今日も聖女は拳をふるう

こう7

文字の大きさ
上 下
172 / 266
戦乱の帝国にて聖女と三姉妹は踊る

共和国のお姉様からご招待2

しおりを挟む

泣き止んだ国王は一枚の手紙を取り出した。
そして、俺の前に置く。

「ズビビビまぁ読んでみてくれ。私は別の手紙を貰ったからそれはアリス殿とスゥへと宛てられた手紙だ。」

国王に促されるまま封を切って何やら書かれた便箋を取り出す。
そして、スゥ様と仲良く一緒に内容を覗き込む。
送ってきてくれたのは、アーランド共和国の大人の色気ムンムンお姉様ことディーナさんからだ。

手紙の内容は以下の通り。
・今日から一月半後にアーランド共和国の王様の誕生祭が開かれる。
・その誕生祭を一緒に祝わないかってのを建前に遊びましょうのお誘い。
・他にも誘いたい人がいたら誘ってもいい。


こんな感じの内容をディーナさん口調で書かれていた。力強く書かれた筆跡から必ず来てねという激しい熱意を感じる。

「王様の誕生祭ですか…。」

「そうだ、ちなみに私の誕生祭はそれのニ月後だ。別に深い意味は無いからな。別に祝って貰いたいなんて思ってないからな。」

泣き虫の国王へ俺と姫様はジト目を送る。
その視線から逃れるように咳払いをする。

「ん、こほん…さて隣国からの招待だが受けるかな?」

交流会で唯一といって言いほど親しくしてくれたディーナお姉様からのお誘い。
でも、一つ懸念がある。

「とても行きたいですけど、ついこの前他国へ出掛けたばかりです。他国へと出向いてばかりではこの国の聖女としての務めが疎かになるのではないですか?」

相次ぐ旅行で自国の人達への治療を怠るなんてあってはいけない。
姫様が隣でうっとりと涎を垂らし始めた。

「お姉様…素敵です。ちょっと私を抱きませんか?」

抱きません。
実の娘の雌の顔にドン引きする父親が俺の懸念に対して答えてくれる。

「確かにその心配は分かる。しかし、実はある報告をもらっている。」

「ある報告?」

「あぁ、実はこの国の死亡率がかなり減っている事が分かったのだ。原因究明のため調査官を各地に派遣してその理由が判明した。」

死亡する人が全体的に減ったなんて只事ではない。
ゴクリと唾を飲む。

「その原因はズバリ…」








「そなたを崇め讃えるアリス教信者達のお陰だと判明した。」

出たアリス教。
本人に断りもなく勝手に発足された忌まわしき宗教。

国王は続ける。

「彼等達が各領地で人々にアリス教を布教する傍ら人命救助にも率先して動いているらしい。また冒険者の中にもアリス教を信仰する者が居るようで新人冒険者達へ徹底した気配りや手助けをしているそうだ。そして、助けられた者達がまた新たな信者と成ってまた新たな信者を増やす為動いている。そう報告された、いつか我が国が乗っ取られそうで怖い。乗っ取らないよね?」

乗っ取りません。

頭を抱えたい。いやもう抱えた。くそ、どうしてこうなった。

「ふふ、お姉様が王様で私が王妃…ぐふふふ。」

隣のお姫様が妄想で気持ち悪くなっている。

「と言う訳で聖女殿が他国へ少しの間旅行しても問題無い。アリス教大司教の男性からも「女神様の素晴らしさを共和国にも教えられる良い機会です。この国は女神様の僕である我々がしっかりと守ってみせましょう。」と頼もしい言葉を頂いた。だから、とても大丈夫だと思う。」

その大司教を名乗る野郎をすこぶる殴りたい。絶対頭文字がエで最後がドの奴だ。

でも、共和国に行っても大丈夫と国王がはっきりと告げた。もう信者の事は諦めて行こうかな。

「はぁ…分かりました。問題が無いなら行こうと思います。」

こうして、共和国行きが決定しました。


出発は二週間後。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...