今日も聖女は拳をふるう

こう7

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戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る

走れアリス

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アリスは激怒した。
かのサラちゃん天使が何者かに攫われたからだ。
アリスには戦争が分からぬ。
アリスはただの聖女である。人の病や怪我を治し、日夜己の筋力を高める為暮らしてきた。
けれども邪悪や身の危険特に貞操の危機に対しては、人一倍に敏感であった。

なんて何処かの村の牧人の真似をしつつ、俺は帝都を目指して駆けていた。
今はどこまでやって来たのか分からない、けれど途中帝国兵っぽいのが道を封鎖するように陣取っていたからおそらく国境は越えたはず。
ビッグボアの如く突進で行く手を阻む人壁を弾き飛ばしたから定かではない。あの時、一時停止して吹っ飛んだ兵の一人にでも確認を取れば良かった。


後悔は先に立たないが、前方に小規模な村が見えてきた。
これは僥倖、村の人に現在地点を尋ねるとしますか。




「いいか貴様らぁ!ここは共和国の連中共との戦において補給地点とする。村にあるだけの物資及び寝床を提供せよ!あぁ、それと疲れや色々溜まるから女も寄越せ、いいな?」

「か、勘弁して下さいませ…。しょ、食料はお渡ししますのでどうか村の者達に危害を加えるのだけは…。」

「なにぃ?貴様、我々は祖国の為に戦う名誉ある兵であるぞ!その我々の命を聞けぬというのか!!」

「ど、どうかお許し下さいませ…。」

「ならん!死ぬがいい!!」

「はい、ドーン!!」

「ぐはぁんっ!?」

最短時間での悪人認定。
茶番みたいなやり取りはそこまでだ。

怯えるお爺ちゃんに剣を振り下ろすとは何事か。
思わず勢い余って飛び蹴りしちゃったじゃん。
でも、これに懲りて反省しなさい。

「ぐ、ぐうぅ…小娘、いきなり何をする!!村の人間か、これは祖国に対する反逆だぞ!!」

鼻から血をしたたせながらまだ強気。
でも、訂正を伝える。

「いやいや、俺…じゃなくて私はこの村の方でもなければ帝国を母国にもしておりません。」

「な、なに?じゃあ、いきなり出てきた貴様は何者だ!」

いちいち会話をするのも時間が惜しい。
とりあえずこいつらはこの村に危害を加える悪い奴、だったらちゃちゃっと殴って先を急ごう。


「何者?私はただの通りすがりの聖女だよっと!!」

簡潔な自己紹介をもう一度の飛び蹴りと一緒にお伝えする。
今度はもう質問がやって来ない。
うるさい人一人目は意識を失ったようだ。
残りの名誉ある帝国兵さん達に目を向ける。こんな虚弱体質な女の子に悲鳴をあげるなよ。

「私は先を急いでおりますので……………とっとと殴られろ。」

女性の甲高い悲鳴が鳴り響かない代わりに野郎の野太い悲鳴が村中に響き渡りました。




「あ、あのお嬢さんいえ聖女様いえ女神様あ、ありがとうございます。」

村長だったお爺ちゃんが正解からどんどん遠ざかる呼び方でお礼を伝えてくる。

「いえいえ、気にしないで下さい。彼らが私の進む道を邪魔したのでどかしたに過ぎませんので。」

「で、ですが是非ともお礼を…よ、良ければここにお泊り頂いても!」

「お気持ちだけで十分です。それよりも先程の恐怖が残っている女性や子供も居るでしょう。私よりもその方たちに気を回して下さいませ。それでは私はこれで!」

これ以上留まる理由は無い。
村の人々に笑顔で思いっきり手を振ってまた駆ける。
今度は現在地を聞いた。
ここから帝都は馬車で5日先にある。
俺の全速力で2日ってところかな?

途中で魔物を倒して肉を得ながら進めば行けるな。
待っててね、サラちゃん!







「あの御方は女神の使い様いや女神様ご本人様なのかもしれないのぅ。」

どんどん小さくなっていく金色の女神へ村長はそう呟く。
それに対して村の者達全員も同意する。


そして、お互いに顔を見合わせ頷きやることを決める。


こうして、村の慣習に新たな事が生まれた。
金色の女神が去って行った道に向けて朝昼晩毎日祈りを捧げるというもの。

それをアリス本人が知ることは無かった。



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