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戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る
騎士団との楽しいお遊び4
しおりを挟む騎士団との戦いは佳境を迎えた。
残りは隊長格である2名のみ。本当は二人同時に掛かって来て欲しいけど、立場的にそれはしない。
男の子って変な誇りを持つから致し方ない。
「では俺…いえ私からお相手させて頂きます。」
「ゴーゼフさん、普段通りの言葉遣いで構いませんよ。」
「そ、そうかありがとう。聖女様の実力を間近で見ちまったらもう戦いたくて身体中が熱くなってしまいましたぜ。」
セイル様をちょこちょこ諌めていたけど、この人もやっぱり俺達と同類か。
ゴーゼフさんの得物は大斧。
ちゃんと刃は潰してあるみたいで真っ二つに分かれる心配は無い。
お互い舞台の中央へ行き対峙。
ゴーゼフさんは笑っている。多分、俺も笑っていることだろう。
セイル様が開始を合図した途端、先に動いたのはゴーゼフさん。
大男による大斧の振り下ろし。
当たればたとえ試合用の武器であっても重症は間違いない。
けれど、俺には当たらない。
この程度爺ちゃんに比べたら可愛いもんだ。
さっと後ろへ後退する。
おそらくゴーゼフさんは俺が避ける事を分かっていた。
真の狙いは大斧の一撃により飛散する砂や石つぶての雨。
目潰しに微量ながらも痛みを与える、騎士らしからぬ俺好みの戦法。
「上等!!」
たまらず笑っちまう。
聖女に似つかわしくない笑みを浮かべちゃったけど気にしていられない。
地面へ思いっきり拳を打ち付ける。
俺の拳圧は地面へ到着ののちに周囲へ一時的な風の壁を生み出した。
そして、砂と石の雨は無情にも勢いを失っていく。
俺に届く事はなかった。
「おいおい、少しはくらってくれると思ったんだがな。」
「ふふ、残念ながらそれではまだ届きませんよ。」
「ちっ、ならこれでどうだ!!」
「えぇっ!?」
まさかの得物である大斧の投擲。
あんな馬鹿でかい斧を投げきる筋力も凄い。けれど、後先を考えていない愚策だ。
避けられた時点でゴーゼフさんは負け。
大斧はかなりの回転数を誇りながら迫って来る。
いきなりの奇策には驚いたけど確実に避けれる。
俺はすぐに冷静になり跳躍してそれを躱す。
「ゴーゼフさんこれで貴方の武器は無くなりました。面白い攻撃でしたがもう終わりです。」
ガクッと顔を伏せた。
降参する気になったのだろうか。
「ふ…ふ、ふはっはっは。」
バッと顔を上げて高らかに笑う。
あの目は勝負を捨てていない目だ。
「フハハハ、まだだ。まだ俺の攻撃は終わってませんぜ!!」
「えっ…!くっ!?」
後ろから突如として訪れた強烈な一撃。
俺は受けた衝撃で鍛錬場の壁へぶっ飛ばされる。
その威力はかなりのものなのか土煙が起こり壁に叩き付けられたアリスの姿はまだ見えない。
「どうですか聖女様。これが俺のここぞという時の必殺技です。投げ飛ばした斧が戻って来ないなんて誰が決めましえ…う、嘘…だろ…。」
己の一撃で吹っ飛んでいった聖女様を見て勝利を確信してしまった。
でも次第に晴れていく土煙の中、かすり傷一つなく立つアリスを見て愕然とする。
そんな彼を嘲笑うかのようにローブに付いた土を払っていくアリス。
「ゴーゼフさん、私はどうやら慢心していたのかもしれません。驕りかけた私を目覚めさせて頂きありがとうございます。」
「今ので無傷って…こりゃ敵わないな。」
「いえ、咄嗟に防いだ腕は痺れておりますよ。」
ぷるぷると震える右腕を見せる。
「本当にありがとうございます。」
「そうかい…俺の奇策が聖女様の糧になったなら本望ですぜ。」
そして、ゴーゼフさんは参ったと武器を捨てて降参した。
最終的には勝ちだけどなんだか勝った気はしない。
もう油断は絶対致しません。
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