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第20話 小心者
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ユグドラシルの奥深く進むにつれて、カエデとアーサーの周囲は静けさに包まれ始めた。
木々の間を抜ける風の音だけが、彼らの耳にかすかに響いていた。
陽光が柔らかく木漏れ日となって地面に模様を描き、森の神秘的な雰囲気をさらに引き立てていた。
突然、彼らの行く手を遮る形で濃い茶色の毛で覆われた小さな生き物が立ちはだかっていた。
耳はふさふさでとんがっており、2足で立っている。
背丈はアーサーと同じくらいで、ネズミのような大きな前歯が覗いていた。
どこか挑発的な表情でカエデを見上げながら笑みを浮かべた。
「昨日コテンパンにされたおこちゃまじゃねえか」と、そのネズミ?が口にする。
魔物か?カエデは警戒して武器を構えようとするが、襲ってくる様子がないため構えるのをやめた。
アーサーは不安げに木の上から彼らを見下ろし、様子を伺った。
カエデはアーサーに対して、その生き物に気づかれないように合図を送り、黙って木の上で待機するよう伝えた。
彼の目は、どこか悪戯っぽく光っていた。
「まあ、おこちゃまだし、また逃げてもいいぜ?」モモンは吐き捨てるように言った。
カエデは昨日のことを思い出させるその言葉に、どこか胸がチクリとした。
「俺はモモン様ってんだ。ちょうどよかった。この辺の冒険者じゃ相手になんないし、暇つぶしの相手を探していたところなんだよ。俺と勝負しねーか」
カエデは、その小さな体に熱いものが燃え上がった。
自分を見くびったような態度に反発心が芽生る。
「いいよ、やってみよう!」カエデの声は、森の中に響き渡った。
挑戦に乗ると決めたその瞬間、彼女の目には躊躇が消え、強い決意が宿っていた。
カエデの毅然とした態度に、モモンは少し焦っているように見えた。
「ふん、ただ強気なだけじゃ、あっという間にやられちまうぜ、お嬢ちゃん」と軽く言い放つと、モモンは口角を上げ、不敵な笑みを浮かべた。
「俺はな、このユグドラシルで数々の猛者と戦ってきたんだぜ。」
彼は大きく息を吸い込み、あたかも自分がこの森での英雄であるかのように話を進めていく。
「この森の奥のそのまた奥のまだ未開の場所で、何匹もの魔物とたたかってきたんだぜ。黒く輝く目を持つ獣を相手に、俺様一人で戦い抜いたってわけ。」
モモンの自信たっぷりの話しぶりに次第に引き込まれかけている自分を感じた。
「見ろよ、この体だってそうだ!」とモモンは続け、その体の密な茶色の毛を誇示する。
「これがその敵たちを押しのけるために鍛えられてきたんだ。この毛は上位ランクの魔物だって傷つけることさえできないんだ。だから俺とまともにやり合えるのは、ほんの一握りの奴らだけ、ってわけさ。」
そんな話はお構いなしに、カエデはひるまずに短剣を構えようとする
モモンは内心は少し顔をひきつらせた。
「なるほど、やる気は充分ってわけか。いいぜ、思う存分来な!」
ユグドラシルの森の中、カエデとモモンの一対一の勝負が始まった。
薄暗い木漏れ日の下、森の静寂が緊張感をさらに高めている。
カエデは木の短剣を両手で握りしめ、ダリルから学んだ基本姿勢を取りながらモモンを見据えていた。
モモンは、小柄な体に合う程度の太さの木の棒を持ち、対峙していた。
「降参するなら今だぜ」モモンは言う
「いくよ!」そんな言葉はお構いなしにカエデが声を上げ、地面を蹴って前へと飛び出した。
モモンも、カエデの小さな体が持つ予想以上の速さに驚きながらも、必死にその目を追った。最初の一撃、カエデの短剣が彼に向かって真っ直ぐ突き出されると、モモンは辛うじて体をよじり、ギリギリでその攻撃を避けることに成功した。
カエデはそのまま攻撃の手を緩めず、間合いにすぐさま詰め寄る。彼女の動きは舞うように軽やかで、鋭い。
次の瞬間、カエデの短剣が再びモモンを捉え、今度は彼の頭に痛烈に叩きつけようとする。
カエデは避けられたことを考えて次の一手を考える――
――がその必要はなく、振り下ろした短剣はモモンの頭にクリーンヒットした。
「いてえええぇえ!」モモンは声を上げ、頭を押さえながら飛び上がった。
たんこぶができた部分を摩り、悔しそうに顔を歪ませる。
「覚えてろよー」とモモンは捨て台詞を吐き、ばたばたと走り森の中へと姿を消した。
モモンがどこかに去っていくのを見届けた後、アーサーが静かに木の上から降りてきた。
アーサーは不思議そうに彼女を見上げた。
カエデはアーサーの顔を見つめ、小さく微笑みを浮かべる。「なんだったんだろう。」
二人はお互いに顔を見合わせ、森の静寂の中で首をかしげたのち、顔を見合わせて笑った。
戦いの経験にはならなかった。
しかし、先ほどの変な出来事のおかげで、昨日のもやもやとした気持ちが少し晴れた気がした。
カエデとアーサーは、再びユグドラシルの森を進むため、また、歩き始めた。
それぞれの心に、新たな冒険への期待と、これから見つけるであろう未知の経験に対する希望を抱きながら。
ユグドラシルの探検はまだ続く。
木々の間を抜ける風の音だけが、彼らの耳にかすかに響いていた。
陽光が柔らかく木漏れ日となって地面に模様を描き、森の神秘的な雰囲気をさらに引き立てていた。
突然、彼らの行く手を遮る形で濃い茶色の毛で覆われた小さな生き物が立ちはだかっていた。
耳はふさふさでとんがっており、2足で立っている。
背丈はアーサーと同じくらいで、ネズミのような大きな前歯が覗いていた。
どこか挑発的な表情でカエデを見上げながら笑みを浮かべた。
「昨日コテンパンにされたおこちゃまじゃねえか」と、そのネズミ?が口にする。
魔物か?カエデは警戒して武器を構えようとするが、襲ってくる様子がないため構えるのをやめた。
アーサーは不安げに木の上から彼らを見下ろし、様子を伺った。
カエデはアーサーに対して、その生き物に気づかれないように合図を送り、黙って木の上で待機するよう伝えた。
彼の目は、どこか悪戯っぽく光っていた。
「まあ、おこちゃまだし、また逃げてもいいぜ?」モモンは吐き捨てるように言った。
カエデは昨日のことを思い出させるその言葉に、どこか胸がチクリとした。
「俺はモモン様ってんだ。ちょうどよかった。この辺の冒険者じゃ相手になんないし、暇つぶしの相手を探していたところなんだよ。俺と勝負しねーか」
カエデは、その小さな体に熱いものが燃え上がった。
自分を見くびったような態度に反発心が芽生る。
「いいよ、やってみよう!」カエデの声は、森の中に響き渡った。
挑戦に乗ると決めたその瞬間、彼女の目には躊躇が消え、強い決意が宿っていた。
カエデの毅然とした態度に、モモンは少し焦っているように見えた。
「ふん、ただ強気なだけじゃ、あっという間にやられちまうぜ、お嬢ちゃん」と軽く言い放つと、モモンは口角を上げ、不敵な笑みを浮かべた。
「俺はな、このユグドラシルで数々の猛者と戦ってきたんだぜ。」
彼は大きく息を吸い込み、あたかも自分がこの森での英雄であるかのように話を進めていく。
「この森の奥のそのまた奥のまだ未開の場所で、何匹もの魔物とたたかってきたんだぜ。黒く輝く目を持つ獣を相手に、俺様一人で戦い抜いたってわけ。」
モモンの自信たっぷりの話しぶりに次第に引き込まれかけている自分を感じた。
「見ろよ、この体だってそうだ!」とモモンは続け、その体の密な茶色の毛を誇示する。
「これがその敵たちを押しのけるために鍛えられてきたんだ。この毛は上位ランクの魔物だって傷つけることさえできないんだ。だから俺とまともにやり合えるのは、ほんの一握りの奴らだけ、ってわけさ。」
そんな話はお構いなしに、カエデはひるまずに短剣を構えようとする
モモンは内心は少し顔をひきつらせた。
「なるほど、やる気は充分ってわけか。いいぜ、思う存分来な!」
ユグドラシルの森の中、カエデとモモンの一対一の勝負が始まった。
薄暗い木漏れ日の下、森の静寂が緊張感をさらに高めている。
カエデは木の短剣を両手で握りしめ、ダリルから学んだ基本姿勢を取りながらモモンを見据えていた。
モモンは、小柄な体に合う程度の太さの木の棒を持ち、対峙していた。
「降参するなら今だぜ」モモンは言う
「いくよ!」そんな言葉はお構いなしにカエデが声を上げ、地面を蹴って前へと飛び出した。
モモンも、カエデの小さな体が持つ予想以上の速さに驚きながらも、必死にその目を追った。最初の一撃、カエデの短剣が彼に向かって真っ直ぐ突き出されると、モモンは辛うじて体をよじり、ギリギリでその攻撃を避けることに成功した。
カエデはそのまま攻撃の手を緩めず、間合いにすぐさま詰め寄る。彼女の動きは舞うように軽やかで、鋭い。
次の瞬間、カエデの短剣が再びモモンを捉え、今度は彼の頭に痛烈に叩きつけようとする。
カエデは避けられたことを考えて次の一手を考える――
――がその必要はなく、振り下ろした短剣はモモンの頭にクリーンヒットした。
「いてえええぇえ!」モモンは声を上げ、頭を押さえながら飛び上がった。
たんこぶができた部分を摩り、悔しそうに顔を歪ませる。
「覚えてろよー」とモモンは捨て台詞を吐き、ばたばたと走り森の中へと姿を消した。
モモンがどこかに去っていくのを見届けた後、アーサーが静かに木の上から降りてきた。
アーサーは不思議そうに彼女を見上げた。
カエデはアーサーの顔を見つめ、小さく微笑みを浮かべる。「なんだったんだろう。」
二人はお互いに顔を見合わせ、森の静寂の中で首をかしげたのち、顔を見合わせて笑った。
戦いの経験にはならなかった。
しかし、先ほどの変な出来事のおかげで、昨日のもやもやとした気持ちが少し晴れた気がした。
カエデとアーサーは、再びユグドラシルの森を進むため、また、歩き始めた。
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