今日も聖女は拳をふるう

こう7

文字の大きさ
上 下
206 / 266
戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る

殴って縛ってじゃんけんグー

しおりを挟む

たった百人ちょっとの帝国軍隊はたった四人の女子供によって壊滅してしまった。

ほぼ全員が意識を失う中で唯一人意識を失わせてもらえなかった男、ガナッシュ。
ゆっくりと微笑みながらやって来る女神と称される少女に年甲斐もなく怯える。
本能から敵対してはならなかったと自らの過ちを今更ながら後悔している。

「さて、残りはおじさん一人だね。よくも苛々を溜めさせてくれたね。とりあえず一発殴らせろ。」

女神様なのに少し言葉が汚い。
でも、苦言も何も言えない。少女の纏う闘気がそれを許さない。

「はーい、じゃあ歯を食いしばって。色々聞きたいことはあるけれどひとまずお鼻を潰そう、ね!!」

けたたましい音が空へ響き渡る。
殴打で出る音とは思えない。これでも本人的にはちゃんと加減をしているらしい。

こうして、ガナッシュは一切の抵抗も出来ぬまま一度意識を深い闇へ落とすのでした。







「ふー、これで一旦危機は去ったかな?」

敵の将軍をぶん殴ってスッキリ。
鼻が潰れて歯も結構取れちゃったけど殺してはいないよ。聞きたいことが沢山あるもん。

「お姉様、この眠ってる者共はこの縄で縛っておきますね。」

スゥ様とミーナちゃんが胸元からいくつもの長い太縄を取り出す。
どこにそれだけしまっていたのとか入ってた割に膨らんでいなかったねとかそんな事触れない。
もう姫様達はそういうものだと思っている。

百人以上を二人一組とはいえ縛るだけの縄があってももう不思議じゃない。
目下戦争中なので急いで縛る。

緩かったら逃げられるので爺ちゃん直伝のキーコー縛りというのでしっかり縛る。
これに猿轡があれば完璧らしいけど残念ながらここには無い。
でも、これだけで十分抵抗出来ないだろう。


全員をキーコー縛りで動きを封じたところでようやくトワレ様やノルン様が目を覚ました。

「あれ?私達生きてる…。」

意識が覚醒し辺りをキョロキョロ見渡し自身の身体を触りながら確かめる。

「トワレ様にノルン様、ご無事で良かったです。さっきまでの出来事覚えていますか?」

「え?確か…帝国兵に刃を向けられて絶体絶命で…それで何か大きな物がいきなり……うぅ頭が…。」

記憶が曖昧になっているのか頭を押さえる。
思い出さない方がいいよ、それ禄な思い出じゃないよ。

「トワレ様にノルン様はまだ記憶が混濁しているようですわね。お姉様、私達でトワレ様達に調き…こほん状況説明をしますのでお姉様はそこのガナッシュという愚者から聞きたい事を聞いていらして下さいませ。」

「ん?うん、そうしてるね。」

三人娘はトワレ様達を囲うように陣を組む。
まるで逃さないように見えるのは気のせい。


だから、俺はガナッシュの方へ。
未だピクピクしながら夢の中に居るおっさんの頬を平手打ちで叩き起こす。

バチンバチンバチンバチンバチンバチンバチンお?起きた?

7回目でようやく起床、おはよう!

「ガナッシュだったよね?お目覚め早々悪いけれど色々教えてちょうだい。フォルクスとの関係とか帝国兵は他にも増援が来るのかとか色々ね。」

「だ、誰が教え…。」

シュポン。
この音は地面に穴が開いた音。
おっさんの首横すれすれに綺麗な円形の穴。

「教えてくれるよね?」

「へい、喜んで!!」

うん、良い返事。
さぁいっぱい教えて頂戴な。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...