上 下
59 / 100

前夜の攻防戦3

しおりを挟む

「のぅクロ坊、主は何を怖がっておるのじゃ?この世界に解放されてから今日まで主の脅威になりそうな者は居らんように見えたが…。」

『ケン爺分かってねぇーっすね。敵は身内にありっすよ。』

「なに!儂らの中に裏切り者が居るってことか!?」

『うーん、そうじゃねぇっすけど。まぁ要は旦那が皆に愛されてるってことっすよ。ケン爺細かい事は気にせず今はしっかりここを守りやしょうぜ。』

「ん?うーん…儂には良く分からん。今は主の守護に集中するわい。」

物騒な会話をする女性陣に比べて男性サイドは大人しい。
どうして女性配下の性格がこんなにも危うくなってしまうのだろうか。


そして、そんな危うい思想の娘たちがクロコ達の前に現れた。

『……来たっすね。』

先頭は当然のようにアイリス。
その後ろにシルヴィアやヤオイ、エーロ更にはクロちゃんやメシアも続いている。

「来たってアイリス達じゃのう。ほれ、お主らこんな夜更けにどうしたんじゃ?」

『あ、ケン爺!』

ケンゾウにとって彼女達は味方判定。
しっかり油断した様子で近付いてしまう。

「……ヤオイ、召喚を。」

「はい、お任せあれー!召喚『フローラルな香りに偽装した液体を染み込ませたハンカチ』。」

ヤオイの手に現れた白いハンカチ。
フローラルの香り、でも嗅いだら巨象でも簡単におねんねする。

それを片手に持って安易に近寄って来たケンゾウの鼻へフワリと添える。

「な、なんじゃ!?あ………zzz」

『クロ爺!?』

驚いた表情から一転、ケンゾウは膝から下の力が無くなったかのようにカクンと崩れ落ちてしまった。
そして、もう動かない。

「お爺ちゃんには早々お休みして頂きました。さぁクロコ、その道を開けるのであれば何もしません。ですが、抗うのであればそれ相応の躾を致しましょう。」

『くっ…。』

アイリスは口元の笑みを崩さず冷酷な道しるべを示す。
主を売るか自分を犠牲にするか、恐ろしい選択肢だ。

『そ、そんなの旦那の為に戦うに決まってるっす!あっしの命は旦那の為にあるんすから!!』

「ぶふぁっ!?」

ここでまさかのヤオイが両鼻からの大量出血によるリタイア。
男と男、雄と雄の熱い友情に興奮が抑えきれなかったみたい。

これで運良く女性陣の戦力が少し削れた。それでも戦力差は天と地ほどの差がある。
そもそもクロコ単体で互角に戦える相手がこの中では陰から監視しているニトくらい。

けど、それでも…。

「今なら腹を見せて屈服すらなら許してあげますがよろしいのですか?」

『くどいっす!あっしは退く訳には行きやせん!!』

それでも主の貞操を守らなきゃいけないんだ、ドン!!




「そう。じゃあ、シルヴィア、リリー、エーロにクロちゃん殺りなさい。それとニトは重力操作でクロコの動きを制限して下さい。」

「「「はい!!!」」」

所詮、ワンコ。
どう意気込んで挑んでもアリンコがドラゴンに勝てる訳が無い。
そもそもしっかり指揮された相手にどう立ち向かえと?

ここからのクロコは悲惨で無惨でした。

数でゴリ押そうと影で多くの分身を作るも、ニトの結界内限定の重力操作で加重されてよろよろのお爺ちゃん状態。
それをリリー達が淡々と確実に消していき、残った本体に回避不可能な全方向からの魔法と斬撃の雨霰。

世が世ならペット虐待で訴えれるレベル。
しかし、ここは異世界。
クロコのボロ雑巾の出来上がり。ピクピクと動いているのでまだギリ生きてはいる。

『くぅ…クゥーン。だ、旦那……。』

享年59話 クロコここに眠る。




「さて、皆さん行きましょうか。ご主人様の初めてを強奪するまであと少しですよ。」

「「「おうっ!!!」」」

ユウの理想達の進撃はまだ止まらない。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

処理中です...