ。お前に怯えられるのは気分が悪い。」
いやいやいや!それは無理です!
「いえ!あの!せめてフィラード様でゆる、と呼ばせてください!」
ふぅ。
「あと、今後怯えるかどうかはわかりません。殿下の笑顔は怖いですからね。」
なんだか遠慮がなくなってきてしまってる気がするけど、殿下もお前呼ばわりしているし、まっいいか!怒られたら改めよう。
「本当に失礼なやつだな。まぁいい。また話し相手になってくれ。ほら、迎えが来たようだぞ。」
え?また?
「殿下、おひさしゅうございます。」
お母様が王妃様とのお茶会を終え、私を迎えに来たようだ。挨拶をしながら、美しいカーテシーをし、私も隣に並ぶ。
「母とはゆっくり話せたか?会いたがっていたからな。」
「えぇ、とてもいい時間を過ごさせていただきました。殿下も楽しい時間を過ごされたようでなによりですわ。」
「え?あ、あぁ。では、公爵殿によろしくな。」
「はい、殿下。失礼いたします。」
殿下は騎士たちと共に城内へ戻っていった。そして、私たちも帰りの馬車へと乗り込む。
「シィったら殿下に気に入られちゃったのね。うふふ」
「お母様ったら違うわよ。殿下は聞きたいことがあって、それで呼んだみたいよ?」
「あら、そうなの?それだけじゃないと思うのだけれどねぇ。」
家に着くと、半泣きのお父様とアルが駆けつけてハグとキスの嵐だった。それが落ち着くと「殿下めぇぇぇ!」となにやらメラメラしてた。
そのあと、部屋に戻るとアルに質問攻めにされた。鬼気迫る感じで、あれはちょっと怖かったわ。
そして、目の前にはピエロ王子。
相変わらず嘘くさい笑顔が張り付いている。逃げ出すことはできない、なぜなら、癒してくれるアルもいなければ、気を逸らしてくれるエルンダ嬢も今日はいない。
陛下への顔見せと殿下とのお茶会を無事済ませ、我が家はいつもの日常に戻った。
ひと月程経った頃、王妃様からお母様宛にお手紙が届いた。お母様と王妃様は知り合いらしく、久しぶりにお茶しにいらっしゃいという内容だった。お母様だけじゃなく、なぜ私まで・・・
そして今、目がちっとも笑ってない殿下にロックオンされている。怖いよぉ、私何かしたかしら??
「シエンナ嬢。お茶会以来だね、変わりないかい?」
「ええ、殿下もお元気そうでなによりです。」
だってついこの間だもの!
冷めないうちに紅茶をいただく。はぁ~やっぱり美味しいわ、きっと淹れてくれたのは何年も務めているベテランの侍女だろう。
「シエンナ嬢は甘いものは好きかい?そういえば、前回弟のアルと菓子の話していたな。」
やだ!聞かれてたのね!王城だということを忘れてた時だわ。
「ええ、好きですね。」
「そうか、遠慮せずに食べてくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
ダメだわ、ロボットみたいな返答しかできない。でもあっちもアンドロイドみたいな笑顔してるんだから、お互い様よね?
「・・・・。」
「・・・・。」
変な沈黙が流れるなか、紅茶を飲み干す絶妙なタイミングで侍女がおかわりを入れてくれる。さすがだ。
「シエンナ嬢。」
「はい。」
「気を悪くしないでほしいのだけど、シエンナ嬢は・・・王家に対してなにか後ろめたいことが?」
なに?怖い。そんな笑顔で変なこと聞かないで!
「い、いいえ?」
(そうだよな・・・父上には普通だったしな・・・私だけに対してか?)
んん?
殿下が何やらボソボソ呟いている。そもそも「あります!」なんていう人いるのかしら?
なんだか刑事ドラマの犯人のような気分だわ。なんの取り調べかしら?殿下はなにか事件を追ってるのかしら?なんてね、ふふ。
「何がおかしい。」
殿下が不機嫌そうに眉を寄せている。
不思議ね、なんだか殿下の不機嫌な顔を見ると安心するわ。
「いえ、なんだか尋問されている気分でしたので、申し訳ありません。ところで、殿下はなにをお知りになりたいのですか?」
「・・・・・・。」
「?」
「・・・今日は、この間のように逃げたりしないんだな。」
うっバレバレだったのね。。それは、確かに失礼なことだったのかもしれないわ。
「申しわ「詫びてほしい訳じゃない。私は理由を知りたいんだ。どうしてだ?この間は私にだけよそよそしく、父上やエルンダ嬢にも会うのは初めてだったはずだ。なのに、なぜ、私にだけ怯える?」
あの詐欺師みたいな笑顔を貼り付けていた殿下が、身を乗り出し、眉尻を下げ、困った子供の顔をしている。
私はこの顔が見たかったのかもしれない。眉間に皺がよった顔じゃなく。私がいうのもなんだけど、子供らしいかわいい顔だ。
「ふふふっ申し訳ありません。殿下はとてもかわいらしい方でしたのね。正直に申し上げますと、理由は、殿下の顔が怖かったからです。」
「かわっ!?いや、それはいい。顔が怖い?そんなことを言われたのは初めてだ。女性には褒められたことしかない。」
まぁ!自分で言う??・・・まぁ、実際そうなのかもしれない。
「私は怖くてたまりませんでした。今のお顔のほうが素敵ですわ。」
「今の?この間とどう違う?」
「ん~言葉にするのは難しいですけど、そうですね、感情と表情が一致してるかそうでないか、ではないでしょうか?」
もちろんホラー映画の話はしない。
「お前は感情が読めるのか?」
殿下の眉間に皺がよる。殿下の眉毛って表情豊かですわね。ふふ。
「まさか。でも今日の殿下は不機嫌な顔になったり、困った顔をしたり表情が豊かです。」
「表情か・・・。」
「はい。ふふ」
今日の殿下は困り顔が多いわね。無自覚だったのかしら?
「今日はよく笑うな。シエンナ嬢。これから私のことはフィルと呼んでくれ。お前に怯えられるのは気分が悪い。」
いやいやいや!それは無理です!
「いえ!あの!せめてフィラード様でゆる、と呼ばせてください!」
ふぅ。
「あと、今後怯えるかどうかはわかりません。殿下の笑顔は怖いですからね。」
なんだか遠慮がなくなってきてしまってる気がするけど、殿下もお前呼ばわりしているし、まっいいか!怒られたら改めよう。
「本当に失礼なやつだな。まぁいい。また話し相手になってくれ。ほら、迎えが来たようだぞ。」
え?また?
「殿下、おひさしゅうございます。」
お母様が王妃様とのお茶会を終え、私を迎えに来たようだ。挨拶をしながら、美しいカーテシーをし、私も隣に並ぶ。
「母とはゆっくり話せたか?会いたがっていたからな。」
「えぇ、とてもいい時間を過ごさせていただきました。殿下も楽しい時間を過ごされたようでなによりですわ。」
「え?あ、あぁ。では、公爵殿によろしくな。」
「はい、殿下。失礼いたします。」
殿下は騎士たちと共に城内へ戻っていった。そして、私たちも帰りの馬車へと乗り込む。
「シィったら殿下に気に入られちゃったのね。うふふ」
「お母様ったら違うわよ。殿下は聞きたいことがあって、それで呼んだみたいよ?」
「あら、そうなの?それだけじゃないと思うのだけれどねぇ。」
家に着くと、半泣きのお父様とアルが駆けつけてハグとキスの嵐だった。それが落ち着くと「殿下めぇぇぇ!」となにやらメラメラしてた。
そのあと、部屋に戻るとアルに質問攻めにされた。鬼気迫る感じで、あれはちょっと怖かったわ。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
王子殿下の慕う人
夕香里
恋愛
エレーナ・ルイスは小さい頃から兄のように慕っていた王子殿下が好きだった。
しかし、ある噂と事実を聞いたことで恋心を捨てることにしたエレーナは、断ってきていた他の人との縁談を受けることにするのだが──?
「どうして!? 殿下には好きな人がいるはずなのに!!」
好きな人がいるはずの殿下が距離を縮めてくることに戸惑う彼女と、我慢をやめた王子のお話。
※小説家になろうでも投稿してます
軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら
夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。
それは極度の面食いということ。
そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。
「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ!
だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」
朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい?
「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」
あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?
それをわたしにつける??
じょ、冗談ですよね──!?!?
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる