263 / 266
教国の危機、足音は破滅か存立か
勇者だって反抗期2
しおりを挟む奇妙な男もとい今現在起きている災厄の元凶となっている男と遭遇してからまた数日ほど経過した。
投げ渡されてしまったこの瓶は未だに捨てられずにいた。
どうしてかは分からない、捨てようにも体が指がそいつを離してくれない。
「勇者様、そろそろ稽古を致しますのでご準備して下さいませ。」
俺が懐にある瓶を握りながら上の空になっていると一人の騎士がそう声を掛けてきた。
煩わしいうっとおしい。
「俺様は勇者だぞ。なぜ雑魚共がやるような訓練をしなければならないんだ。」
「ですが、災厄がいつ迫ってくるか分からない状況です。少しでも己の地力を上げておかなければ」
「うるさい!どっか行け!俺様は今虫の居所が悪いんだ!!」
近くにある椅子を蹴り飛ばしそれ以上話す事は無いと威嚇する。
ここまでしなければ俺様の心を理解出来ないなんて嘆かわしすぎる。
「………かしこまりました団長にそう伝えておきます。」
どこか冷めた目で俺様を見たかと思えばさっさとこの場を去って行ってしまった。
「なんだあの反抗的な態度は?俺様は勇者だぞ。」
あのクソ腹立たしい餓鬼に沢山いっぱい卑怯な手を使われて奇しくも惜しくも敗れてしまってからというもの俺様の周りの奴らの態度がどんどん可笑しくなりやがった。
俺様の命令を従順に聞いていた者達が皆応じなくなってしまった。
こいつらはどうせ最強である俺様が卑怯な手であっても負けたのが嬉しいんだろう。
雑魚特有の嫉妬妬みって奴だ。
達人と呼ばれるような奴らがあの戦いをもし観ていたらあの女の卑怯な手に気付いていただろうに。
でも、まぁいいどうせ龍王ってのが復活したら否が応でも俺様に頼るしかなくなる。
そこで俺様が颯爽と災厄を切払ってしまえばまた俺様の時代がやって来るだろう。あの女で混乱してしまった奴らもまた俺様にひれ伏すに違いない。
勇者もどきはありえない妄想で一人お部屋で気持ち悪いニヤけ面を浮かべる。
あまりにも気持ち悪い姿だったのかそれを止めるように部屋の扉を誰かが叩いた。
「勇者殿、アルフィンです。他国ってこともあってかなり出番の少ないアルフィン団長です。教皇様がお呼びですのですぐにいらして下さい。この為だけの出番ですが頑張ってます。」
こいつは何を言っている?
だが、教皇の爺さんが呼んでいるらしい。
渋々重い腰を上げて扉の外で待つアルフィン団長の元へ行く。
「あの爺さんがお呼びだって?」
「はいそうです出番を下さい。それと勇者殿であっても教皇様とお呼び下さいませ。」
爺さん呼びなど許しませんよとアルフィン団長の眼光が鋭くなる。
勇者もどきはこの程度でビビらない。
「ふ、ふん仕方がない。じゃあ、さっさと行くぞ教皇しゃまの所まで。」
足の震えは長時間椅子に座っていたからだ。
軽く足を叩いてこれからも出番の少ないアルフィン団長に連れられて教皇の所へと向かう。
0
お気に入りに追加
951
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる