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ケモ耳

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犬耳の美少女に出会いました。

一目惚れ?
いいや、そんなチャチなものじゃない。その耳に触れたい、それだけさ。

クロコの狼耳もなかなかの毛ざわりだったけれど、この娘はどれほどの毛並みを保有しているのだろうか。
つい触りたくて手を近付けるもビクリと身体を震わせて後退りする。
いきなり目の前に出現した形だから怯えさせてしまった。
でも、この小動物がフルフルと震える様子。

罪悪感と妙な高揚感が………はっ、駄目だ駄目だ変な態の性癖が誕生するところだった。
俺は普通、俺は普通。

『旦那、まず普通を名乗るならその手をワキワキさせるのは止めたほうが良いっすよ。』

まだ両手に性癖の名残が残っていたみたい、いかんいかん。
両手を後ろに組んで何もしないアピールを見せてもう一度話し掛ける。

「えーと、色々あったけどこんにちわ。ずーっと俺達の様子を見ていたようだけど王様の関係者さんかな?」

「ひぃ…。」

最初の出会いが不味かった。
どうにか緊張を解けないものか。

「貴様、主君の質問に答えよ。その口は飾りか。」

「うん、死ぬ?」

「ひぃ…。」

今度の出会いも不味かった。
どうやっても緊張を解ける気がしない。
さっきまで殺しまくってた集団が周りを囲んでいる。しかも、自分に殺す宣言をしている。恐怖に染まるのも仕方が無い。

「はい、皆とりあえず怖がっているから殺気は抑えてね。話出来ないしモフモフもさせてもらえないから。で、改めて聞くけど君は王様の関係者さんかな?」

触れたら壊れそうなくらいビビっておられるのでなるべく優しく優しく問いかける。
それが功を奏したのかようやく答えてくれた。

「は、はははい。わ、わたしはセフィーレ王国第3王女ティアラ様の従者でありますリンとも…申します。ドラゴン討伐者である貴方様にお伝えしたいことがあり参りました。」

序盤は噛まないか心配になるほど声が震えていたのにちゃんと終盤は調子を取り戻したようだ。
王子様の次は王女様か…。
先程までの出来事で王族関係者に禄な思い入れが無い。配下達ですら王女と聞いてまた殺意を滾らせている。

「王女様ねぇ…。それで伝えたい事とは?まさかあの王子様と同じ事でも言いに来たの?」

「ち、違います!姫様はそのような愚かな事を考えてなどおりません。今回、シェパード殿下の行ないを貴族王族全ての総意ではないと伝えに来たのです。決して無理矢理に取り込もうなどと姫様は考えておりません!」

周りから湯水の如く湧き出す殺気に当てられながらも懸命にお姫様を擁護する。
彼女の弁明に嘘偽り一切感じられない。
それだけで王女様の印象は王様王子様に抱いたものより遥かに良い。

なによりこんなケモ耳美少女が慕うくらいだ、悪い娘な訳がない。

「なるほど要はお姫様が俺達の敵になる気が無いって事だね?」

「は、はい!そうです。姫様の他にも同じ考えの方は居ます。」

ホッと安心した姿も可愛い。
外套からずっとチラ見していたお尻尾様が左右へ振れていやがる。
なんて破壊力だ。

「安心して、俺達は敵対してくる者以外には何もする気が無いから。だから、もしまた王子様が面倒事を持ち込んだら王子様に直接お返しを叩き込むけど、お姫様や無関係な人達は決して巻き込まないよ。」

そのケモ耳に誓う。
鬱陶しいのは排除するけどそれ以外には何もしない。

だから。

「そのケモ耳触ってもいいですか?」

「はい?」

『旦那、漏れてやす漏れてやす。流石のあっしも旦那のモフモフ愛にはちょい引きっす。』

許せ、クロコ。
それでも俺は…俺は、その犬耳に触りたいんだ!





結局、その後犬耳をモフらせて貰えるはずもなく残ったクロコの狼耳をめちゃくちゃモフモフしました。

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