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戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る
出発までのあれこれ
しおりを挟む共和国出発までの二週間。
俺がやる事といったら特に変わらない。出発まではいつも通り聖女の力で治療したり屋台を冷やかしに行ったりと毎度の日常。
それとロコルお姉ちゃんやミーナちゃんへの共和国旅行のお誘いはもうすでに完了済み。
二人共二つ返事で了承してくれた。
ミーナちゃんは俺が言い切る前に眼前まで近付き鼻息荒く頷いてくれた。ちょっと引いたのは内緒。
護衛としてなんか逞しくなってきてたタローさんも誘おうとしたけど断られた。
遠い目でどこか哀しそうそんな面持ちで「僕なんかではまだ女神様を守護するには役不足でございました。」って言う。
俺の呼び名が完全に女神様に固定されていた。それに細くヒョロっとした体格が筋肉モリモリに育っている。少し会わない間で彼の中で何が起きているのだろう。
俺に断りを告げてまた彼は人混みの中へ消えていった。エルドさんがチラッと居たような気がしたけどもう知らない。
そんな訳で旅行を一緒に楽しむのは、ロコルお姉ちゃんに姫様にミーナちゃん。
それと護衛にはフォルクスさんが名乗りを上げてくれた。側近の騎士達と共に付いてきてくれるらしい。だからノートン達は残念ながらお留守番。本人は行きたそうにしてたけど元々アルフの護衛だから仕方がない。
あまり話す機会の少ないフォルクスさんとこの旅の間でもっと距離を縮められるといいな。
残り出発日までもう少しある。それまでのんびりと冒険者としてゴブリンあたりにでも拳を深めに行こうかな。
ほのぼのと窓からの景色を眺めつつ思う俺。
「「お姉様、そんな事より行きましょう。」」
窓から眺める時、窓からもまた眺められているのだ。
窓にへばりつきこちらを覗く二人の小さな変態。
ここってそこそこ高い位置だよ。
もう大分前から呆れているから黙って窓を開ける。すると、飛び込んでくるように二人がハァハァ余計に言いながら侵入してくる。
「それで二人はどうしたの?」
なんで窓から?なんて無粋な質問はしない。
さっさと本題に入らないと疲れが増すだけだからね。
「お姉様、旅行中の衣類はもう準備出来ておりますか?」
「そうです!スゥ様の言う通りです。ちゃんと朝から甘い情熱的な夜までの衣類数カ月分用意しましたか?」
「え、別に着る服ぐらいなら前日にさっさと準備しようと思ってたけど…。5着くらいで着回せば良いでしょうし…。」
「「はぁ…。」」
珍しく二人から感嘆じゃない溜息が零れた。
額に手を当ててあちゃーってしている。
「うっ…な、何か問題でも?」
「問題なんて大有りです。幾らお姉様でも問題だらけです。」
「そうです!確かに何日もお姉様の汗や匂いが染み付いた衣類など国宝級です。言い値で買います幾らですか?ですが、同じ女性として見過ごせません!」
俺は気にしないけど、二人の剣幕に圧倒されてしまう。
変な発言が混じりまくっているのにたじろいじゃう。
「「お姉様、こうしてはいられません。急いで服を買いに行きましょう!!」」
「い、いや服貰ったものとか色々あるし…いらな。」
最後まで言わせてくれない、それが二人の変態の真骨頂。
俺の両腕を逃さないようガシリと掴んで、有無を言わさずそのまま窓から引き摺られていく。
こういう時のこの子達の力は侮れないし逆らえない。
大人しく引き摺られていくしかない。
周りの人達は微笑ましそうに祈るばかり。これだから信者は困ったもんだ。
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