今日も聖女は拳をふるう

こう7

文字の大きさ
上 下
196 / 266
戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る

嵐の前の誕生祭4

しおりを挟む

またお腹がしっかり膨らみました。
女神ではないけど糧にはなったよ、小魚さん達。
次やる機会があればまた挑戦したい。

続いてサラちゃんがおすすめする場所は劇場。
誕生祭の期間限定無料で王様を主題にした劇が催される。

でも、それを聞いた護衛達が苦笑い。どうしてか聞いてもいい?

「劇の内容は陛下がドラゴンに連れ去られた王妃様を救いに行く物語や陛下が国の為に大軍をたった一人で立ち向かうっていう内容だったりとほんのかなり大分嘘が九対一に盛り込まれてまして……。陛下はやめて恥ずかしいって止めようとしてましたが、王妃様が強行的に押し切ったそうです。結果、陛下は自室で悶え転がり続ける事件が勃発しました。」

………ご愁傷様。
それは恥ずかしい。

「スフィア様、劇とは良い案を聞きましたね。」

「そうね、ミーナちゃん。今度、王国に帰ったらアリス教主催でお姉様の劇を行ないましょう。費用はお父様に脅…お願いしてみます。」

「もしお願いが通りそうに無ければ私も呼んで下さいませ。私も僭越ながらご一緒に(物理的に)お願いします。」

「それは心強いです。ロコルさんはどうしますか?」

「私はお願い用の名状し難い鈍器のような物を用意致しますね。」

こんな不穏な会話は偶然にも護衛と談笑していたアリスには届かなかった。

神様の気まぐれか、この世界の男性は誰であっても不遇な運命を辿るようだ。


護衛との会話を終えてサラちゃんに引っ張られるように劇場へ入っていく。




……………………おはよう。

とても楽しい劇だったと思う。こうなんか王様役があれでなんかそのカッコ良かったようなアレでした。
ドラゴンも凄いなんかドラゴンしてたと思う。

ギリギリ寝ていないからね。
夢と現実の狭間でどんぶらこっこどんぶらこって船を漕いでいただけだから。
というか、おすすめしていたサラちゃんも一緒になって眠っていたよ。

「しゅごく眠れるんだよー!」

劇を見るよりも休息の為に寄った感じになってしまった。
その後も露店を巡ったり再度屋台へ突撃したりと充実した日を過ごせた。


そして、夕方。
サラちゃんとお別れの時がやって来た。
短い間でこんなに仲良くなれるとは思わなかった。最後は手を繋いであちこち回るまで親しくなれた。
正直、信者塗れになりつつある中で純粋無垢なサラちゃんの存在は大きかった。

でも、お別れしなければならない。
本当は明日も誕生祭を一緒に楽しみたいけど、サラちゃんは明日の朝一に村へ帰るらしい。

俺が別れを惜しむようにサラちゃんも大きな瞳にいっぱいいっぱいの涙を蓄えて、それでも泣かないよう堪えている。

「……………。」

無言で決壊しないよう耐えている癒やし子の頭を優しく撫でる。

「サラちゃん、サラちゃんの村は何処にあるの?」

「……………あっち。」

自身の服の裾を掴んでいた手を片方離してピッと後ろの方角に指を指す。
合っているのかサラちゃんのお母さんに目で確認を取る。

肯定。

「そっか。だったら、今度サラちゃんの住む村へ遊びに行くよ。」

「…………ほんと?」

「うん、私は友達に嘘なんてつかないよ。すぐには難しいかもだけど必ず行く。絶対行く、だから今は笑顔でさよならしよ?」

「…………っ、うん!」

やっと笑顔を咲かせてくれた。
目が赤くなっているけど、最後に笑ってくれたなら良し。

約束の証に結晶石の腕輪を渡す。
サラちゃんの店で買った物だろうなんて野暮な事は言わないでね。

逆にサラちゃんからは綺麗な石をいくつも繋げて造られた首飾りを渡された。誕生日に貰った宝物らしい。


そんな大切な物を預けてくれたんだ、絶対会いに行こう。
王国に帰ったら報復がてらにアルフを殴ってそのままお願いしよう。

多分、許可をくれるだろう。



最後にギュっと抱き締める。
俺だって寂しくなるもん。

「「はぁはぁ、お姉様私達も抱き締めてめちゃくちゃにして下さいませ。そして、共に快楽に堕ちて逝きましょう!!」」

ちょっと今は自重して。
結局、変態ちゃん達のせいで最後の最後で締まらないお別れになってしまいました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...