今日も聖女は拳をふるう

こう7

文字の大きさ
上 下
151 / 266
他所の聖女と異界の勇者

前日まで早送り

しおりを挟む

巻き込まれタローさんと姫様の初めての邂逅が終了した。
ようやく荒れていた場が落ち着き、ちゃんとお兄さんとの出会いからお兄さんの境遇までを皆へ説明していく。
その中でアルフがとても親身になって心配していた。理不尽に巻き込まれて酷い目に遭う、王子様だからそういうことを幼い頃から体験していただろうから同情しているのかもしれない。

だから、教国を出て王国で暮らすことを快く受け入れてくれた。

とりあえずタローさんの保護はこれでよしとして、残る問題というか楽しみなのは勇者との試合。
アルフ情報では随分と舐め腐っているご様子。

「実際問題、勇者かどれほどの強さか分からない。油断している間で一気にあの人を見下した顔をボコボコに殴り潰してくれ。これ王子からの一生のお願い。」

こんな事で一生の願いを使うなよ。

「まぁ、レディーに対する礼儀がなってない馬鹿に遠慮はするつもりないよ。」

「あぁ、レディーね。」

これはアルフを殴っていい。鼻で笑ったもん殴ったよ。

俺の強さを知っている皆はどうあの勇者を料理するか熱い会議を繰り広げているけど、タローお兄さんは俺が勇者と闘うと知ってとても心配してくれた。

「え、皆、アリス様がユータさんと戦うの誰も心配しないのですか?相手は勇者ですよ。」

いいね、確かに俺はちょっと腕っぷしに自信があるだけのか弱い女の子。こうやって心配されるのは嬉しい。

でも、懲りていないアルフを筆頭に心配するタローさんに笑いながら告げた。

「だってなぁ…。オーガの大群よりも何倍も怖い我らが聖女様だぜ!」

まぁなんと素晴らしい笑顔で言ってくれやがるのでしょうかこやつは。
良い度胸してるね、ちょっと付いておいで。

タローさんに元気よく返したアルフ王子様の腕を掴む。

「ふふふふ。」

「あ、違うよ。言葉のあやで怖いとかじゃなくて勇ましいというか…そのあの。」

「ふふふふふふ。」

「ちょっと腕から聴こえてはいけないくらいの軋み音がするんだが、ねえ、聞いてる?お、おいノートン、シーナ、タロー殿助けてくれ!!」

残念ながらノートン達は窓際に置かれた鉢植えに夢中で見えてないし聞こえていない。

「ふふ、お姉様私もお手伝い致しますわ。こんな愛に溢れ気高く美しくむしゃぶりつきたいお姉様に対して失礼ですわ。」

不穏の混ざる賛同だけど折角のお手伝いを無下には出来ない。一緒に私達のレディーらしさを体の芯から叩き込んで差し上げましょう。


アルフがノートンの元に帰って来たのはこの日の夜だった。彼を見たノートンの証言では、瞳から光を失っていたそうだ。更にブツブツと呪文のようにひたすら聖女は淑女聖女はレディーと呟いていたそうな。
結果、彼が正気に戻ったのは勇者との試合当日までかかる事となった。


魂の抜け落ちたようにふらふらと歩く彼を献身的に支えたノートン。
それを何度も見かけたこのお城で働くメイド達。

物書きを趣味とするメイドによってこの二人を題材にした禁断の恋愛小説が出版されていくのはまた別のお話。

別の意味でシェアローズ王国のアルフ王子の知名度が上がっていきました。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

王命を忘れた恋

須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』  そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。  強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?  そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。

【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。

藍生蕗
恋愛
 かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。  そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……  偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。 ※ 設定は甘めです ※ 他のサイトにも投稿しています

私は聖女(ヒロイン)のおまけ

音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女 100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女 しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...