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お姫様の帰る場所 -父-
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私が領主をしているこのオッズレン領は王都から少し離れた場所にあり、小さな川がいくつかながれる自然豊かな土地だ。
ただ冬の時期は雪が積もるために、夏の中頃辺りから冬に向けて蓄えなければならない。
そして今は
「わぁ!みて!牡丹雪よ!」
「わぁ!雪だ!ねえ、ねえさま、ぼたんゆきってなんですか?」
「牡丹の花びらみたいにおっきいからそう呼ぶのよ。」
「ぼたんとは花のことなのですね。」
「そうよ、おっきくてとっても綺麗なの。」
子供達がキラキラした笑顔で、降り始めた雪にはしゃいでいる。
弟のアルはシィによく懐いていて、シィが時々よくわからない言葉を話すのだが、知らない言葉に興味深々のようで、よく質問攻めにしているのをよく見かける。
「ねえさま雪にもいろいろあるのですね!他にはどんなのがあるのですか?ぼたんの花はなに色ですか?」
「粉雪とかみぞれ雪とかいろいろあるのよ。きおんやしつどで変わるみたい。ぼたんはね…」
あぁ、始まったようだ。
シィは少し大人びていて、少し変わった子だ。いつどこで覚えたのか、誰も知らない言葉をよく話す。
最初は、よからぬどこぞの輩がシィに吹き込んでるのではないかと疑ったが、ひとときも離れずそばにいるようにしても、周りに聞いて回ったりしてもそのような輩はいなかったし、シィの言葉を理解できるものも1人もいなかった。
シィに聞いてみたことがあるが、可愛らしく首をコテンと傾げて「あれ?」「ん~わかんない」と彼女自身もわからないようだった。
いつ誰がなんのために、なぜシィだったのか、心配で心配で夜も眠れなくなって、妻に叱られた。それからは気にしないようにした。
「ねえシィ、前に話してくれたお姫様の話を聞かせてちょうだい。」
妻もシィの話が好きなようで、最初こそ心配していたが私よりも早くに慣れたようだ。
「お母様!もちろんよ!かぐや姫ね!」
「ぼくも聞きたいです!」
「ダ、ダメだ!!その話は聞きたくない!!いやだ!」
聞きたくなくて慌てて両耳をふさぐ。
「もう、ムルファったら。この話のお姫様はシィじゃないって何度も言ってるでしょう?シィは私が産んだんだから、帰る家はここでしょう?」
「クスクス、おとうさまは本当に心配性ですね。大丈夫です!ぼくがねえさまを守りますから!」
「シィ!どこかにいっちゃダメだ!!」
ぎゅむっ!
「きゃーあはは!私もぎゅー!」
「離すもんか!」
「まぁ楽しそう、私もまざるわ。ふふ」
「ずるい!ぼくも!」
雪が深々と降る中、我が家はこんなにも暖かい。あぁ、私は世界一幸せ者だな。
私は心配で仕方がない。
こんなに可愛らしくて、賢い子、神の御使ではないかと。
お姫様の話を聞いてからというもの、「お迎えに参りました。」とかいって、いつかどっかいっちゃうんじゃないか!と気が気でないのだ。
ただ冬の時期は雪が積もるために、夏の中頃辺りから冬に向けて蓄えなければならない。
そして今は
「わぁ!みて!牡丹雪よ!」
「わぁ!雪だ!ねえ、ねえさま、ぼたんゆきってなんですか?」
「牡丹の花びらみたいにおっきいからそう呼ぶのよ。」
「ぼたんとは花のことなのですね。」
「そうよ、おっきくてとっても綺麗なの。」
子供達がキラキラした笑顔で、降り始めた雪にはしゃいでいる。
弟のアルはシィによく懐いていて、シィが時々よくわからない言葉を話すのだが、知らない言葉に興味深々のようで、よく質問攻めにしているのをよく見かける。
「ねえさま雪にもいろいろあるのですね!他にはどんなのがあるのですか?ぼたんの花はなに色ですか?」
「粉雪とかみぞれ雪とかいろいろあるのよ。きおんやしつどで変わるみたい。ぼたんはね…」
あぁ、始まったようだ。
シィは少し大人びていて、少し変わった子だ。いつどこで覚えたのか、誰も知らない言葉をよく話す。
最初は、よからぬどこぞの輩がシィに吹き込んでるのではないかと疑ったが、ひとときも離れずそばにいるようにしても、周りに聞いて回ったりしてもそのような輩はいなかったし、シィの言葉を理解できるものも1人もいなかった。
シィに聞いてみたことがあるが、可愛らしく首をコテンと傾げて「あれ?」「ん~わかんない」と彼女自身もわからないようだった。
いつ誰がなんのために、なぜシィだったのか、心配で心配で夜も眠れなくなって、妻に叱られた。それからは気にしないようにした。
「ねえシィ、前に話してくれたお姫様の話を聞かせてちょうだい。」
妻もシィの話が好きなようで、最初こそ心配していたが私よりも早くに慣れたようだ。
「お母様!もちろんよ!かぐや姫ね!」
「ぼくも聞きたいです!」
「ダ、ダメだ!!その話は聞きたくない!!いやだ!」
聞きたくなくて慌てて両耳をふさぐ。
「もう、ムルファったら。この話のお姫様はシィじゃないって何度も言ってるでしょう?シィは私が産んだんだから、帰る家はここでしょう?」
「クスクス、おとうさまは本当に心配性ですね。大丈夫です!ぼくがねえさまを守りますから!」
「シィ!どこかにいっちゃダメだ!!」
ぎゅむっ!
「きゃーあはは!私もぎゅー!」
「離すもんか!」
「まぁ楽しそう、私もまざるわ。ふふ」
「ずるい!ぼくも!」
雪が深々と降る中、我が家はこんなにも暖かい。あぁ、私は世界一幸せ者だな。
私は心配で仕方がない。
こんなに可愛らしくて、賢い子、神の御使ではないかと。
お姫様の話を聞いてからというもの、「お迎えに参りました。」とかいって、いつかどっかいっちゃうんじゃないか!と気が気でないのだ。
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