今日も聖女は拳をふるう

こう7

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戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る

騎士団との楽しいお遊び5

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ゴーゼフさんとの戦いは反省点が多く残る結果となった。
こんな無様な姿、爺ちゃんが見たらまた両手足縛られて魔物の森に放り投げられるな。

次はあのゴーゼフさんよりも上の立場に君臨するセイル様。
纏う雰囲気で分かる。
決して権力に物を言わせてその地位に就いた訳ではないと。

中央で相対する。

相変わらず貴公子な笑みを浮かべるセイル様。
得物は片手剣に盾。

「隊長の地位に恥じぬ戦いをお見せしますので存分に楽しみましょう。」

「はい、こちらこそ。もうあんな愚かな驕りは致しません。」

少し距離を作って開始を待つ。
合図はゴーゼフさん。
その野太い声が大きく開始を告げた。

始まったのにも関わらず一向に動かないセイル様。
でも、何か仕掛けて来そうで警戒を怠れない。


俺に向けられる剣先がユラユラと揺れている。
そして、攻撃は唐突に訪れる。
セイル様が一瞬ブレたかと思ったら消えた。驚きに目を見開くのもつかの間、咄嗟に後方へ退く。
俺がさっきまで居た場所の横からセイル様の剣が突き出されていた。
今まで爺ちゃん以外で反応が遅れるなんて体験は初めてだ。

「凄いです今の動き。隊長の名は伊達ではないですね。」

「ふふ、ありがとう。昔幼い頃にふらりとやって来たご老人に足の使い方を学んでね。今日まで日々鍛錬を続けたんだよ。お陰で私はこの速さを手に入れたのさ。」

そう言ってまた消える。
今度は後ろか!
急いでしゃがみ込んで回し蹴りの要領で足を払う。
でも、既に前方へ移動して俺に振り下ろそうとしていた。

面白い。

横に転がりそれを避ける。しかし、また追撃があるかと思えば無かった。
むしろ、一旦距離を開けるように退いている。

なるほど高速の動きにも制限があるみたい。

「おやその表情はもう気付かれましたか。そうです、残念ながらこの動きもまだまだ長時間は出来ないんですよ。でも、時間をおけばまた動けるので油断なさらないように。」

「する訳がありませんよ。」

また再開。
セイル様の高速の連撃に俺は回避する選択しかない。動きが止まった好機を狙っても盾で拳の一撃を受け流される。

お互いに拮抗の続く戦い。


でも、その拮抗は長くは続かない。
なんせ聖女様は発展成長の真っ盛りな女の子。闘争の本能からか次第にセイル様の素早さに慣れていき、避けるしか無かった状況下でも逆に攻撃するまでに至る。

「驚きですね。貴女はほんの少しの合間に成長するのですか。ちょっと心が折れそうですよ。」

数十分の天性が何年もの努力を上回る。
それでもセイル様は隊長としての覚悟と威厳が己の心を折るのを許さない。

またお互いの距離が離れる。

アリスは告げる。

「セイル様、今から私の本気の一部をお見せします。全力でお防ぎ下さい。」

「貴女の本気か…………来い!!」


アリスは内に宿る魔力を全身へ行き渡らせて身体強化を行使する。
セイル様はアリスの纏う闘気が変わった事を感じる。

これは、アルフの言ってた通り戦神の生まれ変わりだわ。

拳を構えたかと思えば消えていた。今までは自分自身が高速で動く事に慣れている為、相手の動きもしっかりと見えていた。

でも、聖女様が消えた。

本当に彼女はどのくらい上の次元に居るのだろうか。
まだまだ足りない己の未熟さを感じつつ盾に伝わる衝撃に気付いていく。

参りました。

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