転生先は乙女ゲーム？

僕の義姉 -アル-

　幼い頃、引き取ってくれた両親を火事で亡くし、母の弟であるオッズレン公爵に引き取られた。

　聞けば、僕とひとつ違いの娘がいるという。僕の髪はオッズレン公爵と同じ銀髪だ。愛人の子と思われ、いじめられないだろうか、公爵夫人は優しい方だと聞いたけど、僕に対してはわからない、不安でたまらなかった。

　が、僕の不安は当たらなかった。2人ともとても優しく、哀れみの優しさではなく、温かく迎え入れてくれて、泣くほど嬉しかった。
　だけど、やっぱり両親がいなくなった寂しさはすぐにはなくならなくて、部屋に篭って泣いていると、いつも義姉が僕の手を引き、庭や小川に連れ出し「ここでいっぱい泣くといいわ。泣き終わった後の景色は綺麗な方がいいもの。」と言って、いつもそばにいてくれた。

　僕の義姉は可愛い。とても可愛い。表情がコロコロ変わるところも、いろんなことをやりたがるところも。姉様は気づいてないけど、抱きついては姉様の胸に顔を埋めるのが僕の日課だ。まだ大きくはないけど、良い匂いがして柔らかくて、たまらない。だから、僕はまだ寂しがりやのかわいい弟なんだ。

　姉様はしっかりしているようで、どこか抜けてる。たぶんだけど、深く考えることが苦手なんだ。いつも「まいっか！」と言っては考えることをやめる。僕とは正反対だ。
　そして、少しだけ変だ。姉様の言葉は初めて聞く言葉がたくさんあり、僕は興味津々でなんでも聞いた。

　姉様の見ているものと同じものが見たくて、植物図鑑や動物図鑑を調べても、何ひとつ出てこなかった。そのうち、調べるという行為自体が楽しくなり、知らないことを知る楽しさを知った。家庭教師にも今の両親にも、よく褒められるようになった。これも全て姉様のおかげだ。







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　今日は、陛下に顔見せに行く日だ。公爵家だからか、僕を迎え入れたことで顔みせをしなければいけない。これを、姉様の誕生日に合わせることにしたらしい。これは助かった。姉様を殿下の婚約者にする訳にはいかない。

　戦いの前に、太った豚が両親のことを悪く言ってきたが、なにもしらないくせに。そんな人間の言葉なんて僕には響かない。娘のほうも公爵家の正当な血筋じゃないと知っているからか、蔑むような目で見てきた。生まれただけで僕よりなにが上なのか、庶民として生まれてきた僕にはさっぱりわからない。

　そんなことよりお茶会だ。殿下と姉様ができるだけ会話しないようにしないと。失礼に当たらないよう、どうやって邪魔をしてやろうかと考えていたけど、姉様の様子がおかしい。

　殿下は僕から見ても見目麗しい王子様だ。地位も名誉も最高位だ。所作も立ち振る舞いも腹が立つほどに完璧だ。
　なのに･･･頬を赤らめるどころか、青ざめている。見つめるどころか目を合わさないように必死だ。明らかに怯えている。
　これは･･･予想外だけど好都合だ。きっと今の僕の顔は、姉様には見せられない顔をしてるだろうな。
　
　これで婚約者になることは無いだろうと安心していた。なのに！油断した。会話してなかったのがいけなかったのか？なにが殿下の興味を引いたんだ？